
1970年の発売以来、日本の子どもたちの学習シーンに欠かせない「ジャポニカ学習帳」(ショウワノート株式会社)が50周年を迎えた。表紙を飾ってきたのは、学習帳のためだけに世界各国で撮影されたオリジナル写真だ。
実はこの学習帳から「昆虫の表紙」が姿を消していたことをご存じだろうか。以前は豊富にあった昆虫シリーズだが、保護者や教師から「子どもが気持ち悪がっている」という声が上がるようになり、2012年から製造されなくなったとか。
しかし同社は世界的な昆虫の減少に危機感をもち、今こそ子どもたちに興味をもってもらいたいと、発売50周年の記念に「昆虫シリーズ」を復活させた。
・ジャポニカ学習帳 昆虫写真柄(参考価格190円)
今回復活した「昆虫写真柄」は漢字練習帳や自由帳など全5種。チョウやハナカマキリといった比較的「昆虫感」が少ない図柄もあれば……
正面からの顔写真のどアップも! こ、これは正直……気持ち悪い!!
筆者も昆虫が苦手なので、直視できないレベルだ。どうせやるなら忖度(そんたく)せずに、というショウワノートの本気を感じる。
ふろくの読み物では、表紙を撮影した写真家と昆虫との出会いのエピソードや、生態をイラストでわかりやすく紹介。裏表紙にも写真が使われ、昆虫の不思議な世界を堪能できる1冊となっている。
どうでもいい話だが、筆者が決定的に昆虫嫌いになったのは小学生のとき。ちょっとグロテスクな話なので、苦手な方は読み飛ばしてほしい。
十五夜が近づき、近所の空き地にススキをとりに行ったときのことだ。今どきの子ならクロックスだろうが、筆者は一体成型のピンクのゴムサンダルを履いていた。歩くと踵(かかと)と底面のあいだに隙間ができるような「つっかけ」だ。
草をかきわけて奥へ奥へと進んでいたとき、ふいに踵(かかと)がジワッと冷たくなった。足下を見ると、踵(かかと)とサンダル底面のあいだに……
これ以上はおぞましくて書けないのだが、それ以来、緑色でジャンプ力のある昆虫、とくにトノサマバッタのような「四角いヤツ」が死ぬほど苦手になった。目の前にいたら悲鳴を上げるほどだ。
しかし実際には、ここ数十年のあいだ筆者はバッタを目撃していない。それどころかミミズ、カタツムリ、ダンゴムシなど「昔は普通にその辺のブロック塀とか道路にいた虫たち」をトンと見かけなくなった。田舎暮らしの筆者でさえそうなのだから、都市部ならどれほどか。
・ジャポニカから昆虫が消えた
今さら説明するまでもないが「ジャポニカ学習帳」は、発売以来、累計12億冊以上を売り上げている学年別・教科別の学習ノートだ。国語や算数などの教科学習用のほか、連絡帳、自由帳、作文帳、日記帳、こづかい帳など、およそ小学校生活に必要なノートはすべて揃っている。
1978年からは一貫して昆虫生態写真家の山口進氏の写真を使用。小学館が監修した「学習図鑑」「学習百科」といった読み物がついていることも特徴だ。
しかし都市化が進み、昆虫を「気持ち悪い」「怖い」と思う子どもが増えたためか、ショウワノートには否定的な声も届くようになる。「1人でも嫌だと感じる人がいるのであればやめよう」という考えで、改版のたびに徐々に数を減らし、最終的には昆虫写真を使わないことに決めたのだそうだ。
現在はカラフルな花の写真や、「愛されつづける名作」シリーズとしてディズニーやムーミンなどのキャラクターが登場している。
・なぜふたたび昆虫?
しかし現在、昆虫は世界中ほぼすべての地域で劇的に数を減らしており、数十年後には全体の約40%が絶滅する可能性があるのだという。昆虫の減少は、人間の生きている環境にも大きな影響を与える。
「小学生には今一度、昆虫のもつビジュアル的な魅力や、不思議な生態などをもっともっと知ってほしい」「昆虫に興味、関心をもってもらいたい」という思いから、今回の復刻を決めたという。
どうしても写真が無理、という人には「昆虫イラスト柄(全5種)」もある。デフォルメされた可愛らしいイラストなので、虫が苦手でも大丈夫だと思う。「昆虫に関心をもってほしい」という同社の思いは果たされるだろう。
自分を棚に上げていうのもなんだが、子どもたちがまったく「虫を知らずに育つ」ということにも違和感を抱く。怖いし不気味だし気持ち悪いけれども、生態系の大事な一部だからだ。
約6000種しかいない哺乳類に対して、約100万種ともいわれる昆虫。地球上でもっとも多彩な進化と繁栄を遂げてきた生物群だ。ショウワノートの心意気を応援したい。
参考リンク:ショウワノート株式会社(ジャポニカ学習帳のこだわり、昆虫シリーズ特設ページ)、withnews
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
冨樫さや






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