
突然だが、筆者の前職は「サーカス団員」である。たくさんの裏方仕事をしながら、感動にあふれ光り輝く夢の舞台にも立たせてもらっていた。団員の挑戦する勇気は、観客にもダイレクトで伝わり、それが笑いや歓声となって団員にはねかえる……。それら全ての要素が、サーカスという伝統芸術を作り上げているのだ。
しかし、サーカス団員というと、「さらわれたり買われたりした子供に芸を覚えさせる」という暗いイメージが未だにあるという。そこで今回は、筆者がサーカス団員生活11年の中で感じた真実の、そして愛すべき「サーカス団員あるある」をお届けしたい!
・サーカス団員あるある
その01: テントの設営はもちろん、仮設住宅に電気や水道をつなぐのも団員の仕事である。
その02: サーカス団員の子供は転校が多く、同級生が何千人もいる。
その03: 財布の中に他県の病院の診察券がある。
その04: 練習中、演技中にケガをすると、まずその現場に塩を置いて清める。
その05: ライオンが暴れた時、調教師が死ぬと思ったことがある。
その06: 日本各地の「まっぷる」と「るるぶ」がたまる。
その07: 休日にベタな観光地に行くと、必ず別の団員に会う。
その08: どこでも倒立をしたがる団員がいる。
その09: どこでもバク転をしたがる団員もいる。
その10: 最初はビビるが、ライオンの鳴き声に慣れたらサーカス生活に慣れた証拠。
その11: それでもやっぱり、ライオンの鳴き声で目が覚める。
その12:「もしもライオンが逃げたらどうするか?」というシミュレーションは、各自が立てている。
その13: 入団当初、先輩女性団員が舞台メイクを落としてスッピンで歩いていると、誰なのか全くわからなかった。
その14: 雨が降っている時に、屋外にある団員用トイレや風呂に行くのがめんどくさい。
その15: 限界まで我慢してトイレに行ったのに、使用中で絶望的な気持ちになる。(団員用仮設トイレは男女2つずつ)。
その16: 仮設トイレのパワーには限界があるためか、たまに絶対に流れない大便があり、それは「ドラゴン」と呼ばれる。
その17: 実家に帰ると、家の中にトイレがあることに感謝する。
その18: 新しい土地に行くと、まず近所のスーパーやホームセンターの情報が、団員内で共有される。
その19: 新しい土地に行くと、そこ出身の団員が偉そうに情報を言うが、内容は旅行情報誌と変わらない。
その20: だいたい二週間でその土地に飽きる。
その21: 台風情報に異常に敏感になる。
その22: それぞれが台風の進路の予測をする。
その23: 台風時に、テントや宿舎を守るために見回りを交代でするが、夜中三時とかの当番の団員を見ると「お気の毒に」と思う。
その24: 悲鳴が聞こえたら、原因はほぼ「ゴキブリ」である。
その25: 仕事ができなくても、ゴキブリ退治ができる団員は頼もしくみえる。
その26: 初舞台よりも、社長や先輩団員の前で行われる最終リハーサルの方が緊張する。
その27: 仲のいい団員が舞台デビューをする時、本人よりも緊張してその初舞台を見届ける。
その28: 初舞台の時に送る拍手や声援は、お客さんよりも団員からの方が盛大である。
その29: 100人規模で開催される親睦のボーリング大会では団員が本気すぎて異様な雰囲気になる。
その30: ボーリング大会で、生まれて初めてボーリングをするロシア人の投げ方を見て笑う。
その31: BBQの時、もうお腹いっぱいなのに、外国人団員が肉をガンガン焼いて「できたよ」と言ってくる。
その32: テレビのアンテナを自分たちで設置して角度を調整するが、受信レベルが安定し、テレビがうつると歓声が上がる。
その33: なつくキリンがかわいいと思うのは最初だけである。
その34: 「キリンはどうやって移動するんですか?」という質問に飽きている。
その35: 「団員は全員で何人くらいいるんですか?」という質問に飽きている。
その36: 車で次の土地に移動中に、自分の部屋を積んでいるトラックを見つけるとちょっと嬉しい。
その37: 引っ越し後、自分の部屋を開ける時に、固定していた家具が倒れてないかいつもドキドキする。
その38:ライオンやキリンやシマウマは呼び捨てなのに、ゾウはみんなから「ゾウさん」と呼ばれる。
その39: ゾウさんやシマウマの餌(牧草40キロ×100個以上)を積んだトラックがやってくると、男性団員のテンションがかなり低くなる。
その40: 牧草を手運びすると、髪の毛や鼻の穴の中まで緑色になる。
その41: 正月の門松はゾウさんが食べる。
その42: 団員がそれぞれの出身地のプロ野球チームを応援していて、お互いのチームの試合前には「今日から三連戦よろしくお願いします」と謎の挨拶を交わす。
その43: 甲子園も同様に挨拶を交わす。
その44: 風邪が流行るスピードが尋常じゃない。
その45: 団員の恋愛の噂が広がるスピードが尋常じゃない。
その46: 恋愛関係図が複雑にからまっていて、団員の恋愛の説明をすると長くなる。
その47: 遠距離恋愛の難しさをよく知っている。
その48: 別れたら気まずいけど、ほとんどの団員が経験しているから、時間が解決することを知っている。
その49: みんな同じところに暮らしているので、飲み会の後は、みんなで仲良くタクシーで帰る。
その50: 夜の大テント内は不気味で怖い。
その51: 部屋の外でケンカなどの騒ぎがあると、テレビを消して部屋の中からその音に集中する。
その52: 休みが明けると、数人の団員の髪の色が派手になっている。
その53: 髪の毛の色が、金でも赤でも青でも緑でも紫でも驚かなくなった。
その54: トラックに乗って付いてきた野良猫が、団員に可愛がられる。
その55: サーカスを辞めたら他の仕事なんてできるだろうかって不安になる夜もある。
その56:「いつか定住するならここだな」という候補地が日本各地にある。
その57: 部屋を出たら職場なので、満員電車で通勤なんて絶対にできないと思っている。
その58: 団員たちは、朝起きて歯を磨くのも、仕事が終わって風呂に入るのもいつも一緒なので本当の家族のようである。
その59: なので送別会では号泣する人が続出する。
その60: 送る側も送られる側も、心の底から今後の活躍を期待している。
その61: みんなサーカスが大好きである。
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.
砂子間正貫
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