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お金持ちのシンボルとして見られることの多い「執事」。アニメや映画で一度は見たことがあるが、実際に執事を見たことがある方はほとんどいないだろう。そう、執事とはその実態を知る者が少ない非常に謎多き職業なのである。

ということで、執事とはどんな仕事なのかを知るべく、執事歴8年の新井直之(あらい なおゆき)さんにインタビュー取材をしてみた。新井さんは現在、自身でも執事の仕事をしながら執事サービスを提供する会社を経営しており、『執事だけが知っている世界の大富豪53のお金の哲学』という本まで執筆している。

その執事のエキスパート新井さんに執事がどのような仕事をし、どのような生活を送っているのかなど様々な質問をぶつけてみた。すると、とても興味深い答えが次から次へと返ってきたのだ。その気になる答えは、以下の通りである。どうぞ!!

Q:執事になろうと思ったきっかけは何ですか?

A:元々は法人向けの営業をする会社員だったのですが、2つの理由で執事を始めようと思いました。まずひとつめの理由はお客様と一生、可能なら世代を超えて2世代、3世代とお付き合いできる仕事がしたいと思ったからです。ふたつめは個人のお客様に特化した最高のサービスを提供したいと考えたときに「執事」が頭に浮かんだからです。

Q:新井さんは2008年に現在の執事の会社を立ち上げていますが、これまでの道のりを教えてください。

A:起業して半年くらいは全く仕事依頼がなく、執事としての経験のない私はサービス業のトレーニングを受けていたのですが、あるとき私の会社に海外の執事学校を卒業し、実際に執事として働いたことのある人が仕事を探しに問い合わせしてきたのです。そのとき紹介できるような仕事は全くなく、私は「執事として必要なことを教えてくれませんか?」と頼みました。

そんなこんなで執事としての技術を学んでいたら、世界の大富豪TOP10に入るようなヨーロッパの富豪の方から日本滞在中のお世話や日本にある別荘の管理などの仕事をいただきました。そこからその富豪の方が他のお客様をいろいろとご紹介して下さって、仕事が増えていきましたね。

起業した当初は日本では執事というものがあまり知られていなかったのですが、ドラマ『メイちゃんの執事』やアニメなどで認知度がどんどん高まっていきました。それにつれて、「執事サービスを体験したい」「執事になりたい」という問い合わせがどんどん増えていきましたが、遊び半分で執事サービスを体験したいというような問い合わせは、申し訳ないのですが、お断りしていました。(笑)

Q:新井さんの会社にはどのような方が働き、どのような依頼が来るのですか?

A:わが社には執事は7名ほどいます。またメイドさん、運転手さん、シェフは登録制にしており、必要な場合のみ来ていただくことになっています。現在契約いただいているお客様は大体20~30名ぐらいですね。

契約のほとんどが年契約なのですが、たまに「息子が日本に留学する半年だけ世話をしてくれ」「娘が東京に行くので、その5時間だけ世話をしてくれ」などのご依頼があります。

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Q:執事はどのような仕事をしているのですか?

A:執事は基本的にお客様のご邸宅を管理したり、お客様が来日された際に付き添ってサービスしたりしています。アニメの執事は食事を運んで来たり、ワインをついだりお食事に関する奉仕が結構ありますよね。

確かにそういったことをすることもあるのですが、実際の執事はメイドさんやシェフの勤務管理や給与支払の手続きをしたり、管理を担当しているご邸宅の修繕費や光熱費の支払い手続きをしたりと一般企業でいう総務部的な仕事も多いですね。

Q:執事として働く時は燕尾服ではなく、スーツを着るんですか?

A:はい、基本的にスーツです。燕尾服は目立ってしまうので、着ません。実は富豪の方は極力目立たないように行動するのが基本なのです。もし執事だと一目で分かるような燕尾服を着た人がそばにいると、まわりにお客様がVIPだとばれてしまい、誘拐・恐喝のリスクが出てきてしまいます。

ですので、お客様を乗せる車も周りの目を引く高級車ではなくファミリーカーが多く、ドアの開け閉めはほとんどの場合お客様自身でされます。またお客様のお子様を学校へお送りする際も我々執事はスーツではなく、ポロシャツにジーパンといったカジュアルな服装をします。大企業の社長になると、知らないところで恨みを買っていることもありますので、目立たないように行動することが安全につながるのです。

インタビューの続きは次ページ(その2)へ。

Report:田代大一朗
Photo:RocketNews24.