味の良し悪しは、やっぱり出汁にかかっている! とはいうものの、本当にウマい出汁の味を我々は理解しているのだろうか? よく考えたら、かつお節ひとつとって見ても、パックで売ってる削られたかつお節しか味わったことがない。かつお節を削ったことすらないのである。

そもそも削り立てのかつお節は本当にウマいのか? その疑問を解決するために、この手で自らかつお節を削ってみた! 44歳のオッサン(佐藤)の初体験をレポートしちゃうよッ!

・かつお節はどこに売っている?

そもそもかつお節には大別して2種類ある。3キロ前後の鰹を3枚におろして、骨を除いた2枚の身から作ったものを、形が亀の甲羅に似ていることから「亀節」と呼ぶ。3キロを超える鰹を3枚におとして、骨を除いた身をさらに背側・腹側に分けたものから作ったものを「本節」と呼ぶそうだ。

そんなことさえも知らなかった……。亀節にしろ、本節にしろ、とにかくかつお節を手に入れなければ、ことは始まらない。何でも揃う伊勢丹新宿店に行ってみると、地下の食品売り場には、数多くの削り節が販売している。


その端の方を見ると、流木のようにかつお節が積まれていた。


水産加工品のメーカーで、出汁に関する商品を専門に扱う「にんべん」の本節である。手頃なサイズのものを1本購入。価格は209グラムで1964円だ。これでみそ汁何杯分の出汁が取れるのか、まったく見当がつかない。たぶん、たくさん取れるだろう。


・カチカチの木

袋から出してみると、どう見ても “木” にしか見えない。硬さもちょうどいい。これで思いっきり殴られたら、失神するレベルの硬度を誇っている。昔に人は、どうして鰹をこんなカチカチにしてしまったのだろうか。そして、これを削って出汁をとるなんて気づくとは……。


・包丁とピーラーで挑む

本来であれば、専用に削り器で木にカンナをかけるように、削り節にしないといけないのだが、削り器を発見できず購入できなかった。仕方がないので、包丁とピーラー(皮むき器)で挑むことに。


なお、かつお節には向きがあるらしく、袋には「矢印の方向にお削りください」と書かれていた。逆向きだとうまく削れないらしい。


手元に十分に注意しながら、削り始めると……。カッテ! めっちゃ硬い!!


削れるには削れるが、キレイに削ることはできない。「削りカス」を作り出しているようなものだ。かつお節が硬すぎるのか、それともこの包丁がダメなのか。ピーラーでも挑んでみると。


さすが野菜の皮むき器だ、まったく歯が立たない……


仕方がないので、包丁を手に立ちあがって、体重を乗せつつ削りに挑む。


約10分格闘した末に、何とかご飯に乗せられる程度の削りカスを生み出すことに成功した。キレイに削れていなくても、そこそこ量があれば何とかなるだろう。


これをアツアツ白ご飯にファサーッ! とかける。


・削りが甘いから、見た目は良くない

まずは見た目。かつお節の表面は色が濃く、場所によっては真っ黒になっている。本来であれば、色合いの良くない部分は捨てるのかもしれないが、もったいないので食べることにした。白いご飯の上に乗せると、その黒い部分がやたらと目立つ。

色合いの良い部分だけを削り出して、乗せるべきだったか……。


・匂いは最高

とはいえ、匂いは最高に良い!


顔を近づけて深呼吸すると、ああ~!! なんか遠い昔の記憶がよみがえるような懐かしい気持ちになる。朝の食卓から漂う、あの味噌汁を思い出させてくれる懐かしい匂い。


身体の奥底、記憶の深淵にまで達する香りは、精神に訴えかけてくる。そして深く癒されるようだ。ずっと嗅いでられるよ。マジで。


・しょう油1滴

いざ実食! 香りでさえ深く癒されるのに、これがウマくない訳がないだろ!


一口食べると、何かが足りないことにすぐに気づく。それはしょう油だ。たった1滴でいい。たった1滴たらすだけで、削り節のポテンシャルは飛躍的に上がり、鰹の旨味がグイッ! と引き出されて、ご飯の最上の友にクラスアップした。


昼食を食べ終えた後のはずなのに、軽くご飯を1膳平らげてしまった。削り立てのかつお節を前にして、箸が止まるヤツはいないだろう。食べるまでには、少々手間がかかるが、削り立てのかつお節の味を知らない人は、1度お試しあれ。これぞ、ご馳走だ!

参照元:にんべん
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]