膨大な情報から作り上げられているテレビ。必然的に、投入されているマンパワーも圧倒的であり、テレビ局関係者は結構そこらへんにいたりする。先日、赤羽の飲み屋で出会ったMさんもその1人だった。

会った時にはすでにベロンベロンだったMさんだが、話を聞くと、テレビ局の仕事を30年しており、麻原彰晃が逮捕された時には第6サティアンの前にいたらしい。そんなMさんいわく、「絶対に外に出せない写真」があるという。呂律の怪しい口で話し出したのはある事件の裏側だった

・玄倉川(くろくらがわ)水難事故

それは玄倉川水難事故の話。1999年8月、神奈川県の玄倉川で起こったこの事故。熱帯低気圧が近づく中、川の中州でキャンプをしていた男女グループがダム職員の再三の退避勧告に従わず、大雨によるダム放流で流されて13名が死亡した。

名前だけではピンと来ないかもしれないが、映像は見たことがある人も多いだろう。なぜなら、当時、増水していく様子から流されるまでがテレビで何度も流れていたからだ。

山の清流で対岸の様子も目視できるくらいの広さである玄倉川。その近さにもかかわらず、なすすべなく流されていく男女グループの様子はそれだけセンセーショナルであった。

・現場

実は、Mさんも当時この現場に行っていたのだという。男女グループが流されたのは8月14日の昼前だった。18人中、5人は対岸に流れ着くなど一命をとりとめたが、残りの13人は下流の堰堤(調節のための堤防。滝のような形状)から流れ落ち行方不明となる。

そこでMさんの局の報道関係者たちも下流にある丹沢湖に移動。そこから中継を行ったそうだ。制作陣の中でも裏方であるMさんの仕事の1つは、そういった局が取材や撮影を行った現場の写真を撮ること。と言っても、これは報道用ではなく、撮影場所などを報告するための社内資料としてだという。

アナウンサーが丹沢湖を背景に撮影を行う中、カメラポジションとは別角度で丹沢湖を撮影するMさん。その日の仕事はそれで終わりフィルムを現像に出したそうだ。

・写真に写っていたもの……

困難を極める捜索。行方不明者が多い状況が続く。そんな中、Mさんの写真の現像が終わった。そこで撮影した写真を確認してみたところ、なんと資料提出用に撮影した丹沢湖の水面に人の顔が写っている。フィルムの時代、世に言う心霊写真が撮れてしまったわけだが、写っていたのは1人だけではなかった

そう、13人。行方不明者の数と同じ数の人の顔が水面に浮かび上がっていたのだとか。全てを悟ったMさんは、その写真を提出せず今でも持っているのだという。なお、全員の遺体が発見されたのはそこから1週間以上経った後だったとのこと。

膨大な情報から作り上げられているテレビ。その現場では色んなことが起こっている。表に出る情報は氷山の一角に過ぎない。飲み屋の喧騒すら静まり返るようだったこの話。信じるか信じないかはあなた次第だ。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.