「インド人もびっくり」というキャッチフレーズがかつて流行したことを、若い人はご存知ないかもしれない。一定年齢以上の日本人にとって『インド人』と『ビックリ』は、決して切り離せない組み合わせなのである。

ところが実際にインドを旅してみると、ビックリすることがありすぎて逆にだんだんビックリしなくなっていくもの……つまりインド人たちは、並大抵の出来事じゃビックリしないように育っていると推測される。

では「滅多にビックリしないインド人ですらビックリすること」って、具体的にはどんな出来事なのだろう?

・インド人にきいてみた

そこでインド在住のインド人に、ズバリ「最近ビックリしたこと」をきいてみることにした。

まずは「たまたま通りかかっただけ」という関係性の私を、自身の誕生日パーティーへ招いてくれたアルシャちゃん(12)だ。インド人は太っ腹なのである。



翻訳アプリをヒンディー語に設定し、「最近びっくりしたことは何ですか?」という質問をアルシャちゃんに見せる。さあ、しばし考え込んだのちの彼女の答えとは……?



「みんなが誕生日を祝ってくれたことね!」


・普通だった

アルシャちゃんの返答があまりにも普通の内容なうえ、英語だったことに「逆ビックリ」してしまった私はそれ以上掘り下げることができなかった。インドではヒンディー語と英語のどちらもが公用語と定められているらしい。


澄んだ瞳で私を見つめる少女に対し、「もっとパンチの効いた答えを」などと言えるはずがないではないか。次なる狙いは大人である。衣料品店を営むヴィックラムさん(36)にもきいてみることに。

ヴィックラムさんは「嬉しい話と悲しい話、どっちがいい?」と、アダルトな先制を放ってきた。これはスゴイのが期待できそうだ。

「じゃあ悲しいほうで」とリクエスト。するとヴィックラムさんはおもむろに取り出したスマホに写る、昔の自分の画像を指差し、悲しげにこう切り出したのである。


「トシを取っちまったことさ……」


・普通だし悲しい

ちなみにヴィックラムさんによると、発展めざましいインドでは『油分の過剰摂取』に悩む人が多いのだそうだ。彼自身も「わかっちゃいるけどやめられない」らしく、そのせいで「奥さんよりだいぶ年上に見られるのが辛い」のだとか。なるほど……。

「僕の父は95歳だけど、ケミカルなものを摂取しないから健康だ。それに比べて僕は……」と、メチャ悲しげな表情を見せるヴィックラムさん。くれぐれも健康には気をつけて頂きたいです。

ちなみに『嬉しいビックリ話』のほうもきいてみると、「商売がうまくいっていること」なのだそう。インド人たちに「 “ビックリ” の意味が伝わっていない可能性」が頭をよぎった。


・最後の砦

最後は朝食をお世話になっていた “オムレツ焼きのおじさん” である。インドの街角で毎日オムレツを焼き続けているおじさんのこと。さぞやすごいビックリ話を所有しているに違いない。

先ほどの反省を活かして私自身の体験談を付け加えることにした。「最近ビックリしたことは何ですか? ちなみに私は “イカで歯が折れたこと” です」……と。


さあ、気になるおじさんの答えは……


「そんなことよりサリーを買っていかないか?」


・インド人、ビックリしない疑惑

今回インド人への聞き取り調査で明らかになった、彼らが最近ビックリした事柄をおさらいしてみよう。


「みんなが誕生日を祝ってくれた」

「トシを取っちまった」

「そんなことよりサリーを買え」


この結果は少なくとも私が想像していた「ビックリ」とは、若干ズレているように感じる。

これは「ビックリした」を「Surprised」と表現したのが、うまく伝わらなかったということも考えられる。あるいは「ビックリ」の基準が違っていて、「死にかけたこと」くらいが日本でいうところの「ビックリ」レベルだったりするのかもしれないし……。

もしくはインド人にはそもそも「ビックリする」こと自体が無いという可能性も、大いにありえるのではないかと思っている。

この件に関し引き続き調査を続けていく所存だ。

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
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