幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。これはトルストイの『アンナ・カレーニナ』の有名な一節だが、なんだか他のものにも当てはまりそうな気がする。例えば上司。良い上司はどれも似たようなものだが、悪い上司はいずれもそれぞれに悪い……なんてね。
しかしこの度、「悪い上司は2種類いる」との調査結果が発表されたというではないか。え? 悪い上司ってたった2種類しかいないの?
・「機能不全な上司」と「邪悪な上司」
ニューヨーク州立大学ビンガムトン校のセス・M・スペイン准教授率いるチームが、“悪い上司” と呼ばれる人々の行動形態を調査し、その結果を論文『Stress, Well-Being, And the Dark Side of Leadership』にて発表した。
なんでも “悪い上司” は、「機能不全の上司」と「邪悪な上司」に分けることができるというのだ。
・部下を傷つけるつもりはない「機能不全の上司」
まず「機能不全の上司」とはどんなタイプなのか? サイエンス系ニュースを取り扱う海外サイト『Eurek Alert!』に掲載された、スペイン准教授の説明はこうだ。
「このタイプの上司は、部下を傷つけたい訳ではありません。技術の欠如や性格の欠点などで、上司としての仕事を適切に遂行できないのです」
別のメディア『attn:』では、無能で自分が置かれた状況を把握できない人物であり、自身の仕事ぶりに不安を抱いていたり、職場の他の人間の気持ちを理解しようと悪戦苦闘するパターンなども説明されている。自分の失敗などを認識することも苦手だったりするそうだ。
また「機能不全の上司」の存在は、仕事の役割がしっかりと決まっていないなど、その会社の欠陥の現れであるとも考えられるという。
・部下をいじめ、支配する「邪悪な上司」
一方の「邪悪な上司」は、部下や周囲の人間を意図的に傷つける。このタイプは「ダークトライアド」と呼ばれる “1:自己愛が強く”、“2:目的のためには手段を選ばず”、“3:反社会的な人格を有している”、という3つのパーソナリティ特性が備わっているケースが多いとのこと。スペイン准教授は、次のように話す。
「邪悪な上司は、人を痛めつけ、人が苦しむ姿を見るのを楽しみます。日常的に意地悪な行為を行ったり、人を罵ったりします」
『attn:』では、部下を軽く扱ったり支配して、職場での自分の立場を良くしようとしているとも解説されている。
・いずれの上司を持っても、部下はストレスを感じる
こう聞くと「邪悪な上司」のほうがずっと嫌な奴に感じられそうだが、どちらの上司を持っても部下は激しいストレスにさらされる場合が多いようだ。
今回の調査を行った理由を、「職場ストレスの軽減につなげるため」と説明するスペイン准教授。「上司の性格が、職場でのストレスにどんな影響を与えるか。これを理解することは、従業員の能力を高める上でとても重要なはず」とも述べているのだった。
ああ、“悪い上司” から解放されたらどんなに素敵だろう……。今回の調査を通じて、“悪い上司” への対処法が社会全体で作られる未来が実現する可能性だってある。しかし残念ながら、それは現在ではなさそう。今、上司に苦しめられている人は、できる限りの手を打ってストレスを軽減していってほしい。それと同時に「自分は “悪い上司” になっていないか?」と胸に手を当ててよーく考えてみたい。
参照元:Eurek Alert!、attn:、Emerald(英語)、レファレンス共同データベース
執筆:小千谷サチ
Photo:RocketNews24.