雑誌の公式サイトやPixivなどで、多くのマンガを無料で楽しめるようになったが、いまとある自治体が公開しているマンガが素晴らしいと、クチコミで県外に広がっているという。

それは大分県が制作したマンガ『りんごの色~LGBTを知っていますか?~』。読んで字のごとく、性的マイノリティに関する啓発マンガなのだが、「自治体が作った教育用のヤツでしょ」と侮っていてはいけない。

まさかのハラハラさせられる展開! 50Pの大ボリュームという大変厚みのある作品なのだ。

・見たことあると思ったら、作画はあの有名マンガ家だった

表紙を見て、マンガ好きの人なら「あ!」と思った人もいるだろう。『りんごの色~LGBTを知っていますか?~』のストーリー構成と作画は『ハケンの品格』でお馴染みの平田京子先生だ。

またページ数も50Pと一般的な雑誌の読み切り作品より、かなりボリュームがある。これだけでも「おおー!」と思ってしまうが、ストーリーも想像以上に濃いものなのだ。

・ストーリーはこう!

主人公のかすみは、あることがきっかけで親友が異性愛者でないことを知る。彼女はかすみのことが好きだというのだ。親友の告白に混乱するかすみだが、保健室の先生などのサポートのもとLGBTについて理解を深めていくというストーリーだ。

ネタバレになってしまうので、詳細は割愛するが、かすみはLGBTをテーマにした演劇を企画。他の生徒も「面白そう!」とイイ感じの反応で、「あ、ここでみんな仲良く大団円なのかな」と思ったのだが……このマンガの本領はココからだったのだ!

・まさかの展開 / これまでの「啓発マンガ」の概念がくつがえされた

教頭から大反対に遭うのである。「責任問題になったらどうする」と。まさかの展開だ。「えーっ!」と思ってしまうが、現実にはこういう声が聞こえてくるのも確かだろう。

従来の啓発や道徳系の読み物は、少ないページ数で超スピードで問題が解決していき、唐突な大団円を迎えるものが多い。そんな先入観があったので、このリアルなやり取りにはドキっとさせられた。一体どうなるんだよ!? 残り25Pで、どんな結末を迎えるのかは、ぜひ皆さんの目で確認していただきたい!

・言外にもさまざまなメッセージ

ストーリーにも引き込まれてしまうが、このマンガにはほかにも注目したいことがある。タイトルこそ『LGBT』となっているが読み進めると、実は「LGBT」というワードだけでは包括しきれないセクシュアリティにも触れられているのだ。

注意深く読むと、登場人物の台詞のなかで、暗に、異性も同性も恋愛対象として見ない「アセクシュアル(Asexual)」や、性自認が定まっていない「クエスチョニング(Questioning)」などが言及されている。ストーリーを追うだけでもためになるが、深く読めば読むほど改めてセクシュアリティの多様性を意識することができると言えるだろう。

何を感じるかは、読み手のバックボーンによって異なるかもしれない。しかし、作品はタイトルの「りんごの色」のとおり「同じ色に見えるが実はひとつひとつ異なる色を持っている」、つまり多様性への気づきのきっかけになるのではないだろうか。

・スマホやPCから無料で読める / 冊子版もあり

こちらの作品はネットでPDF版を無料で読むことができる。冊子版は大分県内の公共施設やローソンなどで配布。また、県外の希望者には送料自己負担で送ってもらうことも可能とのこと。詳しくは公式サイト「こころちゃんの部屋」でチェックしてみよう!

参考リンク:『りんごの色~LGBTを知っていますか?~』(PDFファイル)、「こころちゃんの部屋」
Report:沢井メグ
漫画:大分県 ,used with permission.