かつて全国のドライブインやゲームセンター、市民プールなんかに並んでいた麺やハンバーガーの自動販売機。

お金を入れると加熱された温かい料理が出てくるもので、現役でがんばっている機器がときおり話題になる。修理したくても交換部品がないなど今や貴重な存在、「レトロ自販機」と呼ばれて密かなブームとなっているとか。

秋田県秋田市にも地域の名所となったうどん・そば自販機があるらしいのだけれど……あまりに愛されすぎてパウンドケーキになってしまった! どういうことか、これを見て欲しい!


・「うどんそば自販機パウンドケーキ」(税込1080円)

どこからどう見ても自販機である。「道の駅あきた港 ポートタワー・セリオン」限定で販売している。

うどん・そばの価格は250円らしい。


側面には秋田市の営業許可証が再現してあったり……


販売時間をガムテープかなにかで訂正した形跡があったり……


裏面には通気孔が補修された様子が描かれていたり……


手書きらしい掲示物があったりと、妙にオリジナリティがあるぞ。


中身は普通のパウンドケーキ……に見えるが、実は「うどんスープ味」だ! 原材料表記では醤油やかつお節が確認できる。自販機のうどん・そばのスープを練り込んでいるらしい。

食べてみると……よく観光地などにある「醤油ソフト」に近い。甘さの中に、塩気のある醤油味が感じられるというか。たぶん読者の皆さんが想像しているよりは違和感がないぞ。


・なんで自販機かというと……

そもそも「道の駅あきた港」には、本物の富士電機製のうどん・そば自販機がある。もとは近隣の商店の軒先にあったのだというが、2016年に惜しまれつつ閉店。閉店を知った人が連日行列を作るなど、存続を願う声が多かったことから、道の駅で機器を引き継いだという。

価格は本当に250円!


お金を入れると「できあがりまで○秒」のカウントダウンが始まり、ほどなく熱々のうどんやそばが出てくる。

ただし手書きの掲示によると「1度に12人分しかお湯が沸かないから、待たせてごめんね」といったことが秋田弁で書いてある。行列ができたときは大変だったろうなぁ……ってこの掲示、パウンドケーキにもあった!

えええっ、手書きイラスト入りの掲示も実在する!!


販売時間は本当にガムテで訂正されている。掲示物の汚れまでぴったり同じ! なにこの再現度!!


自販機の周辺にはイスやテーブルが並べられ、その場で食べられるようになっている。しかし「ポートタワー・セリオン」として知られる同施設、1994年のオープンだというからかなり年季が入っている。決して今流行りのおしゃれな休憩スペースという感じではなく、この空間自体がレトロムード満点だ。

そばには丸い天ぷらがのっていて、すごく懐かしい! 素朴でお湯加減もちょうどよく、もう1~2杯おかわりしたくなる。なによりスタッフが頻繁に往来して機器周辺を整備しており、余ったつゆなどを捨てるところも完備、大切に維持管理されていることが伝わってくる。


・世界に1つだけ

このパウンドケーキ、全国各地にある「富士電機のうどん・そば自販機」の再現ではない。世界にたった1つの「道の駅あきた港のうどん・そば自販機」の再現なのだ。どんだけ愛されてるんだ。

メーカーのアフターサービスも終了し、各地で滅びゆく運命にあるというレトロ自販機。これからも市民から大事にされ、末永く稼働してくれることを願う。


参考リンク:道の駅あきた港
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]