神に会っては神を殺し、親に会っては親を殺す──道を極めんとするならば捨てる覚悟も必要である。とは言え、なかなか切り捨てられないのが人情。

そんな中、バッサリいっちゃってる立ち食いそば屋がある。小川町『十割蕎麦 韃靼 穂のか』……この店にはどの立ち食いそば屋にもあるものがない

・他の立ち食いそば屋にあって『穂のか』にないもの

それは天ぷらだ。ワンコインで十割そばを提供するこの店。メニューはそばのみ一点突破! しかし、そばへのこだわりは他の追随を許さない。まず、そばだけで「韃靼(だったん)蕎麦」「田舎蕎麦」「更科蕎麦」「穂のか蕎麦」と4つの種類がある。

「韃靼(だったん)蕎麦」はルチンが豊富に含まれたそば、「田舎蕎麦」は蕎麦の実の殻を多く使用した太麺、「更科蕎麦」は美しい色白美人で見た目を重視する人にもオススメ。そして、石臼で挽いたオリジナルが「穂のか蕎麦」である。

私(中澤)が来店した昼過ぎは、「田舎蕎麦」と「更科蕎麦」は売り切れ。「穂のか蕎麦」は小盛り分しか残っていないということで「韃靼(だったん)蕎麦」を注文することに。ちなみに価格は並盛り(300g)が税込500円。トッピングで「鬼おろし(50円)」もつけてみた。

・研ぎ澄まされた麺

ざるにこんもりと盛られた十割そばはとても500円とは思えない。美しく整った麺は箸でつまむと切れることなくスルッと持ち上がった。食べてみたところ……

鼻に抜けるそばの風味。雑味がない麺は、そばの味が前面に出るようである。とは言え、この純粋な味わいはどうだ。まるで清流のような透明感ではないか。

しかも、つゆはキリッと辛口。歯切れの良い麺と絡むとキレッキレだ。その美しくも鋭いキレ味はまるで抜き身の日本刀である。気がついた時には斬られているレベル。

・存在がロック

なお、4種類のそばのところでひょっとしたら気づいた人もいるかもしれないが、この店を開いたのは立ち食い十割そばの名店・京橋『恵み屋』の出身者らしい。どうりで、店内にエレキギターが飾られているはずである

雰囲気からもメニューからも研ぎ澄まされたこだわりが漂うこの店。様々なトッピングがあふれる立ち食いそば界において、その在り方は逆にロックだ。高コスパであることは間違いないので、その意思に共鳴した人は行ってみよう。

・今回紹介した店舗の情報

店名 十割蕎麦 韃靼 穂のか
住所 東京都千代田区内神田1-15-12
営業時間 月~金11:00~14:30、17:00~21:00前後(売り切れ次第)/ 土(貸切のみ)
定休日 日・祝日

Report:立ち食いそば評論家・中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼なお、京橋『恵み屋』の記事はこちら

日本、〒101-0047 東京都千代田区内神田1丁目15−12