どうせ同じ時間をかけて働くなら、ストレスのない仕事をしたい。それはすべての労働者の願いだろう。このたび、株式会社ビズヒッツが働く男女を対象に「ストレスの少ない仕事に関する意識調査」を実施。過去に経験した「ストレスの少なかった仕事」を回答してもらった。

もちろん仕事の価値はストレスの有無ばかりで決まるわけではない。「収入」や「やりがい」などは度外視されているため、「満足できる仕事」とイコールではないが、どんな仕事がランクインしたか見てみよう。


・どんな仕事にストレスを感じるか

本題に入る前に「どんな仕事にストレスを感じるか」を概観してみる。調査によると、ほとんどの回答が「仕事へのプレッシャー」と「対人関係」の2つに大別されることがわかった。

前者の「仕事へのプレッシャー」としては、「ノルマがある・成果を求められる」「時間や納期に追われる」「責任が重い」など。

具体的な声として「月が変わるとまたゼロからのスタートなので常に気が休まらない」「結果が出ないと上司に嫌味を言われる」「同僚はライバルなので社内がギスギスする」といったことが挙がった。


後者の「対人関係」の具体例としては、「顧客対応・接客」「社内の人間関係が悪い」「同僚との関わりが多い」などが挙がった。同僚との関わりの多さが、長所どころか短所になってしまうことには少々悲しいものがあるが、職場内の人間関係に悩む人は少なくない。

営業職や接客業も、人と関わるのが好きな人には適職だが、そうではないと一転してストレス要因になることが現れている。

逆にストレスのない仕事というのは、上記のことが「当てはまらない」仕事ということになるが、ランキングを確認してみよう。


・第1位「倉庫・工場での作業」

堂々の第1位に輝いたのが「倉庫・工場での作業」! 総数532名のうち96名もの回答者(複数回答あり)が挙げておりダントツだ。

理由としては「1人で黙々と作業する仕事なので」「機械や作業に集中していておしゃべりはできない(=おしゃべりしなくていい)」「特別な技能が必要なく、成長する必要もない」などが挙がった。

売上や契約数のようなノルマがなく、そのため同僚同士が競うようなライバル関係もなく、ルーティン化された仕事を淡々とこなすためにストレスが少ない、ということのようだ。高度な技術を求められず、上司からの要求にも無理がないという。


・第2位「事務職」

続いての第2位は「事務職」。「ある程度マニュアル化され、その通りにやれば特に問題は発生しない」「1人でパソコンに向かって作業できる」「マイペースにできてラクだった」などの声が上がった。データ整理や資料作成など、依頼された仕事を正確かつ着実にこなせる人には向いているだろう。


・第3位「販売職」

第3位は意外にも、アパレルや食品などの「販売職」がランクイン。ただし、具体的な声を聞くと「厳しいノルマがない」ということは必須条件。

理由として挙がったのは「お客様とお話をすることが楽しかったから」「人としゃべるのが好きだったため」「甘いものが好き(ケーキ販売員)」など。もとから人が好きで、さらに販売する商品にも誇りや愛着があると、楽しく働ける仕事のようだ。

「職場の人間関係がよい」と答える人も多かったそうで、社交性が高い人が集まると、職場も和気あいあいとした雰囲気になることが想像できる。合わない人にはとことん合わないが、合う人には天職となる可能性がある仕事だ。


・第4位「データ入力」

第4位は、事務職と同じような理由で「データ入力」が入った。具体的な理由としては「自分のペースで黙々とできる」「コミュニケーションをそんなに必要としない」などが挙がった。

事務職に比べてさらに業務内容がしぼられ、電話応対や来客対応もなくなる。マルチタスクが苦手な人や、仕事のペースを乱されたくない人にはうってつけだ。


・第5位「飲食店の接客」

第5位は「飲食店の接客」。理由として「食べることも人と関わることも大好き」「お客様からありがとう、美味しそう、という声を聞くと頑張ろうと思える」「職務内容がマニュアル化されていて、やりやすかった」といった声が。

販売職と同じく人と関わることが好きであれば、ストレスとは正反対の「やりがい」になる可能性がある。さらに大手チェーン店のように仕事内容や接客方法がマニュアル化されている場合は、仕事の習熟の面でもストレスを感じにくいという。


ちなみに第6位以下は「受付 / 案内業務」「ドライバー / 配達」が続く。ランク外になるが、外国人が多く自由な雰囲気の「英会話講師」、待機時間が多い「警備員」、1人でできる「清掃員」なども出ていた。


・職業性ストレスの4分類

産業保健の分野に「JDCモデル」という理論がある。職業性ストレスは「仕事の要求度 × コントロール」で4分類できるというもの。

「仕事の要求度」というのは、仕事の量、難しさ、かかる時間、体力、責任など、仕事そのものの大変さ。難しい仕事を任せられたり、めちゃくちゃ時間のかかる仕事だったりすると、当然だが高ストレス状態になりやすい。

もう1つの「コントロール」というのは「自分がどれだけその仕事をコントロールできるか」を指す。たとえば仕事をする時間・手順・方針などを自分で決められるか。あるいは自分の知識や能力でもって対処できるか。

ガチガチに拘束時間が決まっていて、上司の決定に意見を挟む余地もなく、自分のスキルで対処できる範囲を超えている、となるとその仕事はコントロールできていない。


1番ストレスがないのは、あまり難しくない仕事(要求度低い)を、自分の裁量で進められる(コントロール高い)とき。調査でランクインしているのも、そういった職種がほとんどだ。


逆に最もストレスフルなのは、難しい仕事(要求度高い)を、まったく自分の裁量権なく(コントロール低い)やらなくちゃならないとき。望まない長時間労働、クライアント次第の納期、上司が自分のやり方に固執、などなど。これは死ぬ。

ちなみに、あまり難しくない仕事(要求度低い)を、自分の裁量権なく(コントロール低い)指示どおりにやる仕事は、ストレスは少ないが受動的な労働姿勢になるといわれる。人によっては退屈な仕事となるだろう。

逆に難しい仕事(要求度高い)を、自分の裁量で進められる(コントロール高い)ときは、自身の実力やアイディアを発揮してバリバリ仕事をしている状態なので、やりがいを感じて能動的に働いている状態とされる。


・あなたの仕事は?

余談だがロケットニュースのライターは……成果主義でありかつ創意工夫しなければならないので、要求度は低くないが、いつ働くか、どう働くかなど個人の自由度・裁量度がとても高いので、やりがいのある仕事だろう。

あなたの仕事はどうだろうか? 繰り返すが、ストレスの有無だけが仕事の良し悪しではない。収入、やりがい、成長、安定……なにに重きを置くかは人それぞれだ。

ただし、「負担の重い仕事を、まったく裁量権なくやらされている」ことに加え、ダメ押しとして「サポートがない」と、メンタルヘルスに深刻な影響があるといわれているので留意して欲しい。


参考リンク:株式会社ビズヒッツ独立行政法人労働政策研究・研修機構
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.