
映画を通して多くのことを学んできた。パリの街並みの美しさ。ホオジロザメの恐ろしさ。タイムマシンに必要な電力は1.21ジゴワットで、ゾンビにはヘッドショットが有効。ファイト・クラブのことを口外してはいけないし、セガールを敵にまわしてはいけない……。
と、このように特に知らなくてもいい知識を得ることも多いが、世の中や物事の理解を深めるのに役に立つ映画もまた多い。そこで今回は「緊急事態宣言」「パンデミック」「医療崩壊」を描いた作品を紹介したい。まさにそうした状況におかれている今、見ておいて損はない。
・『シン・ゴジラ』でも遅い “緊急事態宣言”
先日、発令された緊急事態宣言について「遅い!」と感じている人は是非、『シン・ゴジラ』を見てほしい。本作ではゴジラの出現を受けて、政府が災害対策基本法に定める「災害緊急事態の布告を宣言」するのだが……それに至るまでの手順が実にまどろっこしいのだ。
まず映画冒頭、政府は東京湾での異変(※この時点では “水蒸気爆発”)を認めると首相官邸の総理執務室に関係閣僚らが集まり総理大臣に “レク” (状況報告)をするところから始まる。その後、”水蒸気” の正体について意見を交換しあうのだが、やれ『原子力潜水艦事故』だの『海底火山の噴火』だの『巨大生物』だのと、話がまとまらない。
そこで結論を急ぐ官房長官が「とりあえず基本的対処方針を取りまとめましょう」と水を向けると、一同はわざわざ総理執務室から別の部屋(大会議室)へと移動。しかし、場所を移しても閣僚からは形式的な報告が続いたり、「経済的損失と安全の優先」を考慮した慎重な議論が二転三転したりと、政府の対応がなかなか定まらない。
そうこうしているうちに東京湾の “水蒸気” が「巨大生物」であることが発覚すると会議は中断され、なぜか再び総理執務室へと戻ってから議論を再開させる。いや場所なんかどこでもいいだろ! とツッコミたくなるのだが、そんな調子でモタモタしている間に「巨大生物」は活発化していき、被害が拡大していく。
その後も会議ばかりが続く中、政府関係者らがこんなセリフを漏らす。
「形式的な会議は極力排除したいが、会議を開かないと動けないことが多すぎる」
「効率は悪いがそれが文書主義だ。民主主義の根幹だよ」
「しかし手続きを経ないと会見も開けないとは……」
一方の総理は、生物学の有識者を官邸に呼び出すも大した意見を得られなかったり、会見を開いたあげく事実と異なる情報を発言したりと実に無駄な動きが多いのだが、とにかくなんやかんやあって、やっとのことで「災害緊急事態の布告が宣言」される。
……と、こうした一連の描写は “緊急事態” への対応が後手後手にまわる政府を皮肉ったギャグシーンとしては非常に秀逸であり、どこか腑に落ちるのだ。
新型コロナウイルスの脅威に直面した現実世界の政府も、形式的な会議や経済的損失を憂慮するあまり慎重な議論を重ねたことが想像できる。それ自体は悪いことではないのだが、結果的に世間から「遅い!」と言われるようなタイミングで「緊急事態宣言」をするに至った……のかもしれない。
・新型コロナとそっくり 『コンテイジョン』
「まるで新型コロナの予言」と最近話題になっているのが、2011年公開『コンテイジョン』だ。パンデミック(感染症の世界的大流行)が発生し多数の死者が出る一方、なぜか特定の人は感染しないという厄介なウイルスと人類が闘う。
9年前に公開されたこの映画がちまたで “新型コロナの予言” と言われる理由は、「クラスタ」や「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」という単語が飛び出すだけでなく、買い占めやデマ、都市封鎖、手洗いの徹底を推奨する場面が描かれるなど、我々が今まさに直面している現状と非常に似ているからだ。
あまりにもリアルなため見ていて気味が悪いかもしれないが、ウイルスの分離 → ワクチンの開発 → サルへの実験 → ヒトへの投与 → 世界が救われるまでの過程をきちんと描いてくれているのが救い。
だからといって現実を楽観視してはいけないが、この映画を見てウイルスに打ち勝つ道筋を疑似体験すれば、暗いニュースが続く中でもいくらかは気分は晴れ希望も持てることだろう。
・これが “医療崩壊” 『感染列島』
2009年の邦画『感染列島』は、日本を舞台に謎のウイルスが感染拡大する様子が描かれるのだが、私が見ていてハッとさせられたのが “医療崩壊” が起きる瞬間である。ここで言う”医療崩壊” は、医療従事者のメンタル崩壊 である。
劇中では医療従事者らの元に感染者が次から次へと運び込まれ、やがて人工呼吸器が不足する。そうした中で「命の選別」が行われるも、感染者が1人また1人と亡くなってゆく。それでも彼らは希望を持って救命活動を行うのだが、その希望がすぐさま絶望へと変わる瞬間をエンドレスに繰り返し、文字通りメンタルが “崩壊” してゆくのだ。
そうした局面こそが、本当の意味での “医療崩壊” ではないだろうか。収容施設やベッド・マスク・人工呼吸器の不足も深刻な問題だが、それと同時に医療従事者の精神が摩耗され、擦り切れ、疲弊しているのかと思うと本当に心苦しい。過酷な環境で治療にあたっている医療従事者には感謝の気持ちしかない。
・自宅で “現場” を知ろう
以上3本を紹介したが、言うまでもなく映画の世界と現実は一緒ではない。ただ、こうした作品を通して新型コロナウイルスが猛威をふるう “現場” で何が起きているのか、その片鱗は垣間見ることはできよう。ステイホーム(自宅待機)中に鑑賞してみてはいかが。
参考リンク:シン・ゴジラ(Hulu)、コンテイジョン(Netflix)、感染列島(U-NEXT)
執筆:ショーン
ScreenShot:Hulu,Netflix,U-NEXT
ショーン





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