2013年4月、ソニーは長崎県の端島(通称:軍艦島)の全貌撮影に挑んだ。ラジコンヘリコプターに同社の「小型ビデオカメラ アクションカム」を搭載し、空撮にチャレンジしたのである。
・毎秒2トンの放水をとらえた映像は圧巻!
その映像は日本だけでなく、海外でも大きな話題になった。動画の公開から約4カ月を経て、再びプロジェクトチームは前人未到の挑戦を行ったようだ。今回は今話題の「ダム」である。しかも毎秒2トンの放水をラジコンヘリで正面からとらえるというのだ。その映像は迫力満点! 圧巻の一言に尽きる。
・北海道・豊平峡ダム
前回の軍艦島撮影では、ラジコンヘリ1機を飛ばして上空から島の様子を撮影した。今回はさらにもう1機を準備して、臨場感ある映像をとらえることに挑んだのである。撮影場所は北海道・豊平峡(ほうへいきょう)ダムだ。山間にあり、絶えず天候が移り変わる場所だった。
・放水による凄まじい風圧
実はヘリの操作には熟練した技術が必要だ。風に煽られて機体の平衡感覚を失えば、真っ逆さまに墜落してしまう。撮影を困難にさせる要素がふたつあった。ひとつはダムからの放水による風圧。最大毎秒2トンもの水量を放出するため、周囲は水しぶきで靄(もや)がかかり、勢いのすさまじさをうかがわせている。
・あいにくの雨模様でヘリが落下する危険性
そしてもうひとつがこの日の天候。あいにくの雨模様で、思うように機体を飛ばせない時間が続いた。もしも、飛行中にダムの風圧に流されたり、水滴が機械部分に侵入したりすれば、コントロールを失う可能性も否めない。ヘリがダム下に落下すれば回収さえ困難になってしまう。失敗は許されない、張りつめた空気のなかで撮影は決行されたのだ。
・順調に撮影が続いて行くのだが……
山の天候は変わりやすく、少し雨が止んだと思ったら降り出すということを繰り返していた。それでもその合間を縫うようにして、ひとつずつ撮影を順調にこなしていく。幸いだったのは、小雨程度しか降っていなかったことだ。熟練した操縦士は、小雨をものともせずに機体を巧みに操り、迫力のあるダムの映像をカメラに収めていく。ところが……。
・降りしきる雨のなかで空撮続行
弱かった雨がにわかに激しくなり、このままではヘリを飛ばすことさえ困難。雨がやむまで待つことになったが、撮影終了のタイムリミットが近づいていた。どうするか? と、そこで撮影チームは意を決して撮影を続行することに。
・風圧に舞うラジコンヘリ
毎秒2トンの放水による風圧は、想像をはるかに上回っており、油断して近づけば吹き飛ばされてしまう。ヘリは風圧に揺さぶられながらも、ダムの放水口間近までにじり寄って行く。時折木の葉のように、ふわりと揺らぐさまは見ていてヒヤッとさせられるものがある。もしも落下したら……。一抹の不安がよぎるなか、操縦士はギリギリのコントロールでヘリを操り、なんとか無事に撮影に成功したのである。
・完成した映像は素晴らしいの一言
緊迫した状況下での撮影の甲斐あって、出来上がった映像は素晴らしいとしか言いようがない。いまだかつて、これほどまでに迫力のあるダムの映像はなかったのではないだろうか。放水の始まるその瞬間は非常にダイナミックで、ラジコンヘリでなければ、その瞬間をとらえることはできなかったはずである。
・ダムサイトの草分け的存在、萩原さんのコメント
今回の映像について、ダムサイトの草分け的存在であり、ダムライター・写真家の萩原雅紀さんにコメントを求めた。萩原さんは次のように語っている。
「映像を見て思ったのは『やられた!』ということ。最近はダム好きも多くなり、日本中ほとんどのダムを写真で見ることができるようになったのですが、ダムは立入禁止の場所も多く、誰が撮っても似たようなアングルになりがちなのです。そこで、こういったマルチコプター(ラジコンヘリ)とアクションカムによって、これからはきっと、まだ誰も見たことのないアングルのダムの姿が見られるようになるんじゃないかと思います。今回の映像では特に、巨大なアーチダムである豊平峡ダムの赤いクレストゲート(ダムのてっぺんにある水門)を正面から見た場面に痺れました。ダム好きなら誰もが見たいと思うアングルですが、マルチコプターとアクションカムならではの光景ですよね」
ちなみに撮影現場の一部始終は、メイキング映像で確認することができる。緊迫した雰囲気を感じ取ることができるだろう。きっとダムマニアも納得、マニアでない人も映像に釘付けになるに違いない。
参照元:ソニー アクションカム
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]
▼ラジコンヘリコプターによる豊平峡ダムの空撮。映像からは感じられないが、当日は雨模様だった
http://youtu.be/fT-aGNdZy_c
http://youtu.be/jZ8lXi7n6cU
▼今回撮影に使用した2機のラジコンヘリ
▼機体の先端には「小型ビデオカメラ アクションカム」を搭載
▼撮影場所の豊平峡ダムは、長いトンネルを抜けた先にある
▼有効貯水容量3万7000立方メートル、巨大なダム湖が広がる
▼堤高(基礎地盤からダム天端までの高さ)102.5メートル、ダムそのものの迫力に圧倒される
▼思わしくない空模様のなか、撮影準備は着々と進められていく
▼そして撮影開始
▼ダムのスケールが大きすぎて、ラジコンヘリが驚くほど小さく感じる
▼午前9時の放水開始を待って、ヘリは撮影位置へ
▼放水キター! 水しぶきでヘリが落ちるんじゃないかと心配になる
▼ヤバイ、水に叩き落とされそう
▼それにしても凄まじい水の勢い。ダムスゲーッ!!
▼雨の合間を縫って撮影。しかしにわかに雨脚が強くなって……
▼一時撮影中断
▼タイムリミットが迫るなか、操縦士の熟練の技術でなんとか難所を乗り越え、最後の水中撮影へ
▼動画の冒頭シーンは、こうやって着水して撮影している
http://youtu.be/jZ8lXi7n6cU
http://youtu.be/fT-aGNdZy_c