アジアとヨーロッパ、東西の文化交流地点として栄えた国、トルコ。
ここには歴史的建造物や遺跡が無数に存在しています。なかでも近年高い関心を集めていたのが、アンタルヤ考古学博物館に所蔵されている「疲弊したヘラクレス」です。1800年前に造られたこの作品は、とある事情で上半身がアメリカ・ボストンに。そして下半身はトルコ・アンタルヤに所蔵されていたのでした。その事情とは一体何だったのでしょうか。
・窃盗被害に遭う
この作品は1980年にペルゲ遺跡で出土しました。「20世紀に発見された最も歴史的価値のある」とさえ言われているヘラクレス。それがなんと窃盗に遭い、上半身が国外に持ち出されてしまったのです。
・巡りめぐってアメリカへ
その後、どこへ行ったのかわからなくなっていたのですが、1981年にボストン美術館に展示されていることが判明。すぐにトルコの美術関係者は、ペルゲ遺跡で出土した作品であることを伝えたのです。しかしながら、ボストンの関係者はドイツの仲介人から正式に購入したと主張し、当初返還に応じませんでした。
・四年間の交渉
実はトルコに残された下半身には、公的な証明書がなかったために、ボストン側は返還を拒んでいました。一時は返還は不可能とまで考えられていたのですが、トルコ文化観光省が辛抱強い働きかけを行いました。四年の交渉期間を経て、ついに2011年10月11日に上半身はトルコへと帰ってくることになったのです。
・不法に持ち出される美術品
海外に不法に持ち出され、売られていた美術品はヘラクレスだけではありませんでした。トルコ文化観光省がここ数年で、取り戻した作品はなんと3000点以上にものぼるそうです。歴史ある作品が窃盗に遭い、高値で売買されていると思うと残念でなりません。
もしもトルコのリゾート地、アンタルヤ県に行かれる予定のある方は、ぜひ「疲弊したヘラクレス」をご覧ください。トルコが誇った栄華と、高い彫刻技術に衝撃を受けるはずです。
Report:フードクイーン・佐藤
Cooperation:tavii.com
▼ これが1800年前の作品、「疲弊したヘラクレス」
▼ ボストンで所蔵された上半身は、2011年にトルコへと帰ってきました
▼ ちなみに博物館には、なぜか卓球台があります
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