地球を飛び出した人類が、次に住むのはどこだろう? 月には既に到達したし、火星への移住計画も進められている……。でも他の惑星では、ダメなのだろうか?
ということで今回は、水星での暮らしを想像してみたい。太陽に一番近く、昼は400度、夜はマイナス160度……などと、とても過酷なこの惑星で、果たして人類は暮らすことができるのだろうか?
・太陽から一番近い惑星……昼は400度もの暑さに!
あの「水・金・地・火・木……」の一番先頭にくる通り、最も太陽に近い惑星が「水星」だ。太陽から受ける光や熱は、地球の7倍で、昼の表面温度は摂氏400度! 鉛も溶けるほどだ。しかし太陽を向いていない面では一気に気温が下がり、夜明けなどはマイナス160度にも達する。こんな水星は、太陽系で最も気温の差が激しい惑星だと言われている。
その理由の一つが、水星には大気も海もないため、温度が和らげられないからなのだとか。大気がなければ、宇宙放射線など人体に有害なものもブロックされないはず……。このような環境で暮らす上で、もちろん高性能な宇宙服は不可欠だろう。
・どこに住めばいい?
こんなにも熱しやすく冷めやすい惑星「一体どこで暮らせばいいんだ!?」と頭を抱えてしまうが、宇宙情報サイト Space.com は、極地域なら住むことが可能なのではと述べている。
なぜなら、極地域のクレーターの内部には、「永久影」と呼ばれる太陽の光が永久に当たらない場所が存在しており、そこなら急激な温度の変化は避けられるというのだ。しかも水星探査機メッセンジャーによって、この極地域のクレーター底部から大量の水の氷も発見されている。ということで、「極地域のクレーターのへり」に住み、水はポンプでくみ上げる生活ができそうだ。
・水星の1日 = 地球の176日分
さて水星の1日は、地球よりもずっと長い。水星の公転周期(水星の1年)が約88日なのに対して、自転周期は約59日。地球が自転している間も、水星は太陽の周りを公転し続けるので、水星の1日を “夜明けから次の夜明けまで” とすると……水星の1日分は地球の176日分、つまり4224時間ととっても長いのである! う~ん、なんとシュールかつ壮大なんだ!!
・逆走する太陽
シュールと言えば、水星の空を移動する太陽の動きもそうだ。東から西へ移動していく太陽は、軌道上で太陽に最も近くなる「近日点」あたりで徐々に動きがゆっくりとなり、ストップする。太陽が止まったからと驚いてはいけない……なんと水星の太陽は、その後逆向きに動き始めるのだ!
しかし近日点を通ると、再び東から西へと動いていくのだから、なんだか “気まぐれ” である。ちなみに、空に浮かぶ太陽の大きさは、地球の2倍。
・お昼でも真っ暗な空
また大気のない水星では、昼間でも空は真っ暗で、雲も漂っていない。その上、星の瞬きは “大気の揺らぎ” によって起こる現象なので、夜空でも星は瞬かないようだ。しかし、明るく輝く地球と金星、その他の無数の星は観測できるはずである。
・どんな自然災害が起こるの?
さて大気がないのなら「天気」もないので、水星に住んでいるときは、悪天候の心配をしなくてもいいという。さらに、海も活火山もないので、津波や火山噴火の心配もいらない。
一方、いん石衝突や圧縮活動による地震なんかは、悩みの種になりそうだ。実際に水星の表面は、多数のクレーターで覆われており、なかには日本列島がスッポリ入ってしまうほどの大きいクレーターもあるのだとか。
・重力は? 地球との交信は?
他に “重力” も気になるところだ。水星の重力は地球の38%程なので、ジャンプすれば地球の3倍も高く飛べる。重いものだって、軽々と持ち上げられるはずだ。しかし物の慣性質量には変化がないはずなので、重い物で殴られれば地球と同じように痛いのでご注意を。
最後に “地球との交信” だが、水星から送った信号が地球に届くまで、最低でも約5分かかるので、テンポのよい会話は望めないだろう。
……ということで、なんだか水星での生活は大変そうだ。こんな水星への移住を本気で考えなければならないとき、人類はどのような未来を迎えているのだろうか?
参照元:Space.com、Twitter @SPACEdotcom、Lunar and Planetary Institute(PDF)、Universe Today(英語)JAXA、国立科学博物館
執筆:小千谷サチ
▼『水星での生活』が実現する日は来るのか……!?
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— SPACE.com (@SPACEdotcom) February 2, 2015