私(佐藤)は常に失くすことなく、持ち続けているものがある。それは免許証だ。取得したほぼ全部の免許証を保管している。全部でないのが残念なのだが、財布にいつも入れているのである。
もしも過去の免許を処分してしまうという人は、今後保管することをおすすめしたい。というのも、免許証の写真ほど自分の変化を感じ取れるものはほかにないからだ。「顔つきは変わる」ということを、自分を通して感じ取ることができる。人は本当に変わって行くのだ。
・飾らない真面目な顔がイイ
免許証の写真撮影が苦手という人も多いはずである。なぜなら真顔だからだ。笑顔でも悲しい顔でも何でもない顔をするのは難しい。しかも後からその写真を見ると、「ナンだコレ?」と自分でも変な気持ちになる。だが、それがいい。飾らない自分を記録しているから、後から見返したときに、素直な自分の顔つきを確認することができる。
私の過去の写真を紹介しながら、そのときのエピソードを交えて紹介すると、免許を保管しておく意味がわかるはずである。
・平成6年(1994年)、病んでいた21歳
いきなり最初の普通自動車運転免許に関して、記憶があいまいなのだが、18歳のときに免許取得したはずである。しかしなぜか1枚目は持っていない。一度財布を盗難された覚えがあるので、そのときに再発行をしたのか? とにかく手元にあるもっとも古い免許証は、21歳のときのものである。
当時私は、今で言うところの「中二病」をこじらせていた。それもかなりひどい状態で、常に「見えない敵」と戦っていたと言っても良いくらいだ。尖がっていたといえば良い言い方で、今自分でこの写真を見ても「危ない」と思うくらいである。「病んでいる」と言った方がふさわしいだろうか……。
・平成9年(1997年)、老成した24歳
病んでいた時代は早々と終焉を迎える。見えない敵との戦いの結果、早くも人生に疲れを感じ始めていた。「すべては無駄だ、無意味だ」、そんなことを思っていたのかもしれない。
その頃の写真を見ると、一言でいってジジイだ。目が完全に死んでいて、希望の光の欠片さえ見ることはできない。おまけにこの頃、天パのクセに長髪にしていて、母親から「浮浪児」とまで言われる始末。お母さん、あなたはひどいことを息子に言っていたよ。それにしても24歳で老いを感じる顔だ。
・平成12年(2000年)、落ち着きの27歳
老成していた歳から3年。免許取得から9年を経て、ようやく自らの人生を歩み始めたような気さえする。この頃は、地元でライブの主催などをやっており、自分のやりたいことがようやくわかってきた歳だ。
この頃はいくぶん顔立ちもふっくらとしており、健康な様子が伺える。20代前半のトゲのようなものが抜けて、自分でも落ち着きが持てるようになったと振り返る。30歳を目の前に、人生の方向性が見えてきた。と思いきや、この歳で何も始まっていなかったことを後に知ることになる……。
・平成19年(2007年)、何かを悟ったはずの34歳
27歳から34歳の間の1枚が見つからない。なぜ失くしたのかわからないのだが、この間、30歳のときに上京している。27歳から落ち着きの人生を歩めると思ったら、カバン2つで東京に来る羽目になった。
ふっくらとしていた頬は痩せこけ、生気がいくぶん衰えて見える。この頃は飲食の派遣をしていたからお金はあったのだが、平均16時間労働真っ只中で、寝る以外に働いていた記憶しかない。人生から「生活」というものが抜け落ち、金だけがあったために何かを悟ったのだろうか……。ちなみにこのときは免許を失効してしまい、ゴールドになる機会を5年逃している。
・平成21年(2009年)、ジリ貧の36歳
この年の夏から、私は当ロケットニュース24に記事を書き始めている。とはいえ当初、私自身もまた当サイトも安定する前のことであり、生活はかなり困窮していた。人生でもっとも痩せていたのもこの時期である。
この頃の私を見ると、頬のこけ方が尋常ではない。今からでは想像もつかないほどガリガリで、生活が切迫しているためか、妙に眼力がある。抜き差しならない窮状がうかがい知れるというものだ。あの頃はマジで大変だった……。
・平成24年(2012年)、旬な39歳
晴れてゴールド免許! 本来は2つ前のときにゴールドになるはずが、更新を忘れて失効してしまったために、時間を無駄にしてしまった。この頃になると当サイトも安定し、以前とは比べ物にならないほど健やかな生活ができるようになっている。
過去すべての写真のなかで、もっとも人間らしい顔つきをしているように見える。殺伐とした20代、何かと波乱含みだった30代を経て、すでに40代に突入している。しかし生活の落ち着きとは裏腹に、顔面白塗りにしたり、タンクトップ・ハーフパンツで飲食店に行ったり……。
私の人生はどこに向かっているのか、誰か教えてください……。とにかく免許証を取っておくのはイイモンですよ。
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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