突然ですが、これまであなたは何回引っ越したことがあるでしょうか。結構なビッグイベントなので、片手で収まる人も多いかと思います。かく言う私(中澤)も38年の人生で4回しかありません。

賃貸の場合、住人が引っ越した後は、壁や床を張り替えてハウスクリーニングを依頼することがほとんどな模様。必然的に掃除屋さんはそういった住人の痕跡を多く見ることになるわけですが、ある掃除屋さんによると、近頃増えている部屋の傾向があるそうです。

話を伺った掃除屋さんをSさんと呼びます。つい先日、Sさんが受けた依頼も同じ傾向の部屋でした。壁や床は張り替えられているため、普通の部屋とほぼ変わらないはずなのに雰囲気が何かおかしい。

違和感を感じ取りつつも、粛々と仕事を進めるSさんの様子を見て、彼の上司が耳打ちしてきたそうです。その違和感の正体を。綺麗な壁、綺麗な床、上司の口から出た言葉は……

「首吊りだよ」。そう、Sさんが消していたのは自殺者の痕跡だったのです。しかし、これを聞いてSさんは逆に納得したそう。ああ、どうりで……と。

Sさんいわく、事故物件のハウスクリーニングは特に珍しいことでもないのだとか。張替え業者の次に部屋に入ることになるため、どことなく普通の部屋とは違う違和感のような雰囲気が残っているそうです。

また、部屋によっては、窓に体液のようなものが付着しているケースもあるとのこと。そんな数々の経験から、Sさんはもはや慣れてしまったのだとか。その雰囲気を消すのも仕事のうちと割り切っている様子。

とは言え、近頃、こういった部屋の掃除が増えているそうです。Sさんいわく、増え始めたのは新型コロナの流行以降なのだとか。私も同じ現代に生きる者として、将来や今を不安に思う気持ちはよく分かります。したがって、増加した時期については頷くしかありませんでした。

私の場合、ネガティブな気持ちを感じた時は馬鹿馬鹿しいアニメを見て発散していますが、一人一人が別種の重さを背負っていることも事実。そんな生きづらさや不安を抱える人達が自死を選ばなくて良い世の中が一刻も早く来ることを願うばかりです。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.