【実録】ネットで彼女募集したら「カナダ人」からメールが来たので会いに行ったらこうなった(その2)
あっという間に約束の土曜日。アリさん指定のカフェ『Fuglen Tokyo』に向かった。代々木公園のすぐ近くにあるこのカフェは、アリさん曰く「海外の旅行者の間では有名なカフェ」なのだという。
大通りから路地を少し入ったところにある小さい店で、普通の1戸建て住宅の1階を改造した感じだ。とても世界的に有名な店には見えないが、確かに客は色んな人種の外国人で占められている。なんだか裏ステージを見た気分だ。
コーヒーを注文して外の椅子で一服していると、アリさんからLINEで電話が。電話に出たところ、目の前の道に立っていた女性が「セイジ?」と控えめに声をあげた。スマートフォンから同じ声が聞こえる。ということは……
アリさんキター! 彼女は、166cmの私より少し身長が低い小柄な女性だった。Hi! ナイス・トゥ・ミーチュー!!
勢いであいさつした私だったが、ヤヴァイ。その次の言葉が全く出てこない……。こういう時は、まず、何を言えばいいんだろうか。そもそも、日本人女性相手でもトークがウマイとは言い難い私が、それを英語に変換するって無理ゲーじゃね?
しかも、アリさんは英語でなんか話しかけてきてるけど、何言ってるのか全然わからない(白目)。とりあえず、アリさんが日本語があんまり堪能ではないことと、コーヒーを買いに行くことだけは身振り手振りでわかった。奢りたいけど「奢るよ」って英語でなんて言うんだ?
そんなことを考えているうちに、コーヒーを買って戻って来るアリさん。これはあかん……! そこで、文明の利器iPhoneを駆使することにした。
聞き取れない発音はiPhoneに打ってもらい、こちらの気持ちは日本語と身振り手振りも交えつつ、単語をiPhoneで調べながら伝える。たとえ神が人類の言語を別けようと、我々は越えてみせる! 人種の壁を!!
アリさんが付き合ってくれたことが幸いして、人となりがぼんやり見えてきた。インドア派で、好きなアニメは『サイコパス』『未来日記』『エルフェンリート』と結構オタク。そのため、「趣味が合うかも」とメールを送ったらしい。英語わからなくてもなんとかなるもんだなあ……と、その時!
突然、iPhoneの画面が真っ暗に。
ハ? 何コレ? 電源ボタンを押してもうんともすんとも言わない。まさかまさかまさか……
ギャーーーーーーー! iPhoneの充電がなくなってるゥゥゥウウウ!? 絶対絶命。バベルの塔は崩壊し、イカロスの翼は溶けてしまった。これが神に挑んだ者の末路か……
いや、まだだ! コーヒーがすでになくなっていることに気づいた私は、アリさんと代々木公園を散歩することにした。そして、途中のファミリーマートでモバイルバッテリーを購入。フハハハ! 勝ったな!!
──代々木公園の散歩、超楽しかった。
最後にアリさんは「今日は楽しかった」と日本語で言ってくれ、私は「Today was very fun」と伝えた。もし、アリさんが思っていることがスムーズに理解できたら、それはとても素敵なことだ。
だが、今日の楽しさは、言葉が伝わらないからこそ飾りのない純粋なものだった気がする。ひょっとしたら私たちはそういったものを探して旅をしているのかもしれないね。澄んだ空気にぽっかりと冷たく光るお月様。今夜も月が綺麗ですね。