いまや日本を含む一部の国や地域にとどまらず、世界中で感染例が報告されている新型コロナウイルス。その影響力は甚大で、健康そのものはもちろんのこと世界経済にも暗い影を落としている。
今回お伝えするのは映画業界。新型コロナウイルスは映画業界にどのような影響を及ぼしているのか? 関係者数名に話を聞いたところ、映画業界も例に漏れず、かなりヘビーな状況になっているようだ。
・映画館は営業しているが
厚生労働省は新型コロナウイルスの感染経路の特徴として「換気が悪く」「人が密に集まって過ごすような空間」そして「不特定多数の人が接触するおそれが高い場所」を挙げている。
具体的にはスポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テント……などが発表されているが、映画館もそれなりに感染リスクがある施設の1つであろう。
・関係者に話を聞いた
現在のところ、日本で劇場を封鎖する大手映画館は現れていないが、それでも新型コロナウイルスに頭を悩ませている業界であることは間違いない。果たして実際にどんな影響が出ているのか? 映画関係者に話を聞いた。
──現在の映画業界の様子を聞かせてください。
「今のところ、粛々と仕事をしている……といった感じでしょうか。幸いにも映画館自体は営業していますが、もし映画館が営業を取りやめた場合はその対応に追われることになりそうです」
──なるほど。
「実際、いくつかの作品は公開時期が延期になっていますし、一般の方が参加される試写会は基本的に中止になっています。また、マスコミ関係者向けの試写会にもなかなか人が集まりません」
──ですよね。
「一応、席をいくつかずつ開けてお座りいただけるような配慮はしているのですが、それでもみなさんが不安に思う気持ちはわかりますので、こちらとしても手の尽くしようがないというのが正直なところです」
──なるほど。他にはありますか?
「海外からの来日ゲストがおおむねキャンセルになっていることでしょうか。ハリウッド系の監督や俳優さんたちが、わざわざ今の日本に来る必要はないですもんね」
──ですよね。
「本来であれば、日本・韓国・中国を短期間にめぐるツアーが多いのですが、今回は全てキャンセルになっています。この状況が落ち着かない限り、ハリウッドスターの来日も厳しいのではないでしょうか」
──わかりました。今後の展開はどうなりそうでしょうか?
「現在のところ、10日以降に発表されるという政府の方針によって判断する形になろうかと思います。そこで映画館が閉鎖するようなことになると、年間のスケジュールを組み直す必要が出てくるのではないでしょうか」
──ふむふむ。
「これは映画業界に限らないのですが、いつまでこの状況が続くかわからないため、我々としても身動きが取れないというか、ただ目の前のことをこなすのが精いっぱい、というのが正直なところです。一言でいえばお手上げです」
──わかります。
「例年、春先にかけてビッグタイトルが多く公開されるのですが、今年に限ってはまだわかりません。政府の発表を待ちつつ、早くこの状況が落ち着くことを祈るだけです。あたり前ですが、映画は余裕があるときに楽しむ “娯楽” だということを、改めて思い知らされました」
というわけで、映画業界でも新型コロナウイルスの影響は確実に出ており、今後の展開次第では更なる対応に追われることになりそうだ。やはり「先行きが見えない」という事実に、どの業界も決断をしかねている、といったところだろうか。
冒頭でもお伝えした通り、日本を含む特定の国や地域のみならず、世界中に蔓延の兆しを見せている新型コロナウイルス。いましばらくは世界規模で閉塞的な状況が続きそうだ。