この世には、1つの「道」を極めた人間が存在する。これから紹介する男も間違いなくその1人だろう。彼の名はベンジャミン・ベネット。「何も話さず、ただ4時間座ったまま微笑み続ける自分」の動画を、2014年から300本も YouTube にアップし続けてきた男だ。

それ何の道?」という声も聞こえてきそうだが、彼は配信開始からほどなくして「ヤバい男だ」とごく一部のネット民のあいだで有名になった。当時、筆者(西本)も彼の動画を見たことがある。そして数年経った今、久しぶりに動画を見たら……なんと歩いてしゃべっていた

・ベンジャミン・ベネットという男

「4時間座って微笑む」彼の動画は、「Sitting and Smiling」という。ほぼ身じろぎもせず、本当にただずっと部屋の片隅で微笑んでいるだけだ。まるで座禅や瞑想(めいそう)をするような姿勢で……そんな動画が2019年1月まで300本も量産されている。

シリーズの再生リストの「すべて再生」ボタンを押そうものなら、1200時間にも及ぶ彼との声なきランデヴーが幕を開ける。


・彼への支持、そして疑問

特異極まる彼の動画だが、今や最初の動画の再生数は約87万回、チャンネル登録者数は20万人以上(2019年4月現在)。コアなファンから支持を得ている。

とはいえ、そもそも何故そんな動画を配信しようと思ったのか、肉体に疲労はないのか、そうした彼への疑問は誰しも抱くところだろう。


・いろんな意味でただものではない男

疑問を解消するべく、2015年にはアメリカのメディア「VICE」が彼にインタビューをしている。

配信理由について、彼は「わからない。インターネットに足りないものだと思った」と返答。疲労についても「顔や足が少し痛むが、回復が早くなってきている」と答える。さらには「(自分の動画を)理解できないというのが正しい理解なのだと思う」とも口にする。

とらえどころがない。まるで禅問答だ。もはや俗世を超越した境地に達しているのだろうか。


・それでもやっぱり人間ではある男

しかし、事態は急変する。2019年2月以降、彼は家の外を歩きながらしゃべる動画「Walking and Talking」シリーズを続けざまに投稿しだす。なんてことないように聞こえるところではあるが、「4時間座ったまま微笑み続ける」動画を300本上げてきたことを知っていたら話は別。

サブチャンネルで投稿されていたものの再投稿も含まれているようだが、彼が普通の人間のように振る舞う姿は人々に衝撃を与えた。コメント欄は「しゃべれるのか!」「歴史的瞬間だ!」と、直立するクララを前にしたハイジくらいの大騒ぎだ。

それまでとのギャップも相まって、彼が自然体でしゃべって散策する様子は、どこかチャーミングにすら映る。彼がそんな動画を投稿しだした理由も、究極的には謎である。だが、風変わりでユニークすぎる彼の歩く道を、今度は我々がうっすら微笑みながら見守りたいところだ。

参照元:YouTubeVICEBoing Boing(英語)
執筆:西本大紀

▼4時間座って微笑む「Sitting and Smiling」シリーズ第1回はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=vyE34GHtmb8

▼そして彼が歩いてしゃべりだした「Walking and Talking」シリーズ第1回はこちら