その昔、人気お笑い番組の『オレたちひょうきん族』で、飲料メーカーのCMのパロディに次のようなものがあった。

「二十歳をすぎたらもうババァ」

これは本来「二十歳をすぎたらもう大人」という文言をもじったものだ。二十歳をすぎてババァなら、日本の女性の半数以上がババァということになってしまうのだが、このことを真剣に考えさせられる出来事があったので、お伝えしたいと思う。その出来事とは、私(記者)の10歳になる甥っ子(妹の子)が、私の弟の嫁(甥っ子からみた叔母)に向かって「ババア!」と言い放ったのだ。

彼女はまだ32歳。世間一般的に見れば、お姉さんと言われる年頃。女性から観れば「女子」と呼ばれるような年齢である。しかし、子どもの言うことだからと突き放して良いのだろうか? なぜババァ言うことがいけないことなのだろうか? そのことを今日はトコトン考えてみたいと思う。

そもそも甥っ子がババァというのには、少しだけ訳があった。この正月に帰省した際に、家族一同集まり新年を祝ったのだが、弟夫婦のお年玉の額が、甥っ子の見合うものではなかったのだ。彼はもらったお年玉を集めて、ゲーム機を購入しようとしていた。ところが元日に集まった家族(弟夫婦を除く)からもらった額では、あと1万円足りなかった。

年明け2日になって弟夫婦が帰省し、甥っ子はお年玉を催促したのである。しかしもらった額が1万円に満たなかったために、甥っ子は怒りをあらわにして、弟夫婦に「ケチジジィ! ケチババァ」と言い放った次第である。妹夫婦は平謝りし、甥っ子にも謝るようにと叱りつけたのだが、ふくれてどこかへ行ってしまった。
 
さて、ここでひとつ考えてみたい。なぜ、30代女性をババァと言ってはいけないのか。先のお年玉の件はさておいても、ババァと言ってはいけないルールはないのだ。かねてから私が個人的に思うのは、ではなぜ、「女子」ということは許されるのかである。

近年は男女を問わず、誰も若い。その若さに相応しい呼び名のひとつに女子が挙げられているのだろうが、私はひとこと「わきまえよ!」と言いたくなることがある。仮にでも女子でよかったとしよう。年齢の観念さえ置き去りにすれば、女子でもにかまわない。

だが、それは年齢を無視するがゆえの許容である。したがって、ババァと言われるのも、甘んじて受けるべきではないだろうか。

つまり私が至った結論はこういう図式だ。
 
「30代女性を「女子」と呼ぶのはOKにしよう」

「その代わり、年齢とか容姿には目をつむるから、ババァもOKにすべき」
 
である。女子とは言わすがババァとは言わせないとは、わがままだ。どちらもOKにしてしまおう、という提案だ。いつまでも女子と言わせる代わりに、ババァと呼ばれるリスクも背負って頂かなければ、釣り合いがとれない。このままいつまで矛盾したことを続けるのかと、余分な話までしなくてはならない。

だから、女子と言われることには目をつむるので、ババァと呼ばれることも許容して頂きたい。気まぐれで女子とも呼んであげるので、ババァもありにしてもらえないだろうか。10回に1回、いや20回に1回くらいは年齢を無視して女子と呼んであげようと思うので、ババァと言われたくらいで、目くじらを立てないで頂こう。うん、そうしよう。

文=褌シメタロウ