さぁ、これからお金の話をしよう。誰もが多かれ少なかれもっている「お金」であるが、「お金って何?」と聞かれると意外に答えられないものである。このコラムでは、誰もが知ってるようで知られていない、お金について話してみたいと思う。
・二つの異なるお金
日本で流通しているお金には二種類のお金がある。ひとつは政府の発行するお金であり、もうひとつは日本銀行が発行するお金である。あまり知られていないが、実は、この二つのお金は同列の存在ではなく、それぞれ違う役割と存在理由を持っている。この二つのお金、簡単にいってしまえば、お札(紙幣)と硬貨(貨幣)となるのだが、その意味も成り立ちも全く違うのだ。
・お札は日本銀行、硬貨は日本政府が発行
なぜ、お札が銀行券と呼ばれているのは皆さんもご存知の通り。でもどうして銀行券と呼ばれているのか? それは発行している所が政府ではなく、一種の民間銀行である日本銀行だからなのだ。つまり、お札は日本政府ではなく日本銀行が発行する一種の証券のようなものなのである。そして、硬貨は、日本銀行ではなく日本政府が直接発行する通貨となる。
・硬貨は20枚までしか使えない
また、お札と硬貨ではその使われ方も違うのである。実は、お札は一度に何枚も使用できると法律で決められているが、補助貨幣とされる硬貨は、一つの種類で20枚までしか強制力はない。21枚以上の使用をお店が断ることができるのだ。
・硬貨を壊すと罰せられる理由
実は、この硬貨、資源備蓄(金属資源)の意味もあって製造されている。基本的に貨幣は価値のある金属で作られており、その資源的な価値以上の価格(製造コストではない)で流通している。その為、「国の大切な資源を破壊されては困る」というこで、硬貨の毀損には厳しい刑罰(※1)が設けられているのだ。
これは資源高騰の際に、溶かして潰されるのを防止するための手段でもある。逆に、資源的な価値が非常に低く、政府ではなく一種の民間銀行である日本銀行が発行する紙幣は毀損しても罰則はないのである。次回は日本銀行の話をしてみたい。
(文=経済評論家・渡邉哲也)
※1
第百四十八条 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
貨幣損傷等取締法(昭和二十二年十二月四日法律第百四十八号)
1 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。
2 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶす目的で集めてはならない。
3 第一項又は前項の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
写真:ロケットニュース24