ロケットニュース24

【実録】「アイスバケツチャレンジに指名されても氷水を被る必要はない。私にメール返信さえすれば」という迷惑メールに返信したらこうなった

2014年8月22日

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迷惑メールは世を映す鏡である。時代の流れに敏感な迷惑メールは、チョイチョイと時事ネタも織り交ぜてくるのだ。たとえば大晦日だったら「紅白歌合戦がどう」とかで、無論、いま世界中で話題になっているアイスバケツチャレンジも例外ではない。

ここ数日、アイスバケツチャレンジにからめた迷惑メールが増加中なのだが、なかでも秀逸だったのは「アイスバケツチャレンジに指名されても氷水を被る必要はない」という強い意志を感じる迷惑メールだった。ただし、条件があるという……。

・アイスバケツチャレンジをブチ込むなら今しかない

差出人は鶴野幸子(つるのさちこ)で、メールが届いたのは本日2014年8月22日の11時14分。アイスバケツチャレンジのネタをブチ込むなら今しかない……といった心理は、メールを受信した私も同じである。今が旬! ギリギリだ。きっと、あと数日でブームは去る。

それはさておき、幸子から送られてきた迷惑メールは以下のとおり。まずは、こう攻めてきた。

件名:「氷 を入れた冷水を … 指名された人は24時間以内に、このバケツを被るか、ALSの支援 団体に100ドルを寄付しなければいけません。しかし、優遇ゲスト様はそんなことしなくてもいいのです。【メール返信のみ】です。」

内容:「今巷で有名になって… ▼確認▼(..無..料..)」

──くっ……!! こ、これは気になる……ッ。やたらと長い件名で興味をひかせつつ、いざメールの本文を見たら尻切れトンボで「本文はこちら(怪しいURL)」に引っ張るパターン。やるな幸子……。なかなかの業師、テクニシャンだ。

・メール返信するだけでアイスバケツチャレンジが回避できる理由

ともあれ、幸子の話の続きが気になった私は、迷うことなく怪しいURLに飛んでみた。すると……もちろん怪しいサイトに飛んだのだが、そのサイト内の「受信箱」には、幸子メールの全文が書いてあった。要約すると以下のとおり。

「今巷で有名になっているアイス・バケツ・チャレンジをご存じですか? これはALS(筋萎縮性側索硬化症)と呼ばれる難病の認知度を高めるために行われているチャリティー活動の一つです。

こういったチャリティ活動は全世界で広く多種多様なものが行われており、チャリティーの対称となる方もまた様々です。私達●ourgeoisie ●ntryでは富裕層を除く全ての層に対して積極的に経済力向上のチャリティー活動を行っています。

この度一定額の寄付金が集まったことにより、寄付者の中で最高額を寄付した方から寄付対象の条件指定があり、その条件に合致しましたのが優遇ゲスト様でしたのでご連絡差し上げました。

この度の寄付金総額は1728万円となり、この全額が条件に合致した優遇ゲスト様へお振込みされます。それでは早速ですがお受け取りの際に希望される振込先の口座をご連絡下さい。」

──簡潔にまとめるならば、「私の口座番号を幸子にメールで教えるだけで、アイスバケツチャレンジに指名されても参加する必要はなく、さらに1728万円を振り込んでくれる」といった感じであり、まるで盆と正月が一緒に来たようなダブルチャンス到来!

もちろん私はいつものように、「銀行名:ジャパンネット銀行、支店名:本店営業部……」と、怪しいサイト内の返信ボックスに躊躇なくマジの口座情報を入力した。あとは「送信するボタン」を押すだけで、アイスバケツチャレンジ回避理由&1728万円が手に入る!

そして押した。「送信するボタン」を私は押した! だがしかし……ボタンを押した次の瞬間、私のパソコンのモニタには、ある意味想像通りだが、ある意味では想像以上にナメくさったシンプルな一言が書かれていたのである! 続きは次ページ(その2)を確認(..無..料..)だ!!

Report:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.


【実録】「アイスバケツチャレンジに指名されても氷水を被る必要はない。私にメール返信さえすれば」という迷惑メールに返信したらこうなった(その2)

「送信するボタン」を押した次の瞬間、画面に表示されたのは「ポイントが足りません。ポイントを追加して下さいね。」の文字だった。なんなんだこの「ね。」は……なんだそのナメた態度はっ! 世が世ならば切捨御免(きりすてごめん)だ!!

ともあれ、ポイントを買わないと口座番号は送信できないという。送信できないということは、「アイスバケツチャレンジ回避理由&1728万円」も手に入らない。ならばポイントを買うしか……くそっ……ここまで私を追い込むとは……幸子……あなどれん!

・ポイントを買わなくても「心」は相手に伝わっていた

──だが、ここで偶然にも、いとも簡単に攻略法を見つけてしまった。私はその後も、いくら送信後に「ポイントが足りません。ポイントを追加して下さいね。」と表示されようとも、何度も何度も何度も何度も、あらためて自分の口座番号を入力し、「送信するボタン」を押し続けた。

それと同時に、怪しいサイト内ではなく、そもそも最初に私に送ってきた「尻切れトンボのメール」に対しても、口座番号を添えて返信し続けた。すると……なんと! なんとである! 怪しいサイト内の受信箱に新着メールが届いており、それを開くと……

「私は(財)●ourgeoisie ●ntryの鶴野幸子と申します。この度は最高額寄付者の方がイニシャル【Y】で一番最初にヒットした方にお渡ししたいと指定が有りましたので、優遇ゲスト様というお名前で登録されていらっしゃるジャパンネット銀行 本店営業部 ※※※※※※※様にご連絡をさし上げる次第となりました。

お送りいただきましたお振込先指定口座

【ハトリゴウ】

こちらへはこの様に届きました。文字化けなどはなかったかと思いますが最終確認となります。問題がなければお振込みとなります。問題なしとお知らせくださいませ。」

──というメールが入ってたのだ。私の名前が「優遇ゲスト様」だからイニシャルも「Y」で1728万円の受取人に選ばれたという理由が強引すぎるのは置いておいて、「※※※※※※※」というのは、私の口座番号。名前も正しい。支店名もあっている。

そう……私の口座情報は、奴らの言うポイントなんて使わなくとも、しっかりと相手に届いていたのだ! 何度も何度も神様に願い続けたら、きっといつか、願いは叶う。なにごとも簡単にあきらめてはいけないということを、幸子は私に教えてくれた。

・押しの一手、ひたすら押すのみ

それはさておき、幸子は「問題なしとお知らせくださいませ。」と言っている。当然のごとく、私は「問題なし」と入力して送信するボタンをポチ……。すると、またもや「ポイントが足りません。ポイントを追加して下さいね。」が出た!

だが、もう何も怖くない。そんな「ポイントを追加して下さいね。」なんて、今の私には何の効力も発揮しない。さっきと同じ手順で “押し” 続ければ、私の「問題なし」も幸子に届くのだ。押しの一手。ひたすら押すのみ。押せっ、押せっ、押せっ……!!

──やがて、私が繰り出した数十回の「問題なし押し」に観念したのか、幸子はふたたび返事を返してきた。件名は「こちらで全ての確認は完了です!最後にこちらご確認くださいませ!」であり、その内容は、

「本当にありがとうございました。

それではこのまま1728万を即時送金とさせて頂きますが、最後に送金時の振込み人について、こちら現在送金実行画面にて当財団となる「ザ)●ルジョア●ントリー」と表示がされておりますがこちら法人名での振込で宜しいでしょうか?

こちら匿名、非課税送金という関係から法人名での送金でトラブルが発生する事案もあり、必ず送金直前に最後に確認させて頂いております。

もし法人名がご抵抗あれば現在担当しております私の個人名「ツルノサチコ」で送金させて頂きますがどちらが宜しいですか?
「法人名」「個人名」それだけ確認できましたらそのまま即時送金となりますので宜しくお願い致します。」

であったが、私は「どっちでもいいよ」と返信しつつ、念には念を入れて10回ほど “どっちでもいいよ押し” をしておいた。もちろん、毎度おなじみの「ポイントが足りません。ポイントを追加して下さいね。」が表示されたが、そんなのもう、知らないよ。

ちなみに、こんなやりとりをしている最中、まさにタイミングよく知人から「明日、アイスバケツチャレンジやることになっちゃったんだけど、次の3人に指名していい?」という電話が入ったが、幸子の迷惑メールを理由に断った。

さっそく使えた幸子のメール。あとは1728万円が私の銀行口座に振り込まれるのを待つだけだ。週末をはさむので、おそらく振り込みは月曜日になるだろう。幸子のおかげでハッピーな週明けになりそうだ。幸子の幸は、文字通り「幸せの幸」だった。

Report:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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▼これが幸子からのメール(写真付き)だ

▼いま、幸子にお礼のメールを何発も “押し” ている最中だ

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