先日、日帰りの出張で名古屋に行ってきた。ひと仕事を終えた後、まだ少し時間があったので、名古屋名物でも食べてから東京に帰ることに。こうなったら行くか……! ひつまぶし……!! となれば、場所は “あそこ” しかあるまい。

創業140年、名古屋市内に3店舗を構える ひつまぶしの老舗「あつた蓬莱軒」。言わずと知れた超が付くほどの有名店である。口コミ等を読む限る凄まじい大行列だそうだが……もう決めたぞ。私は今日、初の「あつた蓬莱軒」でひつまぶしを食らうッ!

・ひつまぶしの超有名店

市内に3軒ある「あつた蓬莱軒」の中で、今回私が選んだのは名古屋駅からもっとも近い「松坂屋店」である。地下鉄で10分程度と出張客も行きやすい立地だ。駅直結の松坂屋10階に店舗はあった。

いくら行列店とは言っても、平日の夕方でまだオープン前だし余裕やろと思っていたら、店の前ではすでに20人ほどが列をなしている。マジかよ、さすが有名店……! 貼ってあった案内によると並び方はあらかじめ決まっていて、行列がフロア全体に及ぶことも どうやらありそうだ。

・緊張の初来店

オープン後しばらくしてカウンター席に案内される私。店内は高級感が漂い、秩序立った非常に良い雰囲気である。特に理由はないが、これは飲まざるを得ないだろう。というわけで、瓶ビールの中瓶(税込750円)を注文し一人乾杯。本当にありがとうございます。

さて、ひつまぶしは湯葉のお吸い物と漬け物が付いて税込3990円となっている。肝吸いに変更する場合はプラス250円とのことだ。決して安くはない金額のため脳裏に一瞬サイゼのメニュー表がよぎるも、おひつのフタを開けるとそんな考えは彼方へブッ飛んでしまった。


キ……


キ、キキ……


キターーーーーーーーッ!!!!

・歓喜の瞬間

中には、うなぎがギッシリ詰まった至高のひつまぶしが……! くッ、なんちゅう眩しさだ! あまりに眩しすぎる!! このルックスだけでビールをもう1本イケそうではないか。まだ食ってないけど、名古屋最高ォォォォオオオオ!


うな丼感覚でガツガツかっ込みたくなるのをグッと堪え、ここは正しい食べ方でうなぎに感謝を示していきたい。はじめにおひつの中をしゃもじで十文字に4等分します。

・3通りの堪能法

そう、1杯目はありのままのうなぎの味を楽しむのです。食べてみるとこれがまた、外はカリッ&中はフワッという完全無欠の仕上がりでして、もうこのまま全部食ったろうかなという気になってしまいました。ひつまぶしとか関係あらへん。

それを再びグッと堪え、2杯目はねぎ・わさび・のりの薬味三銃士を心のままバシがけ。う、うめェ……。特にうなぎとわさびの相性の良さは異常である。うなぎの香ばしさ、そして上質なその旨みを、わさびがどこまでも引き立てるのだ。これなら無限に食べられそう。ていうか食べる!

という衝動をまたまたグッと堪え、3杯目は薬味三銃士の上から出汁をかけてお茶漬けに。うなぎの脂を出汁と薬味がサラリと洗い流し、上品な余韻だけを残していく。まるで素晴らしい映画を観終わった後のような気分だ。アタシ今、人生で一番幸せよ。

・どうすればいいのか

しかし、問題は4杯目である。この3つの食べ方の中から一人だけを選ばねばならないという、『バチェラー』も真っ青な無慈悲展開。私は一体誰を選んだらいいのか。そもそも一人になんて絞れるのか。果たして、自分はそこまでの男なのか。選べない……。

こうして何度も何度も自問自答を繰り返した結果、最終的に私が選択したのは4分の1をさらに3等分して12分の1にし、それぞれを3通りの食べ方でもう一度楽しむという掟破りの荒技であった。ナンバーワンにならなくてもいい。もともと特別なオンリーうなぎ。

・うなぎの声を聞く

「あつた蓬莱軒」のひつまぶしを食す──。それはもはや食事ではなく、私とうなぎとのある種の対話だったと言ってもいいのではないか。ひつまぶしと向き合っている間は他のことなどを考えている余裕はなく、その後の食べ方も含め、常に100%うなぎに集中しなければならない。

周囲を見渡すと、一人客よりも誰かと一緒に来店している客の方が多いようだ。皆、それぞれに会話をしながら食事を楽しんでいる。だが私はこう言いたい。それで本当にうなぎと言葉を交わせるのかと。生命の力に満ち満ちたうなぎのすべてを受け止めきれるのかと。

・孤独のグルメ

まあ、突き詰めれば食事とはすべてそういう行為なのかもしれないが、特にひつまぶしに関しては うなぎとの対話が必要不可欠。よって私は、ひつまぶしとは一人で食べるべきものだと考える。「あつた蓬莱軒」は、彼らの声を聞くのにこれ以上ない場所だった。県外の方もぜひ足を運んでみてほしい。もちろん、一人でね。

・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 あつた蓬莱軒 松坂屋店
住所 愛知県名古屋市中区栄3-30-8 松坂屋名古屋店南館10F
時間 11:00~14:30、16:30~20:30(平日)、11:00~20:30(土日祝)
休日 不定休(松坂屋名古屋店に準ずる)

参考リンク:あつた蓬莱軒
Report:あひるねこ
Photo:RocketNews24.