嬉しいとき、悲しいとき、人は涙を見せるもの。特に涙腺の弱い人であれば、笑いすぎて涙が流れるということもあるかもしれない。その涙について、こんなことを考えたことはないだろうか。「大笑いしたときの涙と、悲しんで泣くときも流れる涙は一緒?」。
この疑問を海外の写真家が見事に解明した。ローズ・リン・フィッシャーマンさんは涙を乾燥させ、涙の結晶を光学顕微鏡で撮影したのである。そうしたところ、感情の変化によって涙の性質に違いがあることを突き止めた。また目に異物が入ったときの涙も、感情による涙と異なることがわかったのである。
・『涙の地図』
『涙の地図』と題されたこのプロジェクトは、5年間の月日をかけて行われた。当初プロジェクトは思うように進まず、なかなかうまく撮影するに至らなかったようである。最終的に、さまざまな涙の姿を記録することに成功し、発表することができたのだ。
・3つの涙
科学とアートの専門サイト「Smithsonianmag.com」によると、涙には3つのタイプがあり、ひとつは角膜を潤す、いわば潤滑油の役割を持つ基本的な涙。もうひとつが反射的な涙、これは目にゴミやチリなどの刺激物が入ったときに、それらを洗い流す役割をはたしている。最後に、神経伝達物質「ロイシンエンケファリン」を含むたんぱく質系ホルモンが分泌される、感情的な涙。この神経物質は、身体がストレスにさらされているときに分泌される自然の鎮痛剤の役割を持っている。
・原初の言葉
これらを踏まえて、ローズさんの写真を見ると、流れる涙の種類によってその姿が大きく異なることがわかる。たとえば、悲しいときの涙は角ばった模様を描いているのに対して、笑ったときの涙はどこか曲線を帯びているように見える。また、玉ねぎを切ったときの涙は複雑怪奇な模様になっている。
ローズさんは涙の地図を、山河が描く自然の造形と類似していると指摘し、「涙は人間の原初の言葉である」と語っている。普段さまざまな理由で流す涙に、隠された秘密に驚かされるばかりだ。
参照元:Smithsonianmag.com、Rose-lynnfisher.com(英語)
▼基本的な涙
▼悲しみの涙
▼笑い泣きの涙
▼玉ねぎを切ったときに出る涙