「世界初のバーチャルYouTuber」こと「キズナアイ」。可愛らしい風貌に加え、ちょっとポンコツなところがキュートでたまらない! 毎日のように更新される動画で人気を博し、世界有数のVtuberに成長していった。
2019年夏、そのキズナアイが4人に“分人”し、さらにうち1人が中国語を操るという展開に賛否の声が上がったことは記憶に新しい。ファンの心のざわつきがスッキリしないうちにまたカノジョが物議を醸している。とある動画が炎上してしまったのだ。
・キズナアイ4号が炎上
炎上したのは、中国語を操るキズナアイ、通称「4号」である。中国大陸で中国語話者向けの活動を主としている。
さて、その4号は10月に入り中国版ニコニコ動画こと『bilibili動画』の公式チャンネルで「中国各地の方言を紹介」という動画を公開したのだが……そのなかで、台湾を「中国台湾」、さらに地図上で「台湾省」と表記していたのだ。
皆さんご存知のとおり、中国大陸こと中華人民共和国は「台湾は台湾省」という中国に帰属する一地方であると主張。だが、台湾を実効支配しているのは「中華民国」だ。中華民国=私たちが台湾と呼ぶ地と認識して差し支えないだろう。その中華民国は「台湾は固有の領土の一部」と主張している。
両者は政治的に相容れるはずもなく、この件は「センシティブな問題」として民間や文化交流の場では表現に配慮したり、触れないことが多いものだ。
なのにガッツリ触れてきた! そんな背景から、キズナアイ4号の動画にまず台湾人が激怒。日本でも知られるところとなり、さらに動画内で尖閣諸島が「釣魚島」と表記されていることがわかり物議を醸している。
では、中国では「よくやった!」という反応なのかというと……意外なコメントが寄せられているのだ。
・中国での反応は?
Weiboをのぞいてみると、やはり中国人ユーザーがメインなので、「台湾は中国のもの」というコメントもあるにはある。しかし目立ったのはキズナアイのファンからの失望の声だ。
「キズナアイはキズナアイではなくなってしまった」
「俺のアイを返せ」
「元のキズナアイの方が好き」
「チャンネル登録、解除したわ」
「網易が運営しているんでしょ? そういう意味では正常」
「キズナアイじゃなくて網易アイ」
「市場での自分の立ち位置をよくわかってらっしゃる」
・分裂から続くカオス状態
そもそもキズナアイの “分裂” に対し「オリジナルに敬意がない」という不満の声は中国でもあがっていた。さらに分裂騒動以来、運営会社社員がSNSで行ったとされる “不適切発言” など、カオス状態のなかの政治的発言=キャラ変は中国人ファンにも違和感があったようだ。それが失望の声の理由と言えるだろう。
もともとキズナアイというコンテンツへの愛に国境はなかったのに、なぜ今こんな状況に……外国に進出したのなら、ある程度のローカライズが必要なのもわかる。しかし中国のネット環境がいくら “閉じられている” とはいえ、こういった発言が伝わらないわけがない。日本生まれのコンテンツで、台湾でも人気があることも踏まえると表現に配慮があっても良かったのではないだろうか。
また、分裂前からキズナアイを応援しその成長を見守ってきたファンの心情を思うと、もう少し元のキャラを大切にしてほしいとも感じる。現在、炎上した動画は削除されているが……「4号」の今後の動向が気になるところだ。
参照元:4gamers、Yahoo!奇摩(中国語)、Activ8(PDF)
執筆、イラスト:沢井メグ
▼ファンにオリジナルを大切にした “分人” と感じさせることができていたら、状況も変わってきたのだろうか
▼キズナアイ4号のYouTubeチャンネル。