おそらく誰しもが幼少時代に「ウソをついてはいけません」と教えられてきたと思う。当然ながらウソはいけない。だが、無意識的にウソをついてしまうこともある。それが、たぶん皆さんも身に覚えがあるであろう大ウソ、「ン? 寝てないよ」だ。
どんな状況で「寝てないよ」を放ってしまうのかといえば、“寝てはいけない状況で寝てしまっている時” において、誰かから「寝てたでしょ!」と指摘された直後……である。即バレするのに、なぜか反射的にウソをつく。あれは一体なんなのか。
・母親がノックなしで部屋に突入してくる
たとえば少年期。電気を付けっぱなしにしながら、ついついウトウトと寝てしまっている……その瞬間! 母親が「この時を逃してなるものか」とばかりに、ノックなしでドアを勢いよく開け、現行犯逮捕とばかりに「いま寝てたでしょ!」と叫ぶのだ。
だが、私(筆者)は、目をカッと開きながら「寝てないよ」と即答する。しかも、冷静に。落ち着き払って、母親の目を堂々と見つめながら「寝てないよ」とドヤ顔で返すのだ。──正直言えば、実は寝ていた。だが、「寝てないよ」の返事にウソはない。
なぜならば、母親がドアノブに手をかけてドアを開き、 “現場確認” を行う0コンマ1秒前に、私はウトウトしながらもその音をキャッチ。母親が現場に踏み込んだ瞬間には、しかと目を開いて「起きている」のだから、決してウソではないのである。
・寝てないよカウンター
この「寝てないよ」は、大人になってからも猛威をふるう。たとえば知人と映画などを見ながらも、ついウトウトと寝てしまっている時……も、「いま寝て……」との声がした瞬間に目をカッと開いて「寝てないよ!」と、カウンターを放つ自分がいる。
誰に教えられたわけでもないのに、この「寝てないよ返し」は、なぜか多くの人がマスターしていると私は勝手に予想している。無意識的かつ条件反射的に「寝てないよ」と言ってしまうということは、つまるところ、DNAに刻み込まれているのだ。
・行き残るための寝てないよ
遠い昔の戦国時代、きっと戦場の武士たちも、仲間たちから「寝ておるな!」と言われた瞬間に「寝とらん!」と言ったはず。「拙者、決して寝ておらぬ! 何を言うかっ!! ええい、抜け! 抜け〜い!!」と逆ギレしたサムライもいたことだろう。
さらに歴史をさかのぼり、寒さ厳しい縄文時代にも「□◇◯☆!(寝ているのか!)」と言われた直後に「◯×!!(寝てない!)」と即起きした縄文人がいた可能性もある。寒さ厳しい状況においては、寝たら死ぬ。結果として、“寝てないよ男” は生き残った。
もしかしたら、長い長い人間の歴史において、『寝てないよ返し』をすることは、生き残るための知恵だったのかもしれない。母親がノックなしで「寝てたでしょ!」と乗り込んでくるのも、子を生き残させるための術(すべ)なのだ。きっと……たぶん。
執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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