以前の記事で紹介した、知られざるインドネシアのメタルシーンを詳細に伝える書籍『デスメタルインドネシア』。世界でも2番目にブルータルデスメタルが多い国なだけあって、アフリカとは異なり、格好良いバンドが数多くひしめき合っている。
首都のジャカルタやバンドンなどの大都市は、先進国と変わらないバンドばかりだが、地方や僻地に目を向けてみると、まだまだ珍妙なバンドが潜んでいるのである。今回紹介する「sHiTaKe」もそのひとつだ。
・アチェ出身のデスコア [ sHiTaKe ] は日本語の「椎茸(シイタケ)」が由来
インドネシアのなかでも、特にアチェと東ティモールはジャワ島から遠くはなれており、民族や文化が異なるため、アフリカのメタルシーンで見たようなヘンテコバンドが多く存在していたのであった。さてそんな辺境のデスメタルバンドの中でも、特に笑ってしまったアチェの「sHiTaKe」(正式にはカッコつきの [ sHiTaKe ] )を紹介しよう。
この「sHiTaKe」、実は奏でるサウンドはアメリカの「Suicide Silence」や、同じくアメリカの「All Shall Perish」といったバンドから影響を受けたデスコアで、オリジナリティは薄いにしても、演奏力も平均水準で特にダサ格好悪さや、マヌケさは感じられない。
しかしどうしても日本人として失笑せざるを得ないのが、バンド名の由来だ。なんと「椎茸(シイタケ)」という日本の言葉から来ているのである。そう、あの茶碗蒸しに入っている「シイタケ」である。そう、あのシメジとかマッシュルームや松茸に似た、キノコの事である。
・ライブで「シイタケ!」と絶叫
筆者が以前見た彼らのライブ動画では、思いっ切り「シイタケ!」と叫んでいるのが分かる。あの茶色と白の傘のイメージが脳裏によぎり、思わず笑ってしまう。
デスメタルやデスコアは若者音楽の中でも、最も激しいサウンドを体現するジャンルで、はっきり言って、「シイタケ」という精進料理で使われる植物のような菌類はイメージ的に全く似つかわしくない。以前紹介したシンガポールのデスメタルバンド「Oshiego」(教え子)よりも更に軟弱なイメージだ。
・人間の「二面性」を表すために、毒にもなる「食用菌類」をピックアップ
実は、当初このバンドを見かけた際、「sHiTaKe」というバンド名には対して違和感はなかった。そのバンド名に気を止める事すらなかった。恐らく無意識の内に「Shit(クソ)+Take」の造語の様なものに見えていたのかもしれない。
しかし彼らのプロフィールを調べていて、あるインタビューでバンド名の由来を答えているのを発見した。そこで以下の様に答えているのである。
「菌類には多種多様のものが存在する。食べられるものもあれば、毒性のあるものもあり、寄生するものもある。実は『菌類』のそのような在り方は、『人類』と似ている事に気が付いた。人類も良き存在である事が可能なのと同時に、害をもたらす事もある。
そうした人間の二面性を表すのに、『菌類』が相応しいと考えた。そして我々のギタリストが日本で食用として供される『シイタケ』をバンド名にする事を提案したんだ」
・活動停止の為、インタビューは難航
この話だけ見ると、論理に矛盾点はない。しかしなぜ「マッシュルーム」などの、欧風のきのこ類にしなかったのか疑問が残る。また食材で毒性があるものとしては、「フグ」も有名だ。なぜ「Fugu」ではダメだったのだろうか? それに「善と悪」の二面性を表すものなら、『ジキルとハイド』など他にも幾らでもある気もする……。
そこで彼らにインタビューを試みようと思ったのだが、残念ながらバンドは2013年以降活動を休止している。バンドのメンバーのFacebookの個人アカウントがあったので、全員にメッセージを送ってみたものの、一人が「既読」となった以外、誰からも返事は貰えなかった。
・実は「シイタケ」は英語でも「shiitake」で通じる
結局、バンド名の由来の真相を追及する事は、これ以上不可能だった。さて、実は海外や英語圏では「シイタケ」自体が一般的には生息しておらず、食用に用いられるのは日本や中国、韓国のみ。英語でも「shiitake」とそのままの名前で呼ばれているのである。
以前の記事で、「宇宙人」を意味していたつもりの「Gaijin」というインドのデスメタルや、「弟子」を意味していたつもりのシンガポールの「Oshiego」の機械翻訳で間違ってしまったケースを紹介した。これらは単純な日本語の間違えを、そのままバンド名にしていたのだが、今回の「sHiTaKe」は日本語として間違っていない。むしろ海外でも通用するはずの日本語だったのだが……。
・それでもスペルが間違っている。「i」が一つ足りない
ひとつだけ彼らに指摘したいことがある。それは彼らがスペルミスを犯しているという事。彼らは「sHiTaKe」と綴っているが、正確には「i」が2つ必要、本当なら「sHiiTaKe」になるはずだったのだ。
また他にもなぜ「H」、「T」と「K」が大文字なのか聞いてみたい。それだけでなく、常にバンド名自体を[ sHiTaKe ]と表記している。なぜ毎回、“[ ]” とカッコで括っているのか、その理由も聞いてみたい。
細かいことを言うと、「s」の前と「e」の後にも必ず半角アキがあるのだが、この様な自分勝手で必要以上にややこしいバンド名にする事によって、多くの人々に混乱を招いている事に対して、苦言を呈したい。「sHiTaKe」のメンバーと連絡が取れるといいのだが……。
▼インドネシアのバンド「 [ sHiTaKe ] 」のライブ映像
ハマザキカク
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