どうやったら人が集まるのか? この問はバンドマンならびにライブハウス関係者の永遠の課題と言っても過言ではない。売れないバンドマンである私(中澤)も例外ではなく、類友の音楽仲間やライブハウス関係者と呑むと最終的にはその話をしている。
だが、そんな話し合いはいつも宙を手でつかもうとするかがごとく堂々巡りに終わるのだ。思うに、ライブが日常と化している人が話し合ったところで、本当の問題点に気づけないんじゃないだろうか? みんなもう感覚がバカになってるから。
そこで、ライブとは一切縁のない引きこもりをライブハウスに連れて行ってみた。
・西本大紀という男
──男の名は西本大紀。8年間のニート生活の末、ロケットニュース24で記者をしている無趣味・無特技・無職歴を自負する引きこもりである。
西本大紀「その説明は承服しかねる! 俺は引きこもりではない」
中澤「ほう。では、最近いつ外出したかを答えてみたまえ」
西本大紀「取材でコンビニにUFOを買いに行ったし天下一品にも行ったし」
中澤「内閣府によると、『ふだんは家にいるが,近所のコンビニなどには出かける』は “狭義の引きこもり” なのだとか……」
西本大紀「広義ではなくまさかの狭義……!」
中澤「恨むなら政府を恨むんだな」
西本大紀「バ、バカな……!!」
──そんな政府に定められた引きこもり・西本大紀は、やはりライブに1度も行ったことがないという。実は、西本がロケットニュース24に応募してきた時、面接を担当したのは私なのだが、当時、彼はこう言っていた。「経験したことがないことを体験していきたい」と。
それなら今からライブハウスに行ってみよう。西本の記者としての希望も叶えられるし、もし「また来たい」と思えれば引きこもりを脱却できるかもしれない。さらに、私も普段聞けない意見が聞けて一石三鳥ではないか。
・下北沢のライブハウスへ
そこで、さっそくライブハウスだらけの音楽の街・下北沢にやって来た我々。だがしかし……
西本大紀「すみません。俺はここまでが限界のようだ」
中澤「まだ駅前やがな」
西本大紀「街中から “圧” を感じる。お前みたいなヤツの来る場所じゃねえって。家に帰りたい」
中澤「大丈夫。みんな西本君にそこまで興味ないよ」
西本大紀「きっと俺みたいな引きこもりがライブハウスに入った瞬間、異常な数のピアスした人にボコボコにされるに決まってる!!」
中澤「そんな人は稀にしかいない。僕が守るから行こうぜ」
西本大紀「嫌です」
中澤「そう言わずせっかくここまで来たんだし……」
西本大紀「嫌です」
中澤「僕もついてるから……」
西本大紀「嫌です」
中澤「……」
西本大紀「……」
中澤「なにしにシモキタ来たんだコラァッ!」
西本大紀「嫌だ嫌だ嫌だーーーーー!!!」
西本大紀「ハッ……! この体勢はっ……!?」
中澤「クックック。かかったな。そう、手押し車だ」
西本大紀「すみません。足をおろしてはくれまいか? あっ、押さないで」
中澤「後ろの人が押すと前の人は進むしかない。それが手押し車よ。このままライブハウスまで押しきってくれるわ!」
西本大紀「おのれ謀ったな……!」
──手押し車でライブハウスに突入する引きこもり! しかし、ライブハウスにはそんな引きこもりが予想だにしない光景が広がっていた!! 地獄のライブハウス突入記は次ページからスタート!