4月から初めて1人暮らしをしている人たちは、そろそろ生活に慣れてくる頃だろう。生活に余裕が生まれて油断してくるこの時期だからこそ、今一度防犯には注意してほしい。空き巣や火災などもそうだが、隣人トラブルや不審者やストーカーといった、人的なものにも気を付けてほしいのだ。
なぜそう思うのかというと、私は1人暮らしをしている時にストーカー行為をされていたことがある。今となっては普通に話せる出来事だが、当時はとても怖かった。そして恐怖は身近にあるとも、考えさせられる一件だった。
・最初は好印象だった隣人
当時私が住んでいたのは、2階建てで4部屋しかないような小さなアパート。各階2部屋ずつで全てワンルーム、アパートの真ん中には2階へ上る外階段があった。その階段を挟んで部屋が並ぶような構造で、私は当時1階に住んでいた。
隣人とは引っ越してきて間もなく玄関を出るタイミングが被り、その時に初めて見た。年齢は30代くらいの男性で、太ってはいないが恰幅がよく、革ジャンを着ているといつもパツパツだったのを覚えている。目が細くて、常にメガネ。髪の毛は黒く短髪で、くせっ毛なのか寝癖なのか、いつも無造作であった。
隣人を初めて見た時、お互い目が合ったので私の方から「こんにちは、引っ越してきた者です」と軽い挨拶をした。それに対して隣人は柔らかい物腰で挨拶を返してくれ、丁寧な人だと思った。悪いどころか好印象だった。
・不可解な出来事が起こる
しかし、次第に不可解な出来事が起こるようになる。日に日に玄関を出るタイミングが被るようになったのだ。最初の頃は全くなかったが、数カ月後くらいには週の半分。玄関のドアが結構近く、出るタイミングが被れば目が合ってしまうので挨拶をしていた。隣人は挨拶から話をしてきたが、これといっておかしな様子はなく、世間話から広がったこともない。
それから出るタイミングが被るのと同じくらいに、帰りのタイミングも被るようになった。時間帯は夕方でも深夜でもどちらでも被った。私が家まで歩いている最中に、決まって後ろから急に声をかけてくる。家の近くのときもあれば、最寄りの駅付近でもあった。この時も隣人に特に変な様子はなく、やはり世間話をしてくるだけだったので、生活ルーティーンが似ているだけだと思っていた。
だが、いつしか世間話から私が家にいる時間についても話してくるようになった。例えば私が何日か家を空けていたこと、帰宅時間が遅くなる日が多くなったことなどを言ってくる。本人は世間話と同じようなテンションで話してくるが、気持ち悪いなと感じていた。窓の明かりなどで、家に居るかどうかが分かってしまうのかもしれない。でも、隣人という関係でそれを言ってくるのはどうもおかしい。
・そして決定的な「ぬいぐるみ事件」が起こった
そんなある日、家にいるときにインターフォンが鳴った。マイク機能があるインターフォンだったので、マイクで応対したら隣人だった。「あなたの家の前に落ちてて、落とし物だと思うので見てもらえませんか」と言われ、仕方ないのでドアを開けてみると……
ぬいぐるみを見せてきた。
隣人は妙な笑顔で「落ちてましたよ」と言って差し出してきたが、この時の目線が私ではなく部屋の奥を見ていた。そもそもぬいぐるみを落とすわけがないし、隣人はとにかく喋り続けようとする。私はここで隣人は異常だと確信し、強引に隣人とぬいぐるみを押し返した。
・周りの人に相談するも状態は悪化
これはストーカーかもしれないと、周りの人たちにとにかく相談。引っ越した方が良いと言われたが、私は1人暮らしを始めて半年もたっておらず資金的に引っ越したくなかった。
とりあえずゴミを漁られていないか注意した方が良いと言われたので、自分がゴミを出した後にドアの近くで耳を澄ませていた。すると隣人の家のドアが開く音する……。カサカサとゴミを漁るような袋の音がして、確信はあったが怖くてドアを開けることはできなかった。
そして隣人のドアの開く音が聞こえるということは、隣人も私の家のドアを開ける音が聞こえるということ。玄関を出るタイミングが被っていたのは、音を聞いていたからではないかと思いとても怖くなった。
それ以降、家に居たくなくなり、よく空けていた。隣人に話しかけられても、そっけない態度をした。しかし何日か家を空けていたら、ある日ドアノブに袋がかかっていた。袋を確認すると、女性用の下着が入っていた。しかも新品ではなく、使われているような痕跡があった。
言葉に表せない気持ち悪さで、とにかく怖かった。こんなことをする意味が分からなかったし、恐らく隣人だと確信があったので、このままこの家に住むのは危険だと察し、早急に引っ越しをしようと決意した。
・引っ越してから今に至るまで
ドアノブに袋がかけられてから、1カ月半くらいで引っ越しを完了させた。周りの人に協力してもらい、すぐに住居から離れられたのが良かったと思う。手続きの関係で少し時間がかかったが、住居は2週間ほどで移せた。今に至るまでその隣人とは遭遇することもなく、悠々自適に暮らせている。
なぜストーカー行為をされたのか、はっきりとした理由は分からない。ただ私は出身が田舎で、挨拶の礼儀をしっかりと教えられてきた。目を見て挨拶するし、世間話されたら笑顔で返答したりする。これは私の中では当たり前のことだった。
しかしこれが当たり前じゃない人も多く、そういう人から見たら特別な対応に見えたのかもしれない。挨拶することが間違いだとは思わないし、でも一方で挨拶をする人がどんな人なのかは分からない。もう少しラインを引いた方が良かったのかもしれないと思う。
あと私は1人暮らし中とても忙しかった。ぬいぐるみを持ってこられるまで、隣人が危険だという意識がなかった。隣人に対しておかしいかなと思っても、それを深く考えている余裕はなく、そういうところが事態を悪化させてしまった原因だろう。
どこの誰が、自分のことをどんな風に思っているかは分からない。だから決して自分は安全だとは思わないこと。まず自分自身で注意をしながら、自分の周りにいる相談できる人、助けてくれる人を大切にして生活を送ってほしい。
Report:mai
Photo:RocketNews24.
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▼真冬なのに隣人が窓を全開に空けていて、そこから突然挨拶してきたこともありました