韓国にたびたび観光に出かける男性、木下さん(仮名)の韓国旅日記。今回はウルルンド(鬱陵島)のバスツアーについて寄稿頂きました。以下は木下さんによるレポートです。
ウルルンド上陸については、前回お伝えした通りです。日本人の上陸に対しては基本的に警戒しているようですが、手続きが面倒なだけで不可能ではありません。私はポハン(浦項)という港から、フェリーで3時間かけてようやく上陸しました。
しかし宿泊先を決めていなかったので、宿が見つかるかどうか心配でした。また他の韓国人観光客の声が結構うるさかったので、ほとんど休むことができませんでした。「宿が見つかったら、とりあえず横になりたい」、そんなことを胸のうちでつぶやきながら、ウルルンドの地に降り着いたのです。
船を降りると、宿案内のプラカードを持ったオバちゃんが近づいてきました。「あんたうちに泊まりなさい! ほかの宿はどこもいっぱいだから、うちしかないよ!」と、すごい勢いで近づいてきたのです。おお! 宿探しの手間が省けた! ありがたい! と思い、オバちゃんのいう通りにホイホイついて行きました。「これでゆっくり休める」、そう思ったのですが、世の中は甘くありません。その夢は打ち砕かれることになります。
・オバちゃんからのファーストミッション「飯を食え!」
オバちゃんは出会ったその瞬間から、とにかく急いでいます。そして「パリー! パリー!」(韓国語で「急げ」の意)と、やたらせかすのです。何事かなと思っていると、「まずはこの店で食事をしなさい」との指令が。船が着いたのがちょうど13時頃。昼飯時にはちょうど良いのですが、どうしてこの店? と思っていると「パリー! パリー!」と、とにかく飯を食えとすすめられました。
・オバちゃんからのセカンドミッション「バスに乗れ!」
言われるままに食事をすると、今度は謎の男を紹介され、「これからバスツアーに出かけるから急げ」というのです。サングラス姿の謎の男、実はバスのドライバー兼ガイドだったのです。「彼のバスに乗れ」との指令が下りました。
木下「オバちゃん、ちなみにツアーってどのくらいかかるの?」
オバちゃん「5時間」
木下「5時間? さっき3時間かけて島に着いたのに?」
オバちゃん「いいから早く!」
木下「面倒臭せえ~ッ!」
オバちゃん「うちの宿は、バスツアーとセットだから。早く乗って!」
なんとセット販売だったのです。先に言って欲しかった。でも、宿泊を断ると泊まるところがないし、ほかに道はなかったようです。
・オバちゃんは島の権力者!?
あとから話を聞くと、オバちゃんは島で結構顔のきく人だったようです。宿屋のほかに、食堂と土産物屋を経営しており、警察にも信頼をおかれていました。島の警察官は、私(木下)がオバちゃんの宿に泊まるとわかると「このオバちゃんのところなら問題ない」と言い、上陸時の尋問を切り上げたのです。もしかしたら、オバちゃんは島の権力者なのかもしれません。
・5時間のツアーは意外にも面白い
半強制的にバスに乗せられたツアーでしたが、その内容は意外にも面白かったです。島の半分を走行しながら、途中で「ウルルンド唯一の文化芸術空間」、「ウルルンド最大のテーマパーク」、「かぼちゃのお菓子の製造販売所」などに行きました。なかでも文化芸術空間の謎レベルはなかなかのものでした。
ウルルンド5時間ツアーの詳細については、また次回、お伝えします。
(文、写真=木下さん)