それはあまりにも渋かった。味に媚(こび)が皆無。ほんのりと醤油の風味を感じさせるものの、たとえば日清カップヌードルしょうゆ味とは全然違う。カップヌードルしょうゆ味がアメリカンコーヒーだとするならば、こっちは白湯……と言いたくなるほど、あっさりしまくっているのだ。それも、 “極あ派” とでも呼びたくなるようなガチあっさり。
何の話かというと、精進料理のカップラーメン。その名も「精進ラーメン禅道 醤油」である。ネーミングからしてストイックさが漂っているが、味の方はもっとストイック。ひとくち食べたところ、なぜか禅寺が見えたので報告したい。
そのラーメンは “極あ派” であるがゆえに、当然ながら「あっさりした中に魚介の旨味が感じられる」的なチャラけた仕様ではない。魚、不使用。肉、不使用。玉子、不使用。それどころか、ニラやニンニクなどの香りの強い野菜も不使用。もっとも多く含まれているのは、おそらく精神力だろう。
誤解がないように言っておくと、マズいと感じたわけではない。正直なところメチャクチャうまいとも思わなかったが、それは私の舌が従来のカップラーメンに慣れすぎているからに違いない。逆に言うと、「従来のカップラーメンでは脂がきつい」って人は美味しく感じる可能性が高いように思う。
・ダイエッター向き…と言っていいのか?
また、もちろんのことカロリーなんてガッツリあるわけがない。1食につき284kcalで、脂質は8.9gだ。量も78gとそこまで多くない。
だからダイエットしている人にいいかも……と言いたいところだが、「そんな世俗にまみれた理由で食すべきではない。体重を減らしたいなら断食でもしてなさい」と言われそうな何かが、このラーメンにはある。
そもそも、低カロリーとはいえカップラーメン。食べることがダイエットにつながるのか? このカップラーメンを食べている人をダイエッターと呼んでいいのか? というか、精進料理のカップラーメンって一体何なんだ? なぜ2つを一緒にしたのか? と聞かれたら、簡単に答えられるものではない。まるで禅問答である。
・精神力が試される
考え出すと分からなくなるあたりも禅の精神を体現している……かどうかは不明だが、とにかく生半可な理由でこのカップラーメンを買うのはオススメできない。「あっさりしたラーメン食べたいな〜」くらいの人が購入するのは、ギャンブル度が高い気がする。
というのも、このカップラーメンは1つ300円(税込)と価格が結構する上に、2020年2月13日時点ではネット上で12個からしか買えないこともあって、口に合わなければ損失がデカくなってしまうからだ。
つまるところ、購入に際して覚悟と精神力が試される。ストイックなラーメンを楽しむには、口にする人の精神もそれ相応でなくてはいけない……ってことだろうか。
参考リンク:zen-foods「精進ラーメン禅道 醤油」
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
▼中身はよくあるカップラーメンとあまり変わらない。麺にかやく、仕上げるに入れるソースだ
▼作り方にも変わったところはない。かやくを投入した後、お湯を入れて3分待つ。仕上げにソースをかけて出来あがり
▼しかし、成分はさすがに精進料理。使われている野菜は、チンゲン菜、ニンジン、カボチャなど。ダシは、昆布をベースにした醤油味
▼お肉か!? と思ったら大豆ミートだった……
▼ストイックな精神の持ち主がカップラーメンを開発したら、はからずもベジタリアン向きかつダイエッター向きになってしまった……という感じである