最初に結論を書いてしまうと、「いきなり! ステーキ」のサブスクはひっそりと終了していた。スポーツ新聞っぽく書くならば、「いきなりステーキのサブスク、いきなり終了」である。

1つのサービスがひっそりと始まり、ひっそりと終わる。よくあることだ。珍しくも何ともない。しかし私は、このサブスクこそ「いきなり! ステーキ」の伝説的サービスになる予感がしている。なぜなら、何もかもが「いきなりすぎた」からだ。

そもそも、始まりからして “いきなり” だった。「いきなり! ステーキ」の公式ホームページを見ながら振り返ってみると、サブスクの開始がアナウンスされたのは2020年3月31日。それを読めば、翌日の4月1日からサブスクを始めるという。

あまりにも いきなりすぎる。もはや現場の混乱を心配してしまうレベルのスピード感だ。告知期間が1日しかないのにサブスクの存在が認知されるのかってところも気になるが、もっとすごいのはタイミングだろう。

思い出して欲しい。その頃の空気感を。2020年3月31日といえば、新型コロナに対する緊張感がもっとも高まっていた時期。営業を自粛する飲食店が増え、「緊急事態宣言を早く出してくれ」という声が日本中の至るところで聞こえていた頃だ。過去の記事でも紹介したが、実際にサブスク開始の6日後に緊急事態宣言が出ている。


つまり飲食店に逆風が吹きまくっていた時期に、「いきなり! ステーキ」はここまでの “いきなり” っぷりを見せつけたのである。

なお、サブスクの内容は「月額2000円で飲食代が10%割引になる」というもの。テイクアウトも割引されるが、店内で食べても割引になる。早い話が、特にテイクアウトだけを対象にしたサブスクではない


・宣言解除後に対応店舗に行ってみた

さて、そんなサブスクの開始から2カ月半が経った6月19日。私はサブスク対応店舗へ行ってみることにした。本来はすぐに行って実態を確かめたかったのだが、対応店舗が少なく、もっとも近い店でも10分ほど電車に乗る必要があったので自粛していたのだ。

状況が2カ月前とは変わったこともあり店舗を訪れたところ、結果は上に述べた通り。店員さんが教えてくれた内容をざっくりまとめると、以下のような感じだ。


「サービス自体が終了となっておりまして、新規申し込みは受け付けていません。すでにサブスクに申し込んでくれた人には対応していますが……。他の対応店舗も同様です」


それを聞いた直後、私は「いきなり! ステーキ」の公式ホームページを見てみたが、サブスク終了の告知はどこにもない(2020年6月19日時点)。どこかにこっそり書かれているのかもしれないが、少なくとも私は見つけられなかった。

もしかしたら、私以外に誰もサブスクのことを気にしなかったので、「いきなり! ステーキ」からすれば終了したことを大々的に知らせる必要がなかったのかもしれない。そう考えると少し寂しいが、ある意味で「いきなり」というスタンスからは全くブレない終わり方だとも言える。

誰も予測できないタイミングで始まり、ひっそりと終わる。もはやフリージャズや前衛演劇の域と言っていいかもしれない。それほどに「いきなり」。だからサブスクは、「いきなり! ステーキ」の “いきなり感” をもっとも体現したサービスとして記憶されることだろう。

そしてもし将来的にサブスクが復活するならば、それもまた「いきなり」であるはずだ。個人的には、そうなって欲しい。ついでに1つワガママを言わせてもらうと、もうちょっとお得なサブスクとして生まれ変わってくれたら最高だ。

「いきなり! ステーキ」のサブスクがいきなり復活! 超お得な内容で人気が殺到したため対応店舗もいきなり拡大!! ……という展開を切に願う。

参考リンク:いきなり! ステーキ「定額・いきなりサブスク」
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

▼余談だが、数カ月ぶりに店舗内で「ワイルドステーキ」を食べた。美味い。