怪談に幽霊はつきものだが「恨めしや」的な陰湿なイメージって日本独特なものである気がする。言いたいこと言えない的なところがいかにも日本人だからだ。それこそ、アメリカ人がブチキレていたら、「ファーーーーック!」ってショットガン振り回して登場しそうなもんである(偏見)。

その時ふと思った。「怪談ってアメリカにもあるんだろうか?」と。そう言えば、アメリカの映画では、チュパカブラとかゾンビとかモンスター的なパニックムービーは多いけど不気味系のホラー映画はあんまり見ない。これってひょっとして、そういう文化がないのでは? そこでアメリカ人に聞いてみた。

・日本好きのアメリカ人ケーシー

話を伺ったのは、ロケットニュース24英語版サイト「SORA NEWS24」ライターのケーシーである。アメリカ出身だが、日本在住で日本文化を理解している彼なら、もしアメリカに怪談の文化がなかったとしても意味が理解できるだろうと思ったからだ。

・『ブラッディ・メアリー』

だが、結果から言うと、ケーシーに怪談の意味について説明する必要はなかった。ケーシーいわく、アメリカには超有名な怪談が存在するというのである。


ケーシー「アメリカの怪談と言えば、やっぱり『Bloody Mary(血まみれのメアリー)』かな」


──名前からすでに怖いですが……それはどんな話なんですか


ケーシー「色々な言い伝えがあるけど、俺は子供の頃に聞いたのはこうだ。まず、家のトイレに入って鏡に水を掛ける。次に、扉を閉めて電気を消して鏡をジーッと見るんだ。すると、血まみれの女性の姿が見えてくるんだって。

これはキリスト教のマリア様(英語で「Mary」)っていう人もいるし、血まみれのマリア様は殺されている赤ちゃんのキリストを持っているっていう人もいる」


──怖ッ! マリア様ってことは、外見的には大人の女性ってイメージですかね


ケーシー「そうだな。20代~30代、とにかく神秘的母性があふれるオーラなはずだ。この人が血まみれで穢れ、暴力的な感じになると不快。闇を感じる。

宗教関連の怪談だけど、聖書などにはもちろん何も書いていない。怪談ファンとか子供が作った都市伝説だと思う。アメリカの悪ガキのハロウィーンパーティーとかで人気で、俺が初めて聞いたのは小4ぐらいの時かな。2年上のいとこから聞いて「そんなはずないじゃん!」って反応したけど、やっぱりちょっと怖かった


──ケーシーさんはやったことがあるんですか


ケーシー「ない。俺は基本的にホラー映画や怪談はものすごく苦手だから。普通に怖いからこれからも多分やらない」


──アメリカ版トイレの花子さんみたいな話ですね


ケーシー「科学的にはずっと同じ物を見ると脳が少しおかしくなって幻覚を見てしまい、Bloody Maryが現れるっていう説があるらしい。アメリカではユニットバスが多くて大体トイレに鏡があるから、“鏡がある場所” と “暗くできる部屋” という条件を満たすのがトイレなのかも。確かにトイレという意味では花子さんだな」


──とのこと。鏡に映るという不気味さも、子供たちの間でまことしやかに囁かれるというのも、まさに日本の怪談と同じ空気を有している。学校の七不思議みたいじゃないか。

科学的に本当に見る可能性を分析されているのも、逆に言うとそれほど浸透している話ということだろう。それにしても、現れるのがマリア様というところにアメリカを感じずにはいられない。日本だと、女性が現れてもマリア様とはならないだろうから。やっぱり怖さには文化が出るんだな。剣呑剣呑。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.