世界中どこだって、ホームレスの置かれた環境は厳しいもの。頑張って生活を安定させようとしても、住むところがなかったり小ざっぱりした格好をしていないと、新たな仕事に付くことは難しい。けれどもホームレスの人々には、身なりを整えるだけの余裕がない……。

しかし今、そんなホームレスの散髪を請負い、リフレッシュさせる “路上髪切り職人” さんに注目が集まっている。数年前まで自分もコカイン中毒に苦しみ、厳しい日々を送ってきたお兄さんが、“恩返し” としてホームレスの髪を切っているのだ!

・ホームレスの人々の髪を切る男性

豪メルボルンで理容師として働く、ナスィール・ソバハニさん(26)。お仕事がお休みの月曜日、彼はスケボーと散髪道具を携えて街に繰り出しては、ある活動を行っている。それが、ホームレスの人々の髪を無料で切る『Clean Cut Clean Start』。老若男女だれでも彼の手にかかれば、スッキリ! 散髪し立ての気持ちい~い髪型に早変わりするのだ。うんうん、髪の毛を切るのって誰でも気持ちがいいことだよね!

・ヘロインを克服した男性の髪を切ったのがキッカケ

彼が『Clean Cut Clean Start』のアイディアを得たのは、3年前に理容師の見習いだった頃のこと。「1カ月間ヘロイン抜きで過ごせたお祝いに、髪の毛を切りたい」と言う男性の散髪を請負ったことがキッカケだ。髪を切った男性の変わりっぷりは、まさに “変身だった” とソバハニさんは振り返る。男性の母親は、髪を切った息子の姿を見て思わず涙した。

「あれは僕の人生に残る、素晴らしい思い出です。僕がやったことで男性を勇気づけることができたのなら、他の人にもやり続けたいと思ったんです。髪の毛を切ると、自然と自信がわいてきますよね」とソバハニさんは語る。

・“恩返し” として活動を続けている

自身も20代前半までヘロイン中毒に苦しんだソバハニさんは、「生活も安定し、健康になれたことへの恩返し」として、そして絶望にある人々に少しでも自信を持ってもらいたいという願いを込めて、ホームレスの髪を切り続けると話す。

「自分のことが心底嫌いで、鏡を見ても涙しか出なかった日々を僕も過ごしてきました。だから路上に暮らす人々の気持ちがとてもよく分かる。彼らの多くは自分自身を恥じています」

「自分自身を “価値のある人間” だと感じること、そして他者との対等な交流が、ホームレスの人々にとって救いとなるはずです」

ちなみにソバハニさんが散髪したホームレスのビフォーアフター写真は、彼の Instagram に掲載されており、多くの人の注目を集めているようだ。

散髪を施してホームレスの人々に希望を持ってもらうことが、ソバハニさんの “恩返し” のやり方。きっと人の数だけ、 “恩返し” の流儀が存在しているはずだ。私の、そしてあなたの “恩返し” は一体どのような形をしているのだろうか?

参照元:Facebook、Instagram @thestreetsbarberMetroHerald Sun(英語)
執筆:小千谷サチ