
極地冒険家の荻田泰永(おぎたやすなが)氏が、日本人初の偉業を成し遂げてから早いもので1カ月以上が経つ。2018年1月5日(日本時間1月6日)に無補給単独徒歩で南極点に到達し、1月中旬に帰国。この1カ月の間に、中国に行ったり地元の北海道と東京を何度も行き来したり、テレビや新聞、ラジオなどの取材を多数受けたりして、忙しい毎日を送っているようだ。
そんな彼に、あらためて今回の冒険についてお話を聞くことができた。彼によると、今回の無補給単独徒歩は “冒険” ではないという。これは一体どういうことなのか?
・植村直己冒険賞を受賞
帰国から約1カ月が経った2月16日、荻田氏は2017年「植村直己冒険賞」を受賞することが明らかになった。この賞は、日本人冒険家にとって栄誉と呼べるものであり、彼の師にあたる大場満郎氏も18年前に受賞している。それでも南極点踏破は荻田氏の想定よりも、はるかに過酷ではなかったという。
・過酷度は超えていない
荻田 「今回は『挑戦』というよりも、『好奇心』の方が強かったかもしれません。実は北極以外の海外を知らなかったし、他の極地も知らなかったので、いずれ南極に行こうとタイミングを計っていたところはあります。40歳の節目を迎えたこともあり、いろいろ重なって南極点を目指すことになりました。
北極冒険の経験から、ある程度の(無補給単独徒歩の)想定は立ててましたけど、正直なところ、過酷度はその想定を超えることはなかったですね」
佐藤 「そうは言っても、寒さも2000メートルを超える山登りもキツかったと思うんですけど。約100kgのソリをひいて、激しい向かい風(カタバ風)にさらされるのは、困難を極めると思うんですが……」
・知識と経験の範疇
荻田 「たしかに、最初の数日はちょっと大変ですよ。極地の無補給徒歩の場合、寒さへの慣れとソリひきへの慣れがあります。日が照っていたので、寒さはそれほどではなかったです。ソリひきはいつも(北極冒険)のことなので、特別に大変ということはないです。傾斜があるとはいっても、緩やかですから。斜度がキツイところは、氷がガリガリに固まってるから大変って言えば大変ですけど、ずっとそうではないですし……。
カタバ風もキツイけど北極のブリザードほどではないですね。強風の日はあるけど、ブリザードみたいに何日も続かないし。想像していたよりも緩かったです。その想像の段階も北極よりも緩かったけど」
佐藤 「荻田さんの想像よりも緩かったとは言っても、危険もありますよね。クレバス(氷床の深い割れ目)に遭遇することもあるし、氷点下20度を下回る世界なら、凍傷にもなる恐れはあるし」
荻田 「南極の場合は、クレバスの位置は大体わかっています。凍傷になるのは寒さが原因ではないです。準備やケアが不十分だからなるんです。突然寒さが襲ってくるような場所ではなく、ずっと寒いのは最初からわかってるんですよ。だから、油断が原因と考えても良いかもしれません。冒険とは、「ムチャをする」ことではないんです。もしも冒険を失敗するとしたら、知識や経験、考えが足りなかったということでしかないんです。
だから本音を言えば、今回の南極点の無補給単独徒歩は、すべて自分の知識と経験の範疇だったので、僕にとっては冒険ではないんです」
・冒険とは?
荻田氏は過去のインタビューで、冒険についてこう語っている。
「挑む者がリスクと主体的に向き合い、行動を選択し、試行錯誤をして目的達成を目指さなければならない。したがって、僻地(極地)に行くのは目的のための手段であり、裏を返せば日常にも冒険はありえる」
北極で培った知識と経験が、南極冒険のリスクを軽減していたのかもしれない。とはいえ、日本人初。これまで日本人が誰も成し遂げたことがないことを達成したのである。その功績は称えられるべきなのだ。
・若者を連れて北極へ
そんな荻田氏は、来年に向けて1つの計画を考えている。2000年に大場氏主宰の「北磁極を目指す冒険ウォーク」で自分が初めて北極に足を踏み入れた時と同じように、若者を連れて北極に行くことを考えているそうだ。自分ひとりが極地に向かうのはもう何度となく繰り返しており、ある程度のことは経験則で読めるという。しかし人を連れて極地に行くことは、それとはまた別の次元の問題が伴う。
行程で仲間の身が危険にさらされることもあるだろう。見知らぬ同士が30日以上も行動を共にすれば、予期せぬ問題も起きるだろう。単独徒歩とはまた違った現実と向き合うことになる。
それもまた、荻田氏の考える「冒険」である。冒険とは、考えること・試行錯誤していくである。2019年のチャレンジによって、荻田氏は冒険家としてのキャリアをまたひとつ伸ばすことになるだろう。そうして2020年に再び北極点無補給単独徒歩を目指すことになる。南極点での偉業は彼にとって、通過点にほかならない。北極こそ彼の本懐である。
取材協力:荻田泰永南極遠征事務局
Photo:Rocketnews24 / 荻田泰永, used with permission.
Report:佐藤英典
佐藤英典





【松本人志さんも驚愕】北極冒険家・荻田泰永氏が『南極』に挑む! 無補給単独徒歩での “南極点” 挑戦は日本人初
【南極冒険14日目】気温が高く雪に足をとられているもよう / 冒険中盤に備えて「ゆっくりのペース」を維持
『雪を食べてはいけない』は常識! 極地ではどうするのか冒険家に尋ねたら意外な答えが!? 「そんな非効率なことしない」
日本人初の偉業を成し遂げた荻田泰永氏が都内で報告会 / 彼が撮影した南極の風景がいろんな意味でヤバかった!
南極点無補給単独徒歩の荻田泰永氏が『植村直己冒険賞』を受賞! 40年の時を越えて生きる植村氏の偉業
編集長が選ぶ! ホントに美味しい「チキン」ランキング ベスト8! / 第26回おすすめ〇〇選手権
渡航自粛下の「築地場外市場」で客足と飲食価格を調べに行ったら、トンデモない値段のラーメン発見! 良心的すぎだろッ!!
【焼き鳥】居酒屋「八剣伝」のおうち居酒屋福袋を買ったら、10人に1人の “当たり” を引いてしまった
セブンイレブンには今「麺類を調理してくれるロボット」がいる / 店舗限定「お店で仕上げた できたて麺」を体験してみた
【ガチ穴場】新宿駅徒歩4分の場所に“信じられないほど静かな和風宿”があった / 1泊8000円「景雲荘」
【美濃焼】おうちカフェ食器10点入り3980円の福袋が大正解! ただ、ひとつだけ不満な点もあった…
全国で4か所! 牡蠣もアワビも食べ放題の超豪華バイキングが圧巻「大江戸温泉物語Premium 鬼怒川観光ホテル」
【家焼肉】プロの料理人は言った。「そんなの業スーでザブトンですよ」と。〜ぼっち忘年会最強プラン決定戦〜
【4コマ】魔王軍はホワイト企業 1840話目「忘年会⑥」
【悪夢かよ】横浜・伊勢佐木町の激安ホテルがアウトレイジ過ぎて震えた / まさかあの会長のホテルだったとは…夕食・朝食付き&25時間滞在OKで1泊7300円
【本日発売】「ローソンの福袋」(2160円)があまりにパンパンに詰まってて、持って帰るのちょっと恥ずい
中国「渡航自粛要請」から2週間が経った京都市内「祇園」「清水寺」「錦市場」の様子を見に行ってみた
中国「渡航自粛勧告」から1週間経った、東京・浅草を見に行ってみた
中国の「渡航自粛勧告」から2週間、現在の「奈良公園」で目の当たりにした意外な光景
【納得】ガストの「ジョブチューンで唯一不合格だった」メニューを食べてみた → 不合格にする気持ちがわかった
【検証】10年間ほぼ毎日飲んでる「コーヒー」を1週間断ってみたらこうだった
【は?】楽天で見つけた「在庫処分セール半額おせち」を買ってみた結果 → 届いた数日後にブチギレかけた
【雑草対策】カインズで598円「撒くだけで防草できる人工砂」の効果がヤバ過ぎた / お財布にも環境にも優しい超画期的アイテム
【検証】「スタバはどのサイズを頼んでも量は一緒」という動画が出回る → 実際に試してみた
【事故】楽天で買った『訳ありB級フルーツ福袋』を開封した翌日、妻から信じられないLINEが来た「メロンが…」
【南極冒険9日目】ようやく食事を完食できるようになった? 極地冒険特有の身体に起きる変化とは
【南極の日】極地冒険ファン必見! いまさら聞けない日常でも使えそうな「南極用語」あれこれ
【南極冒険13日目】南極を歩くうえで、気温が高いと困ることとは何か?
南極点踏破に向けて『極地冒険家』荻田泰永氏が出発! Twitterで「南極お悩み相談」に乗ってくれるぞ~!!
【南極冒険番外編】南極点に到達した荻田泰永氏は何をしているの?
【南極冒険34日目】北極冒険との違いを改めて痛感 / 南極では「進行」を計算できる
【南極冒険23日目】風も弱まり移動距離25.7kmを稼ぐ / この先を見越してスピードアップ! その理由とは?
【南極冒険50日目】日本人初! 南極点無補給単独徒歩ついに達成!! 荻田泰永氏が偉業を成し遂げる!
【南極冒険18日目】標高900mに到達し気温はマイナス20度に / 足元は安定して大幅に距離を伸ばす
【南極冒険19日目】極地冒険の楽しみは夕食後に食べるアノ北海道の銘菓! 悶絶するほど美味しいそのお菓子とは?