日本の国民的映画といえば『男はつらいよ』である。「寅さん」こと寅次郎が日本各地を旅するのが作品の基本的な流れ。しかし全50にも及ぶシリーズのうち、1つだけ海外を舞台にした作品があることをご存知だろうか。
それはシリーズ第41作目『寅次郎 心の旅路』。場所は遠くオーストリアのウィーンだ。遠い異国で寅さんが巻き起こす珍道中。詳細は本編をご覧いただくとして、それを記念してウィーンには『寅さんパーク』なる公園があるのだという。
そうと聞けば行ってみたくなるのがファンというもの……止めねぇでくれよ。
・葛飾柴又から9000km
ちなみに寅さんパークのことを教えてくれたのは、当サイトのP.K.サンジュン記者である。『男はつらいよ』好きとして知られる彼は、寅さんの素晴らしさを人々に布教する活動を日々行っているのだ。
ウィーンの有名観光地を歩くと、探さずとも『男はつらいよ』のロケ地をいくつも見つけることができる。ウィーンはヨーロッパの中でもかなりヨーロッパっぽいところであり、『寅次郎 心の旅路』はシリーズで相当異質と言っていい。
『寅さん公園』は有名なドナウ川ほど近くに位置する。中心部から電車を乗り継ぐこと1時間弱。車窓の景色は都会的な中心部から、一瞬でのどかな田舎町へと変貌。
そして降り立った駅は「のどか」を通り越して「なんか寂しげ」な場所だ。寅さんゆかりの地があるなどと、とても信じられない雰囲気……。
・誰も知らない
最寄駅から公園までやや距離があるようなので、地元の人に「トラサンパークはどっちか」と尋ねてみることに。ところが、何人に声をかけても「知らない」という答えだ。
ただ彼らはみな親切で、中には「ちょっと待って」と地図を広げてくれる人もいた。世界中どこへ行っても田舎の人は優しいな! 結局は地図アプリを頼りに歩くこと20分……
メチャクチャさりげなく……
あまりにも突然に……
「あの男」の肖像をデザインした石碑が出現するさまは……
ちょっとシュールですらある。
・わけを聞こう
『寅さんパーク』は広さ約20平方メートル。芝生にベンチのいかにも西洋風な公園であり、寅さんを感じさせるものといえば石碑、それから日本語で書かれた案内板のみだ。これでは地元の人が知らないのもうなずける。
日本男児を100倍濃縮したかのごとき “ザ・日本人” といった風貌の寅さん。ウィーンの街並みにはあまりにミスマッチ……かと思いきや、そうとも言い切れないらしい。
実はここウィーンのフロリズドルフ区は、なんと「葛飾に似ている」ということもあって映画のロケ地になった経緯があるのだそう。言われてみれば閑静な郊外という意味では近いかも? そうなってくると現地の人にとって寅さんの石碑は、意外とこの場所に馴染んでいるのかもしれない。
また『寅さん公園』をよく見ると日本庭園風に造られた一角もあり、日本に対する敬意のようなものが感じられてホロリとくる。なにはともあれ、こんな異国であなたに会えるなんて……嬉しいねぇ。
・今回ご紹介した場所
施設名 寅さん公園
住所 An der Oberen Alten Donau 6, 1210 Wien
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
▼英語の表記はそのまんま『TORA-SAN-PARK』
▼ポケモンGOのポケストップにもなっている