「新・世界七不思議」(実は決める財団があるんですよ)だとか、「天空の遺跡」だとか、スゴい2つ名を持つ、ペルーのマチュピチュ遺跡。実際に行ったことがなくても、とにかく謎と神秘に満ちていることはなんとなくご存知でしょう。
そんなマチュピチュの、最も根本的な謎である「なぜその場所なのか」や「どうやって石を運んだのか」などの解明につながるかも知れない発見があったそう。ちなみにこの報を受けての、筆者の第一印象は……えー、そんな理由!? って感じ。
・断層の上
この新発見は、アリゾナで開催された米国地質学会(The Geological Society of America)の年次総会で発表されたもの。これによると、マチュピチュの真下には、2本の断層が走っているんだとか。
北東から南西にかけて走る断層と、北西から南東にかけて走る2本。これらの断層を衛星写真と測量を用いて調べたところ、2本が交差する地点こそが、マチュピチュ遺跡のある場所だったんだとか。
断層の交わる場所に作られた天空の遺跡……なんだか神秘的な感じが増してきました。テンション上がりますが、その後に続くレポートはめちゃくちゃ現実的でした……。
・イイ石がいっぱいあったから
なんでも、断層が交わっているお陰で、その場所ではナイスな石が簡単にゲットできるんだとか。断層は地面に強い力が加わって割れた状態のことですが、このときにかかった強い力によって、採れる石の割れ方に一定の方向性が生じるんだとか。
つまり、なんでもない場所で石を切り出して適した形に加工するよりは、はるかに簡単にイイ感じの石をゲットできるわけです。マチュピチュはモルタル(建築材料)を使わずに、信じられないくらい精巧に石を積んで作られているのが特徴。
一体どうやって大量の石を精巧に加工したのか。どうやって山の上(マチュピチュは標高2430メートルの山の尾根にあります)まで運んできたのか。そもそもなぜこの場所なのか。
とにかくその辺は謎だらけであり、それもまたマチュピチュの魅力でした。しかし今回の発見的には
そこでイイ感じの石を簡単にゲットできたから
という、なんとも現実的な理由を示唆するもの。ついでにオリャンタイタンボ、ピサック、そしてクスコといった、インカ帝国の他の遺跡もチェックしてみたところ、それぞれの土地にも同様の特徴が見られたそうです。
もうちょっと謎の儀式とか、そういう神秘的な理由があった方がウケる気もしますが、堅実で賢い選択ともいえます。インカの人々が、土地の地学的な特徴を都市建造の判断材料にしていたことを示唆するものはこれだけではありません。
遺跡全体の大まかな位置のみならず、遺跡内の居住エリアや農耕エリア、そして階段なども、断層に則したつくりになっているのだとか。
インカ人「おい、ちょうどここで石割れるし、そのまま階段にしようぜ!」
的なノリだったかどうかは知りません。でも今回の発見が示唆するのは大体こんな感じでしょう。損なわれていく神秘性。
・水回りもグッド
また、断層による恩恵は石材だけではないそうです。雪解け水や雨水は全てこの断層に沿って流れるため、生活用水を手に入れやすいのだとか。水回りのよさはこれだけではありません。
水が近くにあるならば、水害が心配ですよね。でもマチュピチュなら大丈夫。断層の上はそもそも水はけがいいらしく、雨季でも洪水の被害からは守られるのだとか。必要な分の水は確保できて、洪水の心配はしなくていいとかいいこと尽くめですね。
これらはあくまでその可能性を示唆する発見というだけで、確定したわけではありません。ですがもし正解なら、マチュピチュは神秘ではなく、物凄く現実的な建築計画に基づいて建てられた都市だったと言えそうです。ピラミッドとかもそうですが、昔の人たちって結構あなどれないですよね。
参照元:米国地質学会(英語)
執筆:江川資具
Photo:WikimediaCommons.