毎年夏至の日に、ヨーロッパ・ポーランドでは「聖ヨハネ祭」が行われます。このお祭りは、願いをこめて天灯(スカイランタン)に火を灯して、空へと飛ばすお祭り。実はアジア・タイでも、同様に天灯を飛ばすお祭りがあるのをご存じでしょうか? ポーランドとは対照的に、こちらは「邪気・悪いこと」を空へと放つのです。ヨーロッパとアジア、お祭りの習わしは異なりますが、空を埋め尽くす天灯の美しさには、共通のものを感じます。

タイでは毎年11月、陰暦12月の満月の日を中心に「ローイクラトン」というお祭りが行われます。これは、収穫に感謝して自らの罪を清める祭事です。バンコクやアユタヤなどの都市では灯篭を流すのですが、古都チェンマイでは空へむけて、「コームローイ」と呼ばれる天灯を飛ばします。

この夏、ポーランドのスカイランタンを目の当たりにした記者(私)は、すっかりランタンの魅力にはまってしまいました。チェンマイにも足をのばした次第です。先にも述べたように、ポーランドとの明確な違いは、最近起きた悪いことを込めて、空へ放つところです。

たとえば「夏に交通事故になったから悪い運を飛ばしたい」とか「稼業が思わしくないので悪運を飛ばしたい」など、厄落としの意味合いが強いようです。また、ポーランドはカラフルなランタンが多かったのですが、タイは白一色に統一されています。

会場となったチェンマイ郊外のメージョー大学の敷地には、当日大勢の人でごった返していました。会場に設けられたステージには、天灯を飛ばす一時間前から僧侶が上がり、お経を唱えます。すると、参加者は皆正座をし合掌しながら、そのお経を聞くのです。宗教色が強いことも大きな特徴でしょう。

そして時間になると、一斉に着火して、祈りを捧げながら天灯を空に飛ばします。舞い上がった天灯は上空を埋め尽くし、あたりはオレンジ色の光に包まれます。その様子は「絶景」の一言。神秘的な光景に、誰もがただただ空を見上げるだけです。その間、わずか5分。まるで時が止まったような静寂に満たされた瞬間でした。

この景色をともにするすべての人の願いが、空に届けば良い。そう思わずにはいられません。来る年が実り多きものになりますように。私にとっても、あなたにとっても。

取材、写真:Photographer Koach
編集:フードクイーン・佐藤
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