あれは今から3~4年ほど前のことだっただろうか? 各メーカーがこぞって「スイーツ系カップやきそば」を展開していたのは──。明星一平ちゃんは「チョコレート味」と「ショートケーキ味」で世間のド肝を抜き、ペヤングは「チョコレートやきそば」でこの波に乗った。

結局のところ誰も勝者になれなかったことを思うと「スイーツ系カップやきそば」にはそもそも無理があるのだろう。ところが2020年9月、ペヤングが突如として『アップルパイテイストやきそば』の販売を開始した。バレンタインもクリスマスも無関係のこの時期にアップルパイ味を放り込んで来るとは……! 完全に奇襲と言わざるを得ない。

・変わりゆくペヤング

今でこそ短いスパンで変わりダネの新商品を展開しているペヤングだが、実は4年ほど前までは「ペヤングソースやきそば」以外の商品は皆無に近かった。せいぜい「激辛」を細々と販売している程度で「〇〇MAX」といったやきそばは、年に数作が出るか出ないかくらいだったと記憶している。

潮目が変わったのは3年ほど前からで、一時期は毎週のように新商品を販売。あまりに目まぐるしい展開に消費が追いつかず「スカルプDやきそば」を筆頭にいくつかのペヤングは、スーパーなどで投げ売りの対象となっていた。いつまでも売れないペヤングに、切ない感情を抱いた方も少なくないだろう。

・スイーツ系は過去に1作だけ

その流れの中で発売されたのが「チョコレート味」で、黒帯ペヤンガーを自負する記者の記憶だと、唯一の “スイーツ系ぺヤング” である。その後も新商品ラッシュを仕掛けているペヤングではあるが、スイーツ系がこの1つだけだったことを考えると「もうスイーツ系はこりごり」と大いに反省したに違いない。


ところが──。


なんの前触れもなく『ペヤングアップルパイテイストやきそば』が発売されたから驚いてしまった。公式サイトには「アップルパイの味わいを忠実に再現した、おやつ感覚でお楽しみいただけける商品です」と手短に記されているが、なぜこのタイミングなのかについては言及がない。

実は虎視眈々と「スイーツ系カップやきそば」を狙っていたのか? それとも偶然「これならイケる!」と会心の仕上がりになってしまったのか? 確かめる方法はただ1つ、実際に食べてみるしかないだろう

・香りがすごい

というわけで、近所のスーパーで『ペヤングアップルパイテイストやきそば』を購入し、いざ実食! 作り方はいつも通りのペヤングで、湯切りをして麺にソースを絡めれば完成だ。かやくの「乾燥りんご」が戸惑っていたように見えたのは気のせいだろうか?

それはどうでもいいとして、特徴的なのは むせかえるほどのド甘いバターの香りである。駅構内で鼻をくすぐるような、あるいはマックのアップルパイを鼻の奥に突っ込まれたような、とにかく甘い香りがハンパではない。震える箸に麺を絡ませて食べてみると……!


おや? 意外と甘くない。


・麺は塩分が強め

先述のように香りは「ド甘いバター」である。……が、食べてみると甘さは控えめて、むしろそれなりに塩分が強い。香りからメチャメチャ甘い味の麺を想像していたが、カップやきそばとして考えた場合、これくらい塩気がないと食べ切るのは難しいハズだ。


だが、ウマくはない。


忌憚(きたん)なく申し上げるが、塩分を強めにして「やきそば」にだいぶ寄せている一方で、アップルパイ感はかなり失われてしまっている。香りはド甘くアップルパイ、片や味は塩気が強め……。何度食べ直しても美味しいとは思えず、チグハグな印象は否めなかった。

・食べ切る唯一の方法

正直、親から相当厳しくしつけられているか、断食4日目くらいのペコペコちゃんでない限り『ペヤングアップルパイテイストやきそば』を完食するのは難しいハズ。とはいえ、誰でも真似できる技が1つだけある。ズバリ「イマジネーション」だ。

とにかく脳をフルで活性化させ「本場ヨーロッパの塩分の強いアップルパイを食べている」と自分に言い聞かせよう。「日本のは甘すぎるんだよね」「本場はこんなもんだよ」などと、適当なシチュエーションをでっちあげるとさらに効果は高い。

するとあら不思議……意外と食べられる。人間の持つイマジネーションの力を最大限に発揮できれば『ペヤングアップルパイテイストやきそば』も最後まで何とか食べ切れるだろう。逆に純粋に『ペヤングアップルパイテイストやきそば』を食べてしまうと、なかなか厳しい戦いになるハズだ。

というわけで、『ペヤングアップルパイテイストやきそば』を召し上がるうえで何より重要なのは “イマジネーション力” と申し上げたい。『ペヤングアップルパイテイストやきそば』はメーカー希望小売価格税別205円、全国のスーパーやコンビニで販売中だ。


瞳を閉じて


君を描くよ


それだけでいい


例え世界が僕を残して


過ぎ去ろうとしても


──完──


参照元:ペヤング公式サイト
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
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