この発想はなかった──。多くの格闘技ファンがド肝を抜かれたに違いない。2019年5月21日、AbemaTVは “神童” 那須川天心と “ボクシング元世界3階級王者” 亀田興毅のスペシャルマッチを発表した。
これは同局の人気企画「那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円」のシリーズ第3弾としてマッチメイクされたもので、もちろん両者の対戦は初となる。現役ながらキックボクサーの那須川天心と、引退はしているものの元世界チャンピオンの亀田興毅。これは……読めない。
・予測不能の一戦
2018年の大みそか、あのフロイド・メイウェザーに完敗を喫したものの、その実力は疑いようのない “神童” 那須川天心。まだ20歳という伸びしろを考えれば、今後の日本格闘技界を背負っていく存在であることは間違いない。
一方、2015年を最後にリングから遠ざかっているが(非公式戦は除く)、日本人初の3階級制覇を成し遂げた亀田興毅もまた紛れもない実力者である。普通に考えれば現役の那須川天心に分があると思われるが、今回はボクシングルール。“何か” が起きても不思議ではないハズだ。
・格闘技マニアに聞く
果たして両者の対決はどうなるのか? また何をもたらすのか? なかなか考えがまとまらなかったので、記者の個人的な知り合いである「格闘技マニア」に話を聞いてみることにした。格闘技マニアさーーーーん!
──特別試合とはいえ、衝撃的な対戦が決まりましたね。
「いやー、ビックリしたよ。全然思い付かなかった。俺はAbemaTVでボクシングやら格闘技やらは見てるんだけど、まさか天心と興毅をマッチメイクするとはね。2人とも相当AbemaTVを信頼してるんだろうな」
──そうですね。これはAbemaTVにしかできないマッチメイクですね。
「いやー、すごいことだよ。これは。天心もそうだけど、俺は興毅を見直したね。引退はしてるんだけどさ、ここで惨敗したらまたアンチに叩かれるんだぜ? そのリスクを背負って試合するんだから興毅は男気があるよ」
──まあ、亀田一家はアンチも多いですからね。ところで、ズバリどっちが勝つと思いますか?
「そりゃ、普通に考えれば天心だろうよ。いくら元世界チャンピオンでも3年以上のブランクは大きいでしょ。どれだけ準備したかはわからないけど、せいぜい2カ月くらい? 2カ月で現役バリバリの格闘家と戦うのは難しいだろ」
──なるほど。では天心が圧勝すると?
「そうとは限らない。なにせ今回はボクシングルールだからな。キックボクシングルールなら1ラウンドKOで終わると思うけど、ボクシングを熟知しているのは興毅。天心も舐めてかかったら1発があり得るよ」
──でも、前に那須川天心はボクサーになった方がイイと仰ってましたよね。
「ああ、その考えは今でも変わっていない。今からでも遅くないからボクシングに転向すべきだね。その実力とセンスは間違いなくあるし、結局どれだけ格闘技があっても1番稼げるのはボクシングだからな」
──では現役で、ボクシングのセンスもある天心が圧勝するのではないでしょうか?
「甘いな。天心はあくまでキックボクサーなんだよ。キックボクシングとボクシングは同じように見えて全然違う競技なの。簡単にいえば、野球とソフトボールくらい違うんだよ」
──野球とソフトボールですか。
「そう。昔さ、テレビで女子ソフトボール日本代表の上野と現役プロ野球選手が対戦してたんだけど、全然打てなかったもんな。男女の差があったとしても、競技が違うだけ手も足も出ないんだぜ? もちろん上野もすごいけどさ」
──なるほど。
「引退してるけど興毅はあくまでボクサーなんだ。ボクシングが染み込んでるんだ。いくら天心といえどもKOは難しいんじゃないの? 元々、興毅はスタミナあるしな。今は知らんけど」
──なるほど、わかりました。ではこの試合は今後にどう繋がっていくのでしょうか?
「まあ、興毅は特にないよな。復帰はしないだろうし。ただ、天心がこの試合で得るものは大きいと思うよ。ボクシングの奥深さや怖さを興毅が伝えてくれたら最高だね。特別試合とはいえ、3階級王者との戦いは天心の格闘人生の無駄には絶対にならないから」
──なるほど。
「いつかさ、天心が世界が注目する舞台で戦うとするじゃん? 別に何ルールでもいいんだけど。その時 “あのとき亀田選手と試合したことが活きました” なんてなったら最高じゃない? そういう意味で今回の試合は、興毅からの闘魂伝承マッチなんだよ」
──おお、ドラマティック。
「闘魂って言うと一気に猪木っぽい感じがしちゃうけどさ、今回の試合はプロレスみたいなロマンもあるよ。天心は当然仕上げてくるだろうから、あとは興毅のコンディションがどれだけ戻るかに注目だね」
というわけで、格闘技マニアによれば今回の試合は「闘魂伝承マッチ」とのことであった。言われてみれば亀田興毅サイドにメリットはなく、アンチが多いだけにデメリットだけは残る。となると、格闘技マニアの言うように、亀田興毅を突き動かしたのは “男気” なのかもしれない。
とにもかくにも、万が一が起こり得る予測不能の一戦は6月22日、AbemaTVで放送される。こんな戦いは滅多にないので、ぜひお見逃しのないようにしていただきたい。