これも人気漫画の宿命なのだろうか? つい先日、当サイトにて「鬼滅の刃と魁!! 男塾のあからさますぎる5つの共通点」という記事を公開したときのこと。少なくない読者の方から「鬼滅の刃はジョジョの奇妙な冒険(特に第2部)に似ている」とのお声を頂戴した。

てっきり私、P.K.サンジュンは「鬼滅の刃 = 令和の男塾」とばかり思っていたが、どうやら世間的にはやや違う感想らしい。なるほど、鬼滅の刃は令和のジョジョなのか……! というわけで、久しぶりに「ジョジョの奇妙な冒険」を読み返してみたのだが、結論から言うと個人的にはジョジョよりも “あの名作” の影を感じた次第である。

・鬼滅とジョジョは似ている?

飛ぶ鳥を落とす勢いの人気を博す、鬼滅の刃。週刊少年ジャンプに連載中の同作は、大正時代を舞台に家族を鬼に殺された主人公が、鬼にされてしまった妹を人間に戻すため「鬼殺隊」と呼ばれる組織に入隊し、仲間と共に鬼と激闘を繰り広げる……といった内容のアクション漫画である。

一方の「ジョジョの奇妙な冒険」は、ジョースター家と宿敵ディオが1世紀以上に渡り死闘を繰り広げるストーリーが軸になっており、テーマは人間賛歌。同作を語るうえで「スタンド」は欠かせないが、鬼滅の刃と似ているとウワサされているのはスタンドが登場する前の第1部と第2部である。

さて、久しぶりに「ジョジョの奇妙な冒険」を第2部まで読み直してみて感じたのは「確かに似てると言いたい人の気持ちもわかる」ということ。おそらく鬼滅の刃とジョジョの奇妙な冒険は、大きく4つのトピックに共通点があると思われるが、それよりも色濃く感じたのは “あの伝説漫画作品” である。


・血統が似ている?

鬼滅の刃の主人公、竈門炭治郎(かまど たんじろう)の血筋についてはまだ謎が多いが、大ボスの「鬼舞辻無惨(きぶつじ むざん)」と、鬼殺隊を率いる産屋敷(うぶやしき)家は1000年以上に渡り死闘を繰り広げている。

一方のジョジョの奇妙な冒険は、先述の通り「ジョースター家とディオの戦い」がストーリーの軸であることから、確かに両者には共通点があるとの見方もできるだろう。少なくとも「血統」あるいは「血筋」が両作品の見どころであることは間違いない。

ところで、血筋、血統といえば「魁!! 男塾」を抜きに語ることはできないハズ。一見、血統とは無縁の作品と見せかけて、富樫源次とその兄、Jとその父……など、血筋にまつわるエピソードが随所で語られている。

続編となる「暁!! 男塾」の主人公が桃の息子だったことを考えれば、血が濃いのはむしろ男塾。ゆえに「鬼滅の刃」は、男塾の影響を受けているとの見方が支配的であろう。


・ゾンビシステムが似ている?

鬼滅の刃に登場する悪役たちのほとんどは、無惨の血を分け与えられることで鬼化している。簡単に言えば「ゾンビに噛まれたらゾンビになるのと同じ法則」であり「血が強さの源」ということ。これを “ゾンビシステム” と呼ぶことにしよう。

このゾンビシステムは「ジョジョの奇妙な冒険」の第2部までに頻繁に登場している……どころか、むしろ物語の中核そのものであった。その点を考慮すると、鬼滅の刃とジョジョの奇妙な冒険の類似点とも言えるだろう。

ちなみに「魁!! 男塾」にも広い意味でのゾンビシステムが登場していることにお気付きの読者はどれほどいらっしゃるだろうか? 「魁!! 男塾」はあくまでファンタジー要素の無い(としておく)シリアスな作風なので、ゾンビシステムとは無縁と思いがちだ。

だがしかし、なぜ塾生たちがあれほど強いのか考えて欲しい。同レベルの達人と対決しても、勝つのはほぼ男塾の塾生たちである。なぜなのか? ……考えられることはただ1つ、男塾塾長「江田島平八」の想いが血よりも濃く塾生たちに影響を与えているからだ。

思い返せば、塾生たちのピンチを救ってきたのはいつも江田島平八であった。本人が登場せずとも塾長の想い、そして塾長への想いが奇跡の大逆転を生んだのだ。ゾンビシステムはもとより、想いが人を強くするのは鬼滅の刃も同じ。結果的に、鬼滅の刃は男塾の影響を色濃く受けていると見る方が自然であろう。


・呼吸が似ている?

鬼滅の刃の核となるのが「呼吸」だ。鬼殺隊士それぞれに呼吸があり、作中では様々な呼吸法とそれを応用した必殺技が登場する。主人公、竈門炭治郎は全ての呼吸の源と言われる「日の呼吸」を習得できるのか? 実に興味深い。

そして「ジョジョの奇妙な冒険」も、第2部までは「呼吸」及びそこから発展した「波紋」が必殺技として描かれていた。流石に「呼吸」がここまでメインで扱われている点については、鬼滅の刃とジョジョの奇妙な冒険の共通点と言わざるを得まい。

余談ではあるが「魁!! 男塾」も呼吸とは切って切れない縁がある。雷電が極めた “大往生流”は「呼吸法により己の筋肉を意のままにすること」であったし、そもそも男塾に登場する必殺技の多くが「」の派生形であった。

氣を操るうえで呼吸法が重要であることは言うまでもなく、主人公の桃は「硬布拳砕功」「暹氣虎魂」「堅砦体功」……などなど、多くの氣関連の必殺技を会得している。主人公と呼吸、そして多才な必殺技。そう考えると、鬼滅の刃はジョジョよりむしろ男塾に影響を受けていると言うのが自然であろう。


・大ボスの残虐さが似ている?

鬼滅の刃の鬼舞辻無惨は、漫画史に残る大悪党と言っていいだろう。なにせ、自分が生き長らえるためだけに、無数の人々を殺戮し続けているのだ。精神的な歪み、他者への情け容赦のない態度、憎たらしいまでの強さ……その全てが悪である。

その点、ジョジョの奇妙な冒険の「ディオ」も言うまでもなく “悪” である。第2部まではもちろんのこと、その後のディオもひたすら独善的な悪として君臨し続けた。歪んだ絶対的な悪……やはりこれも鬼滅の刃とジョジョの奇妙な冒険の共通点であろう。

ついでながら「魁!! 男塾」の大ボス・藤堂兵衛(とうどう ひょうえ)も完全なる悪である。己の保身のために第二次世界大戦中は日本軍を裏切り、2813人もの同胞の命を米軍に売っただけでなく、戦後はあらゆる悪行を重ね、ついには日本財閥界の首領(ドン)として君臨するまでになった。

また戦闘力も牛を一刀両断するほどには高く、生命力に関しては「日本刀で頭から真っ二つにされるものの後に手術を経て復活する」など極めて高い。ゾンビ的要素の無い生身の人間でありながら、100歳近くまでピンピンしていることを鑑みると、生への執着心はディオ以上。鬼舞辻無残、ひいては鬼滅の刃は男塾の影響が色濃いと推測される。


・やっぱり男塾だった

結果的に「鬼滅の刃」に影響を与えている可能性が高いのは「ジョジョの奇妙な冒険」ではなく「魁!! 男塾」と見るのが、今後定説となっていくのではあるまいか? あとは男塾特有の「復活システム(死んだと見せかけて実は生きている)」と「江田島平八」そして「民明書房」が登場すれば「鬼滅の刃 = 令和の男塾」の方程式が成り立つ。

というわけで、確かに鬼滅の刃には「ジョジョの奇妙な冒険」的な要素も、そして「魁!! 男塾」的な要素もあるにはあった。だがしかし、どの作品も「友情・努力・勝利」をモットーとする週刊少年ジャンプ連載作品だという事実を忘れてはならない。類似点が多いことはむしろ自然と言えよう。今後の鬼滅の刃が実に楽しみだ。

参考リンク:鬼滅の刃公式ポータルサイト
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

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