今、あるニュースがネット上で話題になっている。それは、「中国がブータンに侵攻した」というものだ。
・幸せの国「ブータン」
ブータンは国境を中国とインドに接する国だ。2012年の国民一人当たりのGDPは187カ国中162位ながらも、国民の幸福度は高く「世界一幸せな国」と称されている。また親日国家であることでも知られており、2011年には国王夫妻が国賓として来日し、東日本大震災の被災地を訪問している。
・インドメディア「中国がブータンを侵攻」
そのブータンについて、2013年6月26日、インドの『THE TIMES OF INDIA』が驚くべきニュースを報じた。同紙が入手したという内部文書によると5月末に国境を接する中国の人民解放軍がブータンに侵攻。ブータン領土内に3カ所の軍営キャンプを張ったというのだ。「証拠」とする映像も入手しているという。
ちなみに、ブータンと中華人民共和国は国交が樹立されておらず国境問題は正式に解決していない。また2000年代から中国人による越境が相次ぎ、ブータン政府が抗議しているという。
・中国メディア「侵攻報道はインドのねつ造」
インドが突然報じた「侵攻報道」に中国は激怒。中国国内のメディアは「侵攻報道はインドメディアのねつ造であるとしている。
そして「国境問題は解決済みにも関わらずインドが干渉してくる」、「中国とブータンが国交樹立を目指すという報道に焦りを感じているのでは?」、などと批判した。7月13日に行われるブータンの下院選挙に向けてのインド側の工作ではないかとの見方もあるようだ。
・ブータン政府観光局 「松茸フェスティバルをやります!」
このようなニュースが流れるなか、ブータン政府観光局が7月3日に公式 Facebook ページに投稿した記事では、
「今日の画像は、7月半ばから8月末にかけての松茸シーズンに、ブムタン地方のウラ村で開催される「松茸フェスティバル」。松茸をふんだんに使った料理や、松茸狩りハイキングなどの多彩なプログラムが用意されています。今年は、8月24-25日の開催です。」(Facebookより引用)
と、平常通りブータンの美しい写真を掲載している。
・ブータン領事館に聞いてみた
ネット上ではかなり情報が錯綜しているようだ。7月4日にブータン王国名誉総領事館に問い合わせたところ、その時点では「担当者が不在のため、中国のブータン侵攻情報についてはお答えしかねます」とのことだった。
ただ、対応してくれたスタッフは「今日、どこかのニュースで出たみたいで……『中国の侵攻が心配だ』というお問い合わせを多数いただいています」と、話していた。
・侵攻報道をしているのはインドメディアのみか
なお、中国によるブータン侵攻を報じているのはインドのみのようだ。他国の報道はあくまで『THE TIMES OF INDIA』の内容の紹介に留まっており、それ以上の情報は見当たらない。
また、侵攻が事実であれば1週間前の報道を領事館スタッフが把握していないというのはどういうことなのだろうか? 中国が主張するように「偽情報」なのか。とにかく、ブータン国民のことを思うと何事も起こっていなければ良いのだが……。公式発表が待たれる。
参照元:THE TIMES OF INDIA、鳳凰網(中国語)、Facebook ブータン政府観光局
▼インドメディアの報道である
▼こちらが2012年のブータンの「松茸フェスティバル」の様子だ、何事も起こっていなければ良いのだが……