プノンペン中心部に、ちょっと変わったバイク屋があるーーと聞いて早速行ってみた。朝早かったせいかお店はシャッターをおろしていたけど、そこにでかでかと描かれたロゴを目の当たりにして呆然とする私。んおおおあ!

HONDAと思いきや、HONKI!  しかもアメリカの焼肉屋みたいな書体だ!冗談かと思いきや、本気……のようである。ジャングルの奥から買い出しに来た田舎もんが100人いたとしたら、3人くらいは騙され、そして不幸になってしまいそうな予感。

お昼頃再訪すると、お店はオープンしていた。ズラリと並ぶはごくごく普通のバイク……ん? この近づけば近づくほど感じる妙な違和感は何だ?

ホンダ・ドリームに似てたり、ヤマハ・フィーノっぽかったり(どちらもアジア向けモデル)。でも、間近で眺めるとペラッペラのプラモデルみたいな……。

そう、この店は中国製の電気スクーター専門店。最近、日本でも「電チャリ」とかいってたまに見かけるが、中国では一千万台も走ってるそうで、有象無象のメーカーが日夜、泥沼の価格競争を繰り広げてるわけです。

その結果、ガワだけはなんとなく日本車っぽいけど、実は骨の髄までコストダウンが進んで、一台4万円弱とお手頃価格になったのはいいが、ブレーキはスッコスコ、ボディの質感はまんまプラモデル、軽くコケただけで真っ二つに折れそうな商品が出来上がったというわけだ。店員曰く、最高時速50km/h。まあ十歩譲って出せたとして、停まれるのかな?

これ、ガソリンが高騰しまくった一年くらい前は、プノンペンでもごくまれに、女子供がまたがる姿を見かけたもんですが、最近ほとんど見かけない。まあでも、本場・中国の熾烈な競争を生き抜いてきたメーカーだけに、モノは確か……なのかもしれない。

店員は絶対私の目を見ないし、声をかけたら聞こえないふりをするし、思わず「お前ら本気か!?」と心の中で叫んじゃいました。まあ、ホンキなんでしょうけど……。

お後がよろしいようで。
(取材・文・写真=クーロン黒沢

▼パッと見、普通のバイクと変わらない

▼でも近づけば近づくほどしょぼい……

▼燃料計ならぬ残電計

▼ シート下にコンセントが!