法外な行為に加担することで報酬を得る闇バイト。ひと言に闇バイトと言ってもその深度は様々だが、作業を分割して、単品で見ると普通の行動にしてしまうことにより、やる側の罪の意識を低くさせるという意味合いもあるだろう。

これくらいならギリOKでしょ。今回、闇バイトをやっていた人に話を聞いたところ、まず思ったことは「闇バイトに当たるとは知らずにやっていた人が多い」ということ。では、なぜそのバイトを始めるに至ったのか

・客だった

最初に話を聞いたのは、お見合いパブでサクラをやっていたことがあるというAさん。お見合いパブとは女性客は無料で飲み食いできることにより出会いの場を提供する相席居酒屋のようなものだが、最初から相席できるわけではない。

ざっくり言うと、まず男性がメッセージカードを女性に渡すことから始まり、そのメッセージが気に入れば晴れて相席という感じになる店なのだとか。店としては一般女性との出会いを謳っていたが、普通に店からお金をもらってサクラをしていたとのこと。そのバイトを始めたキッカケは


Aさん「最初は客として通ってました。とは言え、呑むのも食べるのも無料なので客と呼べるかは分かりませんが(笑)そしたら、お店の人と知り合いになって『お金払うから今日来てくれない?』みたいな感じになりました」


──なんで辞めたんですか


Aさん「行ってるうちに向こうの要求が多くなってきたから。例えば『断りすぎだからそろそろ誰かと外出て』みたいな。それで面倒くさくなりました」


──辞める時も、メールを無視するようにしただけだったというAさん。続いて、もう少しガチで闇バイトをやっていたBさんに話を聞いた。

・組織

Bさんは生計を立てるためにグループで出会い系サイトのサクラの仕事をやっていた人物である。仕事内容は管理者が作業の指示を出し、30人くらいのサクラが文面を考えメールをユーザーに個別送信するというもの。

Bさんいわく、働いている人は上で20代後半までで、自分を含めサクラは基本的にはクラスで目立たないタイプの人ばかり。一方、管理者はチャライ人や某有名大学の学生などのエリートもいて個性派だったという。そのバイトを始めたキッカケは?


Bさん「最初、派遣バイトとか接客で食いつないでたんですが生きていくのが辛すぎまして。ノルマがなく人と話さなくていい仕事ならなんでもいいと思うようになってました。しかし、資格とか能力がないので、まず面接に受からなかったんですね。

そんな中、求人サイトに『メール発信』という業務で募集されていた仕事に応募したら運よく受かりまして。出勤したら出会い系のサクラでした」


──出勤まで分からなかったんですか


Bさん「厳密には、面接の時に言われたんですけど、自分には他に選択肢がありませんでした。やってみたら、皆さん同じような感じでバイトに来ていて、業務中は心に引っかかるものはなくもないんですけど、励まし合ってたらやりがいも感じるようになって、一人前になりたいなあと思ってました」


──なんで辞めたんですか


Bさん「ある日、オフィスに出社したら会社がなくなってました。パソコンやデスクも綺麗さっぱりもぬけの殻。電話もつながらなくて。愕然としましたね」


──『闇金ウシジマくん』みたいで逆にテンションが上がったというBさん。切り捨てられたことを察して、それ以来闇バイトはしていないらしい。

・通販サイト偽レビュー

最後は、同じサクラでも商品のサクラをしていたCさん。仕事の内容はこうだ。まず、LINEでレビューして欲しい商品のアドレスなどが送られてくる。

それにレビューの内容を返信し、先方の確認後、通販サイトのレビューに書き込むという感じ。仕事を終えると、「商品代金+報酬」が支払われるのだとか。

メーカーがやっているわけではなく、そういったものを取りまとめている業者伝いに仕事が来るという。派遣バイトみたいなシステムなわけか。そのバイトを始めたキッカケは?


Cさん「1回就職したんですが、上司ともめて辞めたんですね。で、もっと人生楽しみたくてブラブラしてたら知り合いがそれやってて、なんにもウマくいかないし暇つぶしに。その知り合いは普通にジョブサイトで募集してたって言ってました」


──なんで辞めたんですか


Cさん「面倒くさくなって。最初はちょっと社会の裏側に触れたような新鮮味が良かったんですけど、よく考えたら欲しいものもそんなにないし。怪しい日本語も慣れたら普通だし、そもそもなんにもしたくない。ただダラダラ生きてたいのに、なんでそれが許されないんだろう?」

・入口は普通にある

今回、あえて同じ質問を複数人にしてみたわけだが、闇バイトをするキッカケや入口も色々あることが伺える。

また、どうやら闇バイトであってもやはりバイト。ダメなヤツは続かないようだ。つまり、大仕事を任せられる人物というのは、できる人間なのかもしれない。願わくば、その能力を社会の役に立てて欲しいところである。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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