先日、大阪でラーメン屋店主が大麻所持で逮捕された。かねてより客から「大麻のニオイがする」という声があったという。このニュースに、ネット上では「大麻のニオイってわかるのかよ!?」「その客、何者だ?」と驚きの声が上がった。
そして同時に! 人気漫画のあのシーンを思い出したという声も続々。それは『名探偵コナン』の「ペロッ……こ、これは、麻薬!!」である。いやいや、これもありえないでしょ!? でも実際のところどうなの? ドラッグ事情通に話を聞いてみた。
ということで、聞いてみたのは毎度おなじみ、“正義のドラッグ事情通”と呼ばれるボブ麻亜礼氏だ。何が正義なのかはさておき、すぐにでもボブさんに疑問をぶつけたいところ。だが、まずは「ペロッ……こ、これは、麻薬!!」について、簡単におさらいしたい。
・名探偵コナン「ペロッ……こ、これは、麻薬!!」とは
これは『ピアノソナタ「月光」殺人事件』に登場する1シーンだ。殺人事件の犯人探し中に、“怪しい粉” を発見したコナン。すると次のコマで「ペロッ」と指を舐め、そして「こ、これは……麻薬!!」と、事件に麻薬が関与している可能性に気がつくという場面である。
衝撃。コナン、麻薬の味を知っていた!? なおこの事件は、作品の中でも最も悲劇的な結末と言われ、さらにコナンの探偵としての信条に大きく影響している。あらゆる意味でコナン史に残るストーリーだ。コミックス第7巻に収録されているので、気になる人は読んでみよう。
・ドラッグ事情通に聞いてみた!
これで準備はOKだ。それでは聞いてみよう、ボブさーん!!
──いきなり本題ですが、『名探偵コナン』のこのシーンを見てください! 謎粉ペロリ → 麻薬発見なのですが、そもそも麻薬って何なんでしょう?
ボブ「麻薬とは何なのかってことを細かく説明しようと思ったら、実はハンパなく長くなっちまうから、めちゃくちゃ簡単に説明するぞ。わりと複雑なんだ」
──極限まで簡単にお願いします
ボブ「まず、一般的に言われている “麻薬” ってのは、アヘンとかモルヒネとかヘロインとか……いわばケシ由来の「超ダウナー」なドラッグを指している。医療にも麻酔とかで使われる系のドラッグだな。トロリ〜ン……ってな。しあわせ〜〜〜……みたいな。過剰に摂取したら死ぬ系のヤツだ」
──ああ! 『るろうに剣心』とか『大草原の小さな家』で見たことがあります!! 怖いですよね。あれ? 大麻は入らないんですね
ボブ「そうなんだ。ここで、中国に詳しい人ならピーンと来ると思うんだけども、実は「麻薬」の「麻」は、そもそも中国語で言うところの「痲(マー)」から来ている。山椒とか、シビれる系の、あの「マー」だ。麻酔ってシビれるだろ。「シビれる薬」、だから痲薬なわけだ。これポイントな。
じゃあなんて、痲薬じゃなくて「麻薬」になったのかっつーと、その漢字を日本で使っていなかったから。だから「麻」って字を使ったワケ。つまるところ、実は日本において、大麻と麻薬はまったく無関係だったりするんだ。いつしかゴッチャになっちまったけども」
──「麻薬」の「麻」と、「大麻」の 「麻」の意味は違うと!
ボブ「だな。ちなみに、法的に何を「麻薬」とするのかは、その国によって違ったりする。
例えば日本だと、「麻薬及び向精神薬取締法」ってのがある。でも、覚醒剤には「覚せい剤取締法」ってのがあるし、大麻は「大麻取締法」がある。さらに、なんとあへんは「あへん法」ってのがあったりもするんだ。アメリカや、オランダとかだったら、また違う話になってくるわな」
──頭がゴチャゴチャになりそうです。結局、テレビなどで聞く「麻薬」って何を指すんですか?
ボブ「では今度は、言葉の意味や、その歴史、そして法律を抜きにして、実際のところ「麻薬」とは何なのかってことだけど、これは、オレが思うに、国やマスコミが「これが麻薬です」って言ったものが、そのまま麻薬として認識されているだけ、って感じだな。
もしも仮に、「摂取したら精神や体に影響があるもの」が麻薬だとするならば、どう考えても「酒」がキングオブの麻薬だよ。実際、アメリカとかではその昔、禁酒法ってのがあっただろ。酒は違法だったんだ。でも今は……? 日本では……? 中毒になるタバコもしかり、だ。
短くまとめても、こんくらいだ。ひとくちに「麻薬」って表現するのは、実に難しいことなんだよ」
……ヒジョーに複雑なことを聞いてしまったようだ。
ボブさんの話を要約すると、「麻薬」という言葉がさすのは特定の1種類の薬物ではなく、複数種を総括したものだという。しかも、その言葉を使う場所や場面によって定義も変わるよう。これだけでも豆知識だ。……ん? ということは……?
前置きが長くなってしまったが、ついにあの質問をぶつけるときが来たようだ。コナンの 「ペロッ……これは麻薬!!」はありうる話なのか、衝撃の答えは次ページへGO!