何を隠そう私(中澤)はフグを食べたことがない。高級魚であるフグは、私ごとき庶民には雲の上の上の上の存在。なんなら、調理された状態さえほぼ見たこともない。

そんなフグ様がまさかの缶詰になっていた。これなら私でも手が届く! そこで、さっそく購入してみたぞ!!

・フグ缶詳細

販売されていたフグ缶詰の味は2種類。「国産焼きふぐの燻製風オイル漬け」と「国産真ふぐの白ワイン煮」で、共に税込540円だ。オイル漬けと白ワイン煮なんて、さすがのお洒落さんである。

ちなみに、よく高級魚として扱われるのはトラフグだが、原材料を見るとどうやら使用されているのはマフグのようだ。

・本場で加工

とは言え、この缶詰を販売しているのはフグの産地として有名な山口県下関近くの萩市に本社がある井上商店。はたして、本場の味となっているのか? いざ、フグ様のご尊顔を拝見してみよう。缶詰パカー♪

ふわっと広がる海の匂い。だが、見た目は鳥肉の煮物のようだ。フグは漢字で「河豚」と書く。ひょっとしたら、肉類のようなジューシーな味がするのかもしれない。

と思いきや、食べてみると淡泊な味がした。どちらかと言うと、はごろもフーズの「シーチキン」に近い。食感は肉の大きさから考えると柔らかい方だが、やっぱり魚である。全然豚じゃない

とは言え、サッパリした食べ心地には上品さのようなものも感じる。缶詰になっても忘れない気品。それはさながら、幽閉生活中もチェスを楽しんだというマリー・アントワネットのようではないか

・時代という河

軽率でエゴイストな面も広く知られているマリー・アントワネット。時代という大きな河の流れに翻弄される豚……河豚とはフランス革命当時の国民感情を代弁したものなのかもしれない。

缶詰はただの保存食ではない。そこにはそれぞれの物語が詰まっている。今回もそんな物語を知ることができた。540円は非常に安いと言えるだろう。

Report:缶詰研究家・中澤星児
Photo:Rocketnews24.