フル3DCGアニメにはどうにも慣れられない。『トイ・ストーリー』より前からアニメが好きだった私(中澤)にとって、やっぱりキャラは2D作画であって欲しいところ。そのため、3DCGになったドラえもんを広告かなんかで見た時は衝撃だった。「俺たちのドラえもんを壊さないでくれ」とさえ思ったものである。

劇場版「鬼滅の刃」の2周目を見に行ったら、そんなフル3DCGのドラえもん2作目が上映開始されているではないか。その名も『STAND BY ME ドラえもん 2』。前作は大ヒットになったそうで、本作も「ドラ泣き」とキャッチフレーズがついているが、そんなに良いのだろうか? 気になったので見てみることにした。以下ネタバレ注意

・出会いがしら

本日映画館で存在を知ったため前情報も全くない状態だが、シアターの入り口にあったポスターで、のび太の結婚およびおばあちゃん絡みの話であることは分かった。とは言え、名作と名高い「結婚前夜」のリメイクが前作だったため、本作は結婚絡みでも別のネタになるだろう。ストーリー力(りょく)から考えると、ちょっと厳しい戦いかもしれない

合わせて、本作が初めての3DCGドラとの対面になる私。はたして、3DCGのドラえもんを受け入れられるのだろうか? 心とリンクするようにシアターの明かりが消え薄暗くなる。しかし、映画冒頭、私を襲ったのは全く別の衝撃だった。おいおいマジかよ3DCG化とか言ってる場合じゃねえぞ……


スネ夫、アフロになっとるやないか


なんと、冒頭登場した大人のスネ夫が爆発に巻き込まれたのかと思うほどのボンバへッになっていたのである。っていうか、お前スネ夫だよな? 具志堅さんじゃないよな

しかし、ここに具志堅用高を配置するのは、東映まんがまつりの特番だったとしても攻めすぎというものだ。隣にはジャイアンがいるし多分スネ夫で間違いないだろう。

・連続する衝撃

2の冒頭は時系列的に結婚前夜のことなので、おそらく、『STAND BY ME』の1も大人スネ夫はこの髪型だったに違いない。その大人スネ夫の髪型にビックリしすぎて、なんとなく3DCG化の違和感が和らいでしまった。

ちなみに、原作の「結婚前夜」ではスネ夫の髪型は子供の頃の雰囲気を残しているのだが、3DCGの違和感を和らげるためにこの改変をぶつけたのだとしたら、八木竜一監督おそるべしと言う他ない。しかし、別角度からの衝撃はこれだけでは終わらなかった……

のび太の部屋狭いな……! マンガやアニメなどの2D版では、のび太とドラえもんが部屋の中で輪になって走り回れるくらいの広さはあった気がする。

しかし、3D版ではのび太とドラえもんが並んで立ったらいっぱいくらいの広さなのだ。狭苦しいためドラえもんが超邪魔に感じる。このルームシェア逃げ場なさすぎるだろ

・3DCGゆえのごまかしの無さ

ひょっとしたら、家の雰囲気とドラえもんやのび太のサイズ感から、立体になると、このくらいにしないと不自然になってしまうのかもしれない。細かいところだが、見慣れた場所なためにちょっとしたイメージの違いに違和感を感じた。

そういった違和感はキャラの動きにも感じる。3DCGの繋がった動きはなめらかなのだが、ある意味全体がハッキリしすぎて誤魔化しがきかず、2Dにある雰囲気の動きが一切ないのだ。結果として、動き回ると画面がゴチャゴチャしていて、2Dだと自然に見えるようなシーンが不自然に見える時がある。

ドラえもんは、かなり雰囲気の動きがある方だと思うので、同じ動きを描いた時の動き方の違いに3DCGを感じた。普段こんなことは考えたことがなかったが、逆説的に、マンガやアニメは見どころがはっきり抽出され描かれているから気にならないのかもしれない。

・結論

では、『STAND BY ME ドラえもん 2』は良くなかったのか? ここら辺で見終わった後の私の結論を答えておこう。


悪くなかった


ドラ泣きというほどではないが正直グッときた。気を抜いたら涙がこぼれそうになるくらいに。3DCGのドラえもんが気持ち悪いと思っていた男の反応だと考えるとこれは合格点ではないだろうか。

・3DCGの良いところ

本作は原作の『おばあちゃんのおもいで』を膨らませたものである。この話において、小学生ののび太に会ったおばあちゃんが、最後に「あんたのお嫁さんをひと目見みたくなっちゃった」と言うのだが、そんなおばあちゃんの希望を叶えるのがストーリーのメインとなっている。

ただ私がグッときたのはエンディングではなく叶えるまでの過程だ。動き方の違いに3DCG感を感じたと前述したが、その3DCG感が生きているのが背景と道具を使ったアクションである。

普段、省略されているような部分が誤魔化されてなくて、まずタイムマシーンが出て来たところで、ファンは少し「おっ!」と思うはず。現代の街に飛び出した大人ののび太をタケコプターで探しに行くシーンの街と空の壮大さは吸い込まれそうなほど。画面の中に世界が広がっていることを感じられる。

さらに、物語の中盤くらいにのび太がスクーターに乗るシーンがあるのだが、ここでの動きやカメラワークのスピード感は素晴らしい。暴走しているシーンだが、自分の頬に風を感じるような爽快感は間違いなく本映画の見どころの1つ

そして、私が1番グッときたのが、中学生の不良グループにジャイアンとスネ夫とのび太で立ち向かうところ。それまではいつものジャイアンだったが、ここで一気に「映画のジャイアン」が顔を出す。ジャイアンとスネ夫が立ち向かっていく時ののび太の表情がなんとも良いのである。3DCGなのに

大冒険ではないのだが、そんな見せ場がクライマックスで連続するため自然と惹きこまれてしまった。

・泣けるというかエンタメ映画

正直、ツッコミどころがないわけではない。原作では驚いたりするおばあちゃんの表情がずっと笑顔なので作りものっぽかったり、129kgあるはずのドラえもんをのび太が余裕で抱きかかえたり。のび太、背筋バッキバキやん!!

だが、見終わった後にちょっと良いもの見たなという気持ちにさせてくれる。振り返って言うなら、泣けるというか、エンタメ映画としてよくできていると思った。

マットな輝きを放つのび太たちが2D版より好きかと言えばそんなことはないが、気づけばそんなに嫌でもなくなっている。まして、前作で3Dのドラえもんを受け入れられた人にとっては本作は名作かもしれない。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼『STAND BY ME ドラえもん 2』予告2

▼ちなみに、11月20日公開だが客は10人くらいしかいなかった