サハラ砂漠には、世界中から訪れる観光客を冒険旅行へと誘う職業がある。「ラクダ使い」だ。世界中の言葉を自在に操り、人にも動物にも優しく接するその姿は、男でも思わず惚れてしまうレベルだという。
一方で私は、毎日デスクワークで座ったまま、体を動かすのはトイレとコンビニに行くときだけ。当然、冒険には縁がないし、英語も「How are you?」程度しかわからないオッサン……なのだが! この度、そんな退屈な毎日にピリオドを打つため、ガチでラクダ使いになってきたので報告したい。
・砂漠の真ん中のオアシス
サハラ砂漠の真ん中に佇むホテル『オーベルジュ ド スッド』。ホテルを一歩出れば金色のサハラ砂漠……さらに贅沢なことに、中庭のプールからも砂漠を眺めることができるため、モロッコのメルズーガエリアでは人気のホテルである。
今回私がお世話になったのは、そんな豪華なホテル……から約50m離れた場所にあるボロボロの小屋。周りには、ホテルが所有するラクダと羊がウロウロしている。
ラクダ使いに弟子入り志願をしたところ、比較的スムーズにこの小屋に案内され「やっぱ帰る」と言えない状況になってしまった。
・未経験者大歓迎
さて、私を温かく迎え入れてくれたのは、見た目が悪党みたいなラクダ使いの皆さんである。間違えてヤンキー高校に入学してしまった気分だ。
とりあえず私は「英語も話せないしラクダも触ったことないし、何よりオッサンだ」と伝えたのだが、返事は「OK」の一言……なんでだよ。
・ラクダの座らせ方 ~サハラ砂漠編~
その後、彼らから「アリ」と名付けられた私は、ラクダの座らせ方や立たせ方を学ぶことに。さっそくラクダの前に立ってみると……マジかよデカすぎるぞおい。本当に、本当に合図をすれば座るんだろうな。
恐怖で吐きそうになりながらも、教わった通りに「オッチ」と声をかけてみると……おおおおおおお! ラクダがヒザを曲げて座ってくれた。やばい気持ちいい。後ろのラクダにも「オッチ」……すげええええ! その後ろにも「オッチ」……カワィィイイイイッ!!
・1番大切なこと
そんなこんなでその後も順調に、聞き取れない英語の説明にもテキトーに「Yes」と答えながら……「ラクダの立たせ方」や「砂漠を歩く際の注意点」などを学んだ。
とくにラクダを何頭も引き連れて歩く際には、「先頭のラクダではなく、一番後ろのラクダのペースを常に確認しろ」と何度も念を押された。てか、覚えることが意外とたくさんある……ただ歩くだけじゃないようだ。
・初仕事
そして夕方、ラクダが飲む水で顔を洗ってターバンを巻く。いよいよ私の初仕事が始まる。先輩のモハメドが3頭、私が2頭のラクダを引き連れてホテルの前へ到着すると……待っていたスペイン人観光客たちから歓声が上がった。すぐにスペイン語で応対するモハメドが頼もしい。
私も得意の「オッチ!」でラクダを座らせ、お客さんをラクダの背中に乗せる。よし、抜群のテンポだ。さらにさらに、15分前に覚えたスペイン語で「私はアリです」と自己紹介。さあ、今日はこれから約5キロ先の砂丘を目指し、そこから美しい夕日を眺めるぞ。
・冒険の毎日
果てしなく広がる砂の大地に雑音はなく、ラクダの歩くペースに合わせて太陽も静かに沈んでいく。こうして私も、サハラの地で無事にラクダ使いへの第一歩を踏み出すことができた。世界中から訪れる旅人との冒険の毎日が始まったのである。
──いかがだっただろうか。同ホテルが主催する砂漠へのキャメルトレッキングは、サンセット、サンライズを楽しむ約2時間のコースから、無限の星空の下で宿泊するコースまでさまざま。機会があればぜひ参加してみてほしい。きっと一生の思い出になるだろう。
参考リンク:オーベルジュ ド スッド
Report:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.
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▼練習風景
▼オーベルジュ ド スッド
▼この時点で未知の世界である
▼優しいラクダ使いの皆さん
▼休憩中はミントティーに癒される
▼モハメド先輩
▼冒険の毎日である