unspecified-4_580px

今、ある写真シリーズが「美しいけれど悲しい」と注目を集めている。それはペットボトルで作られた海を泳ぐ人魚たちの姿を収めたもの。

一目見るなり「美しい」と思ってしまうが、一方の「悲しさ」はどの部分から来るのか? この写真に込められた意味をお伝えしたい。

・“ペットボトルの海”

カナダ・モントリオールを拠点に活動する写真家ベンジャミン・ヴォン・ウォンさんが発表した、プロジェクト「マーメイド・ヘイト・プラスチック」。ペットボトルでできた海を泳ぐ……いや、飲み込まれているような人魚たちの姿が写真に収められている。

・美しくも悲しい人魚たちの姿

床に敷き詰められた青や緑、白のペットボトルの上に横たわる人魚を、真上から撮影したものだ。海の中で膝を抱えたり、渦に飲まれたり、浜辺に流れ着いた人魚たち。美しいが、なんだか悲しげだ。

「悲しげ」だと見る者に感じさせることが、このプロジェクトでは大切なことだろう。なぜならこれは、ペットボトルを消費しすぎる現代人に対する問題提起だからである。

unspecified-5_580px

・60歳までに使うペットボトルは1万本

プロジェクト用に廃棄処理場から集められたペットボトルは1万本。なぜ「1万本」なのか? アメリカ人は1人平均1年間で167本のペットボトルを消費しているそう。この計算でいくと、1人の人間が60歳に達するときには1万本ものペットボトルを消費することになるからだ。

ウォンさん1人で作品を作り上げた訳ではない。ペットボトルのキャップ・包装を取り、洗浄、撮影場所の確保、美しい人魚の衣装の用意など、たくさんの人がプロジェクトに参加したと伝えられている。

unspecified-7_580px

・日本人は1人平均1年間で300枚のレジ袋を消費

もちろん、リサイクルされるペットボトルもあるが、プラスチックゴミとして海に漂い出るプラスチックも多い。海外メディア『EcoWatch』によると、海に漂うプラスチックによって年間100万羽の海鳥が、10万匹の海洋ほ乳類が命を落としているという。

海のプラスチック汚染を少しでも改善するために、ウォンさんは「再利用できるボトルを買うこと」「レジ袋やストローなど、他のプラスチック製品が捨てられた後どうなるか知ろうとすること」「プラスチック公害について学び、他の人とも話し合ってみること」を呼びかけている。

unspecified-6_580px

日本でもプラスチック削減が叫ばれている。しかしNHKによると、日本人は1人平均1年間に300枚ほどのレジ袋を使っているそうだ。EU などでは1人年間40枚に削減したほうがよいとされていることから、日本でのレジ袋消費量ももっと減らすべきだと言われている。私たちも「プラスチックをできるだけ使わない選択」をより積極的に取っていくべきだろう。

参照元:vonwong.comEco Watch(英語)、NHK クローズアップ現代+
執筆:小千谷サチ
Photo:vonwong.com

▼廃棄処理場でペットボトルを集めるウォンさん
unspecified-1_580px

▼撮影の様子
unspecified-2_580px